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第二十一話 「グレイスの過去 その一」

修繕のエンチャント本が全然出ねぇ。

頼むからダイヤ装備ぶっ壊れる前に出てくれ。

 ―――さぁってと……どっから話すかな?


 オレ様の目的だの頼み事だのを説明するには、大雑把にオレ様の人生を一通り話さなきゃなんだが……流石にそれだと長すぎるよな?


 んあ? 構わねぇのか? 寧ろ当時の情勢なんかも含めて詳しく教えて欲しい?


 嫌だよめんどくせぇ、一通り大まかな経緯を話せば十分だろ?


 だぁーもうっ、わぁったよ! 詳しくは後で時間のある時に話すから、今は大雑把で居良いだろうが!?


 ふぅ、納得したか? なら話すぞ。


 まずは、そうだな……オレ様の生まれについてからだな。


 今から大体千年前、オレ様は今の時代には影も形もありはしねぇ大王都のスラム街で生まれ育ったんだ。






 ~~~~~~~~~~~~~~~~






 グレイスと言う少女が生まれ育ったのは、当時大王都の外周部に広がっていたスラム街の一角であった。

 赤ん坊の頃から両親は居らず、グレイスは育ての親である女性と、その女性の実の息子と共に育った。

 姉弟同然に育ったグレイスの弟分の少年、彼の名は『サウロン』と言った。



「おい、サウロン! さっさとついてこねーとおいてくぞー!?」

「ま、まってよグレイスー!」



 幼少期から体が頑丈で力強く気も強かったグレイスは、対照的に華奢で臆病な弟分のサウロンを毎日連れ回し、スラム街ではガキ大将のような存在となっていた。

 これは本人の気質という面もあったが、何より弱虫でいじめられっ子であったサウロンを他の子供たちから守るためでもあった。



「おら、もっときあいいれてはしれサウロン! はやくしねぇとわりのいいクエストとられっちまうぞ!」

「わ、わかってるよグレイス!」

「ほんとかー? きょうはこのあいだぼうけんしゃのねーちゃんにおしえてもらったやくそうあつめのあなばにいくからな。かえりにかーちゃんにうまいものかってってやるんだ!」

「うん! ぼくもおかーさんにおいしいものいっぱいたべてもらうんだ!」

「だったら、はやくいくぞ!」

「うん!」



 グレイスたちはスラム街の住人ではあったが、冒険者ギルドのおかげでそれほど困窮している訳では無かった。

 当時から冒険者ギルドは困窮した者たちへの救済措置としてクエストという形で仕事を斡旋しており、その中にはグレイスたちの様な子供向けの簡単な小遣い稼ぎの様なクエストも存在していた。

 幼き日のグレイスたちは、そう言った小遣い稼ぎのクエストを少しでも生活の助けになれるようにと毎日のようにこなしていたのだ。


 また、冒険者ギルドはクエストの斡旋以外にも様々な救済処置を行っており、その一つとして子供たちへ読み書きと計算、そして魔法を教える学習塾のような制度があった。

 将来の有望な冒険者候補を育てるという名目で行われているこの制度は、参加するとギルドから給食が配給されるという事もあり、スラム街の住人を含め貧窮している家庭の子供やその家族から歓迎されていた。


 朝にクエストを受けて午前中にそれをクリア、昼に給食を貰い夕方までは勉強、そして日が暮れればクエストで得た小銭で夕食を買って帰る。

 当時のグレイスとサウロンはそのような生活を送っていた。


 勉強を教えてくれたのはギルドの職員が主だったが、魔法の勉強だけは当時大王都の冒険者ギルドに常駐していた大賢者ジェリー・スピークス手ずからによる指導だった。

 魔法の指導内容は非常に高度な物で、多くの子供たちが挫折しシステムありきの魔法だけで満足するようになっていったが、その方面に才能のあったグレイスやグレイスに追いつこうと必死に勉強を続けたサウロンの二人だけが最後まで残り、その結果二人は大賢者に気に入られ正式な弟子として古式魔法を伝授されるまでとなった。


 当時グレイスは十歳、サウロンは九歳。

 そこからグレイスが千年を石像として過ごす事となるまでの五年間。

 その五年間こそが、自身の人生で最も幸せな時間だったとグレイスは考える。

 貧しくも明日への希望に満ちた幸福な日々。

 それが音を立てて崩れ出すのは、そのたった数年後の出来事だった。

次々回ぐらいで過去編終わらせたいなぁ(願望)


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