第二十三話 「グレイスの過去 その三」
遅くなって申し訳ありません。
前回の前書きで次回で終わらせるとか書いたくせに、結局終わらなかったノースリーブバカデカグラサン情けない騎士シャムネコです。私の分は?(ケーキ)
次回こそ過去編終わらせますので許して、許して。
最近はガンプラの製作動画にハマっています。ナイチンゲールカッコイイ!
塗装とか出来ないので動画に出て来るような格好良い仕上がりの物は自分では作れませんが、久しぶりにガンプラを組み立てたくなりました。
ちなみに、作者が初めて組み立てたガンプラは『ダブルオーライザー』です。
師であるジェリーがローランド討伐に向かってから一年ほど経ち、グレイスとサウロンの状況は逼迫していた。
当初は心配しつつもどこか楽観的に考えていた二人だが、時が経つ毎に焦燥感を募らせている。
ありえない事だったのだ。旧世界時代から生きる伝説その物、人類史上最高の術師であるジェリー・スピークスが自ら動いたにもかかわらず、事態がここまで長期化する事など。
伝え聞く戦況も芳しくなく、ローランドによる被害は時を経るごとに拡大して行った。
「――グレイス、先生からの定時連絡が届いたよ」
「……そうか。で、どうだって?」
「やっぱりまだ帰れそうにないみたいだ。また何人も魔法使いが殺されたって」
「そうか……クソッ! あのイカレ野郎がっ!!」
苛立ちと憎悪を込めてグレイスが悪態をつく。
ジェリー不在のこの一年間、グレイスとサウロンはジェリーの残した資料を基にほとんど独学状態で魔法の腕を磨きつつ、冒険者ギルド運営の手伝いをして過ごしていた。
例え前線に出向いても足手纏いにしかならないと判っているからこそ、二人はせめて自分に出来る事を……師の帰って来る場所を守ろうと奮闘していた。
(コンコンコン)
「あ? っと、入って良いぜ!」
「失礼します」
扉を開けて入って来たのはグレイスとサウロンにとっては数年来の付き合いとなる顔馴染みの受付嬢だった。
彼女は疲労と申し訳なさが混じったような表情を浮かべている。
「どうしたんだよねーちゃん、また揉め事か?」
「揉め事では無いのだけれど……『聖天教』の人たちがまた来てるのよ」
「また奴らが来たんですか……」
『聖天教』の名を聞き、サウロンが苦虫を嚙み潰したような顔となる。
聖天教はローランドの台頭以降徐々に勢力を拡大して来た新興宗教だ。
以前から存在を確認されていた霊体種族、天使を信仰する者達である。
彼らはローランドによって次々に数を減らしている魔法使い達の元勢力圏を乗っ取る形でその影響範囲を広げていた。
「チッ、めんどくせえな。サウロンはちょっと待ってろ、オレ様が話をつけて来る」
「一人で大丈夫? 多分、いや絶対『奴』が居るよ」
「わーってるよ。けど、連中サウロンが居ると余計騒ぐからな。オレ様が行って速攻で全員ギルドの外に蹴り出してやるよ」
「あの、グレイスちゃん。一応相手は話し合いに来てるんだからもう少し穏便に……」
「ねーちゃんだって奴らに話が通じねぇの知ってんだろ? 時間の無駄だ、力尽くで叩き出すに限る」
話し合う必要も価値も無いとばかりにグレイスは実質的にジェリーの私室であるギルドマスター室を出てホールへと向かう。
そこには白銀の鎧に身を包む青髪の青年を中心に冒険者たちと睨み合う白いローブを纏った一団が居た。
青髪の青年はグレイスの姿に気付くと喜色満面の笑みを浮かべて声を張り上げた。
「グレイス! 漸く出て来てくれたんだね! さぁ、早く俺と一緒に行こう! こんな薄汚いならず者の溜まり場なんかよりももっと相応し「気安くオレ様の名を呼ぶんじゃねぇ!!」グボハッ!?」
「「「「「『勇者様』ぁぁぁーーーーーっ!!!???」」」」」
コメカミに青筋を浮かべたグレイスが一瞬で距離を詰めて青年を蹴り飛ばす。
取り巻きの白ローブ集団に『勇者』と呼ばれた青年は砲弾の様に吹き飛びギルド正面の扉を突き破りながら外へと消えて行く。
その姿を確認した上で、グレイスは堂々と自分が破壊した扉の賠償を請求した。
「おうテメェら! よくもオレ様たちのギルドの扉を派手にぶっ壊してくれたな!? きっちり弁償して貰うぞゴラァッ!!」
「なっ!? 自分で壊したのではないか!!」
「うるせぇ! そもそもテメェらなんぞが現れなけりゃ騒ぎにもならなかったんだよ!! 判ったら有り金全部おいてとっとと消え失せやがれっ!!」
言いながら抗議して来た白ローブの一人を勇者同様に外へと蹴り出すと、残りの白ローブたちも蜘蛛の子を散らすように慌てて出て行き、蹴り出されて気絶した勇者らを回収して姿を消した。
なお、蹴り出されなかった白ローブたちは逃げる際に自らの財布をその場に残して行った。
「けっ、一昨日来やがれってんだ。おい! 手の空いてる奴は落ちてる財布を回収して運んどけ、ちょろまかした奴はぶっ殺すぞ!!」
「「「「「ヘイ、姐さん!!」」」」」
「グレイスちゃん……やってる事がチンピラのリーダーだよぅ」
冒険者たちは軒並みグレイスに対して従順だった。
ジェリーが居なくなってからの一年間、ギルドマスター不在で調子に乗って悪事を働く様な冒険者が出ないよう睨みを利かせ、実質的なギルドマスター代理として振舞っていたグレイスは大王都の冒険者たちから滅茶苦茶に慕われていた。
これは別に意図しての物では無く、グレイス本人の口が悪く荒っぽいが面倒見が良いという性格と、それまでのギルドマスターであるジェリーが実力はあるがナヨナヨとしたポンコツで頼りないという印象の対比から、自然と荒くれ揃いの冒険者たちから『俺たちの姉御!』として慕われた結果のものだった。
また、本来ギルドマスター代理の任を受けていたギルド職員がジェリーの直弟子であるグレイスを頼っていたのもその状況に拍車をかけていた。
事務仕事一辺倒のその職員では力自慢の冒険者たちに舐められてしまう為、どうしてもグレイスに頼ってしまう部分が多かったのだ。
グレイス本人も、ジェリーが不在のギルドを守るために率先してギルドの仕事をしていたので、職員たちもこの一年の間に気付けばグレイスをギルドマスター扱いしていた。
「っし、邪魔者共も消えたしオメェら全員さっさと仕事に戻れよ。駆け足!!」
「「「「「はいっ!!」」」」」
パンパンと手を叩きながらグレイスが指示出しをすると、ギルド職員たちは何の疑いも無く指示通りに各持ち場へと駆け足で戻り仕事を再開させた。
その姿は、本来のギルマスであるジェリーよりも板についていた。
「さて、ねーちゃんは野郎どもの集めた財布の片付けを頼む。オレ様は戻ってサウロンと仕事の続きをしてるからよ」
「あ、うん。いつもありがとね」
「気にすんなって、大した手間でもねぇからよ」
ひらひらと手を振って戻って行くグレイス。
気楽で余裕のある態度のだが、受付だけでなく事務仕事もしている受付嬢はグレイスとサウロンが普段から手伝ってくれている仕事が決して楽なものでは無い事を知っている。
その事をおくびにも出さず、ついでにやっているだけという態度で自主的にギルドの仕事を手伝い続ける二人に、受付嬢は感謝すると共に申し訳なさを感じていた。
そして受付嬢のその思いはグレイスにもサウロンにも伝わっており、だからこそ二人はその日もまた誰に頼まれたからでも無く自らの意思で仕事を片付けて行くのであった。
―――後に、グレイスはこの日の事を後悔する事となる。
勇者ら聖天教の者たちを追い返すのではなく、殺しておくべきだったと。
破滅の日は、すぐそこまで近づいていた。
『勇者』
現代にも存在している聖天教の最高戦力たち。
天使より与えられた七本の聖剣に選ばれた教会騎士たちであり、ある一名を除いて各々が戦術兵器レベルの戦闘能力を有している。
また、グレイスに絡んでいた勇者は現代の勇者たちの先祖である一番最初の勇者、『初代勇者』である。




