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【完結&漫画化】婚約を破棄された悪役令嬢は荒野に生きる。  作者: 吉井あん
第3章 悪役令嬢は過去から解き放たれる。
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46.私を離さないで。

 帝国の使節がメルドルフを去り、平穏な日々が戻ってきた。

 莫大な損害賠償を負うという大失敗ともいえる結果であったのに、正使であるハラルドは気にした風もなかった。


 次期皇太子として驚くほど、いい度胸をしている。軍人だけに妙に腹が据わっているということだろうか。


 ハラルドはメルドルフにも私にも特に感じいるわけでもなく、



「とりあえず求婚のことはしっかりと考えておいてほしい。メルドルフの未来がかかっているのだからね」



 と不穏な言葉を残していったのだけが引っ掛かったが。



 でも私はさして動揺しなかった。

 私を支えてくれる信頼できる部下にはもう打ち明けていたうえに、彼らのお墨付きはもらってあったからだ。



(アロイスがどうにでもなると言ったのならば、きっと大丈夫だ)



 自由にしていい。

 私の選択を尊重する。


 何と心強い言葉だろう。



 だから、私も決断しなくてはならない。






 春はまだ浅く時折吹き付ける風は冷たいが、日差しからは芽吹く春の命の営みを予感させる。


 そんな春の午後。

 まさしく散歩日和、である。


 私はイザークと共に館の庭園を散策していた。

 二人で広大な庭(辺境だけあり庭だけは広いのだ)を当てもなく歩き回る。


 いつもであれば公務中は表情を崩さないイザークが、今日は珍しくリラックスしていた。会話の節々に笑い声をたてる。



(公人としてではなく、私人として誘ってよかったわ)



 イザークは護衛騎士なので、公務中は私のそばにいることが義務。

 だが、今回はあえてイザークの意思を聞いた上で私人として連れ出したのだ。


 とてもプライベートな話をする為に。



 私たちは庭園の北国風の東屋に入ると、向かい合わせに座る。



「あなたと内密に話がしたかったの。だから護衛騎士ではなくイザークとして誘ったのよ。来てくれてよかったわ」


「お話というのは……コニー様のご結婚の件でしょうか」



 イザークは思い詰めたような眼差しを向けた。



「ええ、そう。私はね、これからの自分の人生は自分で決めたいと考えているわ。例えそれが皇帝や神に逆らうとしても、ね。だから今回のハラルド皇子からの求婚は受け入れられない。ただ、相手は皇室。破談にするのは大変だと思う」



 皇室からの申し出を断ることは難しい。

 穏便に断るのならば、死ぬかアロイスの言う通りに既婚者になるかしかない。



「アロイスの提案が一番差し支えなく断れると思うの。私の相手はイザークしかいない。だけど、結婚を押し付ける形にはしたくないの」



 ウィルヘルムと私の婚約は政略的なものだった。

 貴族である以上、受け入れざるを得ない縁組だった。

 全てがお膳立てされ、なすがままで、私の意思を確認されたことすらなかった。


 まぁその時の私はウィルヘルムを愛していたから気にもしなかったのだけど。


 けれど愛しても尽くしても、シルヴィアとシナリオに動かされ良いように使われてあっさりと捨てられたのだ。

 なんと愚かだったのだろう。


 二度は繰り返さない。

 次は、私は私が思う人とだけ結婚するのだ。


 そしてそれは相手に対しても同じこと。

 決して強引に決めてはならない。



「ここの領主として、このことだけではなく何事もあなたや部下たちに強制したくないのよ。なので嫌なら断ってくれてもいいの」



 「コニー様」と一息おき、イザークは困ったように微笑んだ。



「あなたがハイデランドにお戻りになられた時から、私は一生あなたの側にいると決めておりました。けれどそれは騎士としてです。あなたの隣になど立てはしないと、はなから諦めておりましたから」



 私とイザークとの間には身分差がある。


 私は爵位は無いものの貴族階級、イザークは貴族出身であるといっても騎士……正確には貴族ではなかった。

 この国にも貴賤結婚は無いことはないが、一代で成り上がった騎士との結婚は上位貴族になればなるほど好まれないのだ。



「あなたにハラルド殿下との婚姻話があると知った時、目の前が真っ暗になりました。メルドルフであなたと共に過ごすうちに、一緒に居ることが私だけの特権であると思い込んでいたと気づいたのです。他の男がさらって行くことも可能だという事を思い起こさせられました」



 イザークはゆっくりと言葉を選びながら、手を伸ばし、すこし躊躇ためらいがちに私の頬に触れる。

 イザークの手のひら、それは厚くゴツゴツした戦う男のものだった。



(でも、とても熱い……)



 私はイザークの手を引きさらに頬によせ目を閉じた。

 ゆるゆるとイザークは私の頬を撫でる。



「コニー様、あなたを他の誰にも触れさせたくはない。恩恵を受けることができるのは未来永劫、私だけであって欲しい。心からそう願います」


「イザーク……」



 イザークの琥珀色アンバーの瞳が、春の陽を受け黄金色にきらめいた。



「アロイスの提案は私にとって僥倖なのです。夢だと思っていたことが、叶わない願いが現実になったのですから。ですから、コニー様には私だけを選んで欲しい。そして私を離さないでください。私も離れません。一生あなたの横に立ち続けます」



 ありがとう、イザーク。




 私も愛してるわ。

46話をお送りします。


今回イザークがんばりました回になりました。

好きだとかは言いそうにないなぁとこんな感じに笑

ここ数回はすごく悩みながら書いています。

良い結果になればいいなぁ。



ブックマーク・評価ありがとうございます。

すごく励みにさせていただいています。

感想などもお待ちしております。


では次回もお会いできることを祈って。

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