第二十六話 「初代魔王サウロンの伝説」
最近はガンプラ製作動画に嵌ってて、自分でもガンプラ買って組み立てました。
格好良いぜ『RG 1/144 デスティニーガンダム』!!
デカール(装飾のシール)の貼り付けも合わせて八時間以上かかったぞ!!(途中ご飯食べたりしたからぶっ通しじゃないけど)
ただ、パーツが多い分素組みでも完成した出来は凄く良かったので大満足でした。
時間が出来たら今度は一緒に買った『ストライクフリーダム』も君立てようと思います。
ちなみに作者は『ジ・O』に対してダークソウルのカタリナアーマーに似た何かを感じているんですけど、判る人居ます?
「サウロンが王様だぁ!? 一体何がどうなってそうなったんだよっ!?」
リューセンから自分の知らないサウロンの経歴を聞かされて動揺を抑えきれないグレイス。
掴みかかるような勢いでどういうことかと問い質すグレイスに対し、あくまでリューセンは穏やかなまま順を追って説明した。
「まぁ驚くのも無理も無いとは思うが落ち着いてくんだ。私だって当事者だった訳じゃないから詳しい事まで事細かに把握している訳じゃないんだ。私に語れるのはあくまで様々な記録を調べた上で共通して居たり矛盾が無かったりするものを繋ぎ合わせて『恐らくこうだったのだろうという推測』でしか無いんだ。それを承知した上で話を聞いて欲しい」
「っ、判った……けど、ただ話すだけじゃなくオレ様からの質問にも答えろよ」
「勿論さ。だが、先に言ったように当事者でない私の持つ情報は限定的だから答えられない部分もある、そこは承知して欲しい」
「そこは判ってるよ、何せ千年も前の話だからな」
取り敢えずはリューセンの言葉にグレイスは、そのまま席に再び座り目線でさぁ話せと促して来る。
その様に少しだけ苦笑したリューセンは全員が話を聞けるようにと離れた場所に座っていたメンバーをカウンター席に招くと、全員に飲み物を配ってから語り出した。
「さて、私の知っている情報だとどうしても大雑把な部分しか語れないからダイジェスト風にサクサク話して行くとしよう。 ―――だが折角だ、少し趣向を凝らそうか」
そう言うとリューセンはアイテムボックスから砂の入った小瓶を取り出し、その中身をカウンターテーブルの上に撒く。
続けてリューセンがパチンと指を鳴らすと、撒かれた砂が蠢き形を変え、小指の先ほどの人型の群れや、それらを取り巻く木々や山々へと変わる。
それらはリューセンの語り口に合わせて動き出した。
「王国軍から逃れ大王都を脱出したサウロン君たちは北を目指した。当時中央大陸の北側は覇王の主な活動範囲が南側に集中していた事と、現代では四方四大陸に散っている『悪魔』たちが主な縄張りとしていたことで比較的安全だったんだ。特に、サウロン君たちの様な『魔族』にとってはね」
リューセンが行っているのは魔法を使った即興の人形劇の様な物だ。
カウンターの上では大王都を表す円形の構造物を背にして進む人の集団という構図が砂で形作られ動いていた。
これをやったのは動きがあった方が話し易いとリューセンが判断したのともう一つ、ただ話しているだけでは動画映えしないだろうというダンジョーたち配信者組への配慮である。
ちなみに、この砂を使った即興の人形劇は初めて行った物ではなく、リューセンが配信者組の動画に登場する際アンティカルーナ世界の歴史を動画視聴者にも判り易く説明する為に使っている手法である為手慣れたものだった。
「悪魔……それに魔族……?」
ポツリと、疑問符の付いた言葉を口にしたのは、その場で最もアンティカルーナ世界についての知識が少ないファランクスだった。
それに気付いたリューセンは脱線し過ぎない程度に説明を加えた。
「悪魔と言うのは天使と対を成すこの世界特有の種族だよ。本来は魔界という世界に住んでいるんだが、聖天教の勢力圏である中央大陸以外の四大陸では割とどこにでも居るからいずれ出会う事もあるだろう。魔族の方は別名で魔人族とも言って悪魔の血を引く種族の事だよ。グレイスの話で『半魔』という単語が出て来たがこれは正確には『半人半魔』、人間と悪魔の間に生まれたハーフの事だ」
「なるほど……悪魔って聞くと悪そうなイメージがあるけど大丈夫なのか?」
「天使よりはずっとまともだよ。良い奴も居れば悪い奴も居るって点では人間を始め他の種族と大して変わらないさ。ただ天使は駄目だ。あいつらは何をやっても駄目だ。見かけたらすぐ連絡してくれ、直ぐに仕留めに行く」
「「「「「「私(ボク)(オレ様)たちにもな!!」」」」」」
「全員声を揃えるレベルなのか!?」
「そのレベルで害悪なんだよ、天使共は」
この場に居る面々はファランクスを除いて全員が天使と遭遇経験がある為、『天使はクソ』という共通認識があるが故のこの反応である。
具体的に一般的な天使と言う存在がどんなものなのか説明する事も出来たが、流石にそれは脱線が過ぎるためリューセンは気を取り直して人形劇を続けた。
「少し話が逸れてしまったが続けるよ。 ―――サウロン君たちは大陸を北上し続けた訳だが、その間に聖天教は王家や貴族たちと協力して中央大陸全体に悪魔やその血を引く魔族たちを排斥する風潮を作り出してね、その流れに煽られて大陸全体から悪魔や魔族たちが大陸北方に集まり、集まった悪魔や魔族たちが合流を繰り返した結果サウロン君たちの一団はそれらを取り込み一個の巨大な集団となってしまったそうだ。その集団が現在の魔王国の前身と言う訳だね」
魔王国という国はその始まりからして中央大陸で迫害され、追い出された者達によって作られた国だ。
その原因である聖天教が権勢を誇り続け、現代でも悪魔や魔族を宗教的な敵対存在と定めている事もあって王国と魔王国は千年経った現在でも戦争状態となっている。
テーブルの上では数を増やした人型の群れを、鎧を身に着け槍を手にした兵士の人型たちが追い立てている光景を形作っている。
追い立てられた人型たちはやがて新たに形作られた船に乗り込み、砂で表現された海へと漕ぎ出した。
「魔王国の前身となった魔族たちの集団は北の果てへと追い詰められ、やがて安住の地を求めて海へと漕ぎ出した。当時の北方大陸は存在は知られていたが前人未到の暗黒大陸とされていてね、流石に王国軍も自分たちが追いやった者たちを海を越えてまで追いかけようとしなかったらしい」
砂の海を進む船は、やがて新たな大地へと辿り着く。
船から降りた人型たちは、再び集団を作り歩みを進めた。
「魔族たちは未開の北方大陸を進み、その先大陸中央部に現在の首都となる『大湖沼』と辿り着きそこで国を興した。そうして史上初となる魔族の国である魔王国が生まれ、その初代魔王たるサウロン王が戴冠したと言う訳さ」
巨大な湖とそれを囲む街並みを背に、人々に囲まれた一体の人型が王冠を被る。
その様をグレイスはじっと見ていた。
「そして大王都から脱出して十年、国を整え安定させた終えたサウロン君は少数の手勢を引き連れて中央大陸へと帰還した。その理由は王国と聖天教に奪われた大切なものを取り戻す為と伝えられているが、まぁ間違いなくグレイスの事だね」
そうして遂にサウロンの物語は佳境を迎える。
魔王サウロンと覇王ローランドの戦いが始まったのだ。
「中央大陸へ上陸したサウロン君はほどなく覇王ローランドと対峙した。大陸の東西南を制圧し終え、北方後略に乗り出したローランドと遭遇したサウロン君は、相手の正体を知るや否や速攻で襲い掛かったそうだ。そうして現代にも伝わる魔王と覇王の死闘、『アルヴァレスの戦い』が幕を開けた」
テーブルの上の砂が戦場とそこに居た者たちを形作る。
片や王冠を被るサウロンの砂人形が拳を掲げて殴りかかり、片や様々な形容しがたい姿の異形を引き連れた人型、ローランドの砂人形がそれを迎え撃つ。
両雄の戦いは熾烈を極めた。
「かつて中央大陸の四分の三以上を支配下に治めた覇王ローランドだが、奴に関する情報は驚くほど少ない。どこで生まれたのか、どんな風に育ったのか、何故大陸を支配しようとしたのか、何故魔法使いを目の敵にしていたのか、どうやって魔法使いを一方的に虐殺するほどの力を得たのか、その記録はほとんど残っていない。だが、いくつか残った記録によるとローランドはいくつかの特異な力を持っていたそうだ」
砂人形のサウロンが、同じく砂人形のローランドを殴りつける。
その際にガードしたローランドの片腕が吹き飛ぶが、吹き飛んだ端からその腕は再生していた。
「記録に残るローランドの能力は主に三つ。一つは魔法使いにとっての天敵と言うべき『完全魔法耐性』、奴に対しては如何なる魔法も影響を与えられず、その特性によってローランドは魔法使いに対して絶対的なアドバンテージを持っていた。二つ目は『超身体能力』、怪力を始めとした超人的な身体能力に加え奴は大地に足を付けている限り如何なる傷も毒も瞬時に全快させたそうだ」
そう話している間にもサウロン砂人形とローランド砂人形の戦いは続く。
ローランドへの攻撃に割り込む様に数々の異形が襲い来るが、その全てをサウロンは拳で殴り飛ばし叩き潰し、ローランドに対して一切距離を取らせる事無く攻撃を続けて行く。
その様は回復能力さえなければとっくにローランドを倒していただろうと思わせるほどに圧倒的だった。
「そして三つ目の能力は『眷属召喚』、自身と同じ完全魔法耐性を持った異形の怪物を召喚し使役する能力で、これもまた魔法使いの天敵と呼ぶに相応しい能力なんだが……まぁ、ご覧の通りサウロン君には通じなかった訳だ。戦いは終始、サウロン君が優勢のまま続いたらしい。当時サウロン君が中央大陸に引き連れた精鋭の一人が戦いの様子を事細かに記した記録を残していてね、この話は北方大陸で最もポピュラーな英雄譚の一つだよ」
「……なんでサウロンはローランドをここまで戦えたんだ?」
そう訊ねたのは、当時を良く知るグレイスだった。
ジェリーが旅立ってからの一年、次々と高名な古式魔法の使い手たちがローランドの手によって討ち取られたという報告を聞いて来た。
ローランドの能力をグレイスは知らなかったが、リューセンの話でその力を知りなるほどとローランドの齎した被害に納得したほどだ。
だからこそ判らない、どうやったら記憶に残る弟分が魔法使いの最悪の敵を圧倒するほどの力を得られたのかを。
その疑問に、リューセンは自分の知る限りの知識で答えた。
「実際の所は判らないが、魔王国で初代魔王サウロンは自己強化魔法の達人だったと伝えられている。そして、ローランドの完全魔法耐性は外部から自分に影響を与える魔法は打ち消せても、自己強化の様なローランドに直接影響を及ぼさない魔法は打ち消せなかったらしい。だから多分、サウロン君は対ローランドを意識して自身を鍛え上げたんだと思うよ。自己効果を極める事で、最悪の敵に対抗するどころか圧倒するほどの力を得たんだ」
「……そうか」
ポツリとそう呟いて目を閉じるグレイス。
今、彼女の中では様々な思いが渦巻いているのだろう。
そんな彼女を慮りつつ、リューセンは話のまとめに入った。
「あと少しだから話を続けるよ? 戦いの中でローランドの『地に足を付けている限り瞬時に自己回復する』という特性を見抜いたサウロン君は眷属を無視してローランドへと突貫し、距離を詰めるとローランドの首を掴んで持ち上げ地面に足のつかない状態で殴り続けたそうだ。ローランド自身から反撃を受けようと、眷属から攻撃を受けようと構わずね」
テーブルの上では砂人形のサウロンが眷属たちに巻き付かれ、喰い付かれつつもローランドを掴み上げた状態で繰り返し顔面殴り続けるという行為を繰り返している。
デフォルメされた砂人形とは言え、余りに壮絶かつ残虐なその戦いぶりにファランクスは引いていたが、グレイスや他のプレイヤーたちは寧ろ『良くやった!』と言わんばかりの目で見ていたのが対照的であった。
「そうして自らのダメージも顧みずにローランドを瀕死に追い込んだサウロン君だったが、そこで思わぬ邪魔が入る。天使たちが横槍を入れて来たんだ。不意打ちで天使の攻撃を受けたサウロン君はローランドを手放し膝をつく、その隙にローランドは眷属たちに連れられてその場を離脱しようとしたがサウロン君はすぐさま部下たちに追撃を命じ、自身は天使たちを迎え撃った。既に満身創痍の自分ではローランドに追いつけないと判断したんだろうね」
テーブルの上では砂人形の天使が放った槍に腹を貫かれて片膝をつくサウロンと、その隙に眷属に連れられてこの場を離脱しようとするローランド、そしてそれを追う魔族の精鋭たちという展開が繰り広げられる。
ローランドとそれを追う部下たちが走り去ったところで、宙に浮かぶ天使たちを睨む様に顔を向けたサウロンが立ち上がった。
「その後はまぁ、語る事も少ない。満身創痍ではあったが、完全魔法耐性も超回復も無い天使相手にサウロン君は暴れに暴れ散らかし、最終的に天使たちはその場に居たほとんどがサウロン君に打ち取られながらもなんとか封印するので精一杯だった訳だ。ローランドの方は執拗な魔族精鋭の追撃を振り切れず、合流した大賢者を始めとする魔法使い達によって討ち取られた。魔族たちも魔法使い達も封印されたサウロン君を助けようとしたが、追加で派遣された天使側の戦力を突破出来ず泣く泣く撤退となった。それ以降、戦いの舞台となりサウロン君が封印されているアルヴァレス山は天使たちが直接地上に降りて封印を守る禁足地となっている」
そう締めくくり、最後に宙に浮かぶ複数の天使たちが山を守る様に取り囲んでる姿を取ると、砂は崩れ落ち全ての形を失った。
以上が、『初代魔王サウロンの伝説』のあらましである。
『サウロン君の伝説』
実は天使という種族全体レベルでのトラウマ存在。
本編中の描写では判りませんが、アルヴァレスの戦いの際サウロン君が屠った天使の数は四桁に上り、アンティカルーナ史上最も天使を殺した存在がサウロン君です。
どれくらいトラウマかと言うと、下級から中級の天使は『サウロン』という単語を聞いただけでガチビビりしますし、上級以上の天使は一瞬で臨戦態勢に移行するくらい警戒しています。
ちなみにとっくに倒されているので関係無いですが、当時戦った覇王ローランドもサウロン君がトラウマになりました。
どれだけ傷を与えても倒れない狂戦士みたいなのが無表情で一方的に殴られる痛みと恐怖を叩きつけて来た訳ですからね。




