表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
86/92

犯人はどこにいる。

アロイス目線のお話です!

 乳母は転がるようにコニー様に走り寄り床に頭を擦り付ける。



「申し訳ございません! 私が、私が……悪いのです!」


「落ち着きなさい。エマ、アスリッドとエグモンドに何があったの?」



 乳母の背中をさすりながら、コニー様は静かに訊いた。



「ヘルミ様のオムツを変えようとしておりまして、姫様と若様に背中を向けたのです。ほんの、ほんの一瞬だったのですが……どこにもどこにもお姿が……」


「二人が部屋から居なくなったのね?」



 乳母は頷いた。

 乳母が言うには次姫の世話をするため目を離した隙に部屋から姿を消したのだという。


 長子であるアスリッド姫は5歳。弟のエグモンド様は3歳になったばかりだ。

 領主館の外に出たとは考えにくい、が……。


 子供は突拍子もない行動を起こすものだ。

 特にアスリッドさまは誰に似たのか、お転婆で好奇心を抑えられないタイプだ。

 何かに関心を持つと大人の想像を遥かに超えることを仕出かすのだ(過去にも何度かやらかしている!)。



「アスリッドとエグモンド……。二人とも困った子たちね」



 コニー様は息を整え、拳を握りしめた。



「アロイス。警備担当に門の閉鎖を伝えなさい。誰も館から出さないように。それと……」


「街道も閉鎖いたします。誘拐であった場合、おそらくはまだバルトからは離れていないはずです。領兵の指揮はローマンに取らせましょう」


「ええ。そうしてちょうだい」



 いつもは柔らかなコニー様の声が微かに震えている。

 気丈に振る舞ってはいるものの、やはり衝撃は大きいのだろう。


 俺は泣き崩れる乳母を支えながら立たせた。



「……エマ、子供部屋には護衛と侍女がいただろう。何をしていたんだ?」


「あの、ベルル様。申し上げにくいのですが……。ヘルミ様のお下を清拭する為の湯が切れておりまして、騎士様にはお持ちいただくようにお願いしておりました……。侍女も侍女長様にお声がけを……」



 偶然が重なり、一瞬、空白が生まれたのだ。


 アスリッド様はその瞬間を見逃さなかった、ということか。

 姫君らしいといえばらしいが……。


 コニー様は励ますように乳母の頬に流れる涙を拭い取った。



「泣かないで、エマ。仕方ないわ。どんなに注意していても人が関わるとミスはおこるものよ」



 最善を尽くして子たちを保護しましょうと苦笑する。

 コニー様はそう仰るものの大問題だ。


 平和というものは感覚を鈍らせる。

 警備体制を再構築せねばならないという課題ができた。


 だが、それはお子たちの確保が終わった後で考えれば良いことだ。


 俺は次官に指示を出し、警戒体制を敷かせる。

 ヘルミ様を執務室(このへや)にお連れするようにと乳母を言い聞かせ執務室から送り出した。


 コニー様は二人が退出したのを確認し、おもむろにケープをとり身にまとった。



「アロイス。私、子供たちを探しに行ってくる」


「なりません。コニー様」



 俺は扉の前に立ち、



「指先が震えております。ケープのボタンすら止められない状態でどうなさるおつもりですか。ヘルミ様と共に執務室でお待ちください」


「何を言っているの?! 私の子なのよ。イザークもいない今、守ってやれるのは私しかいないの! 何もしないで待っているなんてできないわ!」


「お願いですから、冷静におなりください」



 メルドルフの領主は今現在コンスタンツェ様しかいない。

 

 次代メルドルフ男爵を継承する予定のアスリッド様は未だ幼く弱い。

 厳しい環境のメルドルフでは、子供が無事に成人できるかどうかすら分からないのだ。


 失うわけにいかないのはコニー様の方だ。



「コニー様。あなた様まで危険な目に遭わせるわけにはいきません。私が指揮を取ります故、執務室にてお待ちください」


「アロイス……!」



 コニー様はうつむき小さく首を振った。

 紫の瞳が微かに潤んでいる。


 母か領主か。

 葛藤のすえコニー様はゆっくりと顔を上げた。



「……ええ。わかったわ。その代わりに早急に対処しなさい。日の入り前までに子供たちを私の元に連れてきなさい」


「かしこまりました」



 俺は頭を下げて執務室を出た。





 さて。

 どうしたものか。


 この館で誘拐など考えにくいが。

 気掛かりが一つ。


 無頼者たちだ。


 あいつらは法から外れた者たちだ。


 近年、政情が安定したメルドルフへの移住者が増えている。

 領の発展には人口が絶対に必要。適度な流入は大歓迎だが、人口が増えればそれだけ不穏分子も流れ込んでくるということと同意。


 労働者を装ってバルトを訪れ、金に釣られて館に入り込んだという可能性も捨てきれない。



(メルドルフを敵視する勢力はあるにはあるが。面と向かって喧嘩を売ってくるほど肝の座った領主はいないからな)



 ()()7()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 メルドルフに歯向かうことの意味は十分知っているはずだ。


 ということはパトロン付きの誘拐ではなく、単独犯の可能性が高い。



(だがこれもピンとこないな。お子たちは民からは愛されている。何か館の中で異変が起きればすぐに気づくはずだ。とすれば……)



 部外者の犯行ではない。


 つまり。

 お子たちは敷地内にいるということ、だ。

読んでいただきありがとうございます!

吉井あんです。


本編終わって6年後のお話ですが!

年齢はこうなっています。


コニー 27歳。

イザーク 32歳。

アロイス 29歳。

アスリッド 5歳(女子)

エグモンド 3歳(男子)

ヘルミ 1歳(女子)


コニーさん、いつの間にか3児の母ですw


では次回もお会いしましょう!

皆様に多謝を。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ