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【完結&漫画化】婚約を破棄された悪役令嬢は荒野に生きる。  作者: 吉井あん
第3章 悪役令嬢は過去から解き放たれる。
45/92

45.あなたの思うようにすれば良い。

 どこまでも、どこまでも付きまとう原作の鎖。

 まるで呪いのようだ。

 自分が気にもとめず、無視しても向こうからやってくる。


 私はこの辺境の地(メルドルフ)で密やかに生きていきたいだけ。

 それなのに終わったことをほじくり返して、何としてでも表に引きずり出そうとするこの流れが恨めしい。


 創造主もそろそろ放っておいてくれないものか。

 私はただの不運な悪役で、メインキャラクターではないのだから。




 翌朝、アロイスとイザークが執務室に揃ったところで話を切り出した。



「アロイス、イザーク。私、求婚されたの」


「は? どこの物好きからでございますか?」



 メルドルフの筆頭行政官は不機嫌そうに訊く。

 帝国との交渉後の処理に時間がかかってしまい、ほぼ徹夜したらしいアロイスの目の下には、濃い隈ができていた。



(疲れているのは分かるけど)



 物好きは無くない?

 確かに婚約破棄された不名誉持ちかもしれないけれど。ゲテモノ扱いしなくても。私を好いてくれている(イザーク)もいるわけだし。



「物好きかどうかは分からないけれど、相手はあのハラルド殿下よ」


「なんとまぁ……。また皇室のバカどもが性懲りも無く、ですか。宮廷から追放したコニー様に再び求婚するなんて、さすが厚顔無恥の畜生。一体あの方々の脳はどうなっているのか、詳しく検分してみたいですね」



 疲労のせいでアロイスの毒舌フィルターが解除されてしまっているようだ。



「コニー様、それでどうなさるおつもりですか?」



 私はチラリとイザークを見る。

 どことなく顔色を悪くしたイザークは、そわそわと落ち着かない様子で、私と視線を合わそうとしない。



「もちろん断るわ。ウィルヘルムの弟と縁付く気なんてさらさらないの」



 私の答えにイザークが脱力し椅子の背にもたれかかる。

 大男で強面なのに、どこかかわいらしい。



 アロイスは私とイザークを見比べると、片方の眉だけわざとらしくあげ「左様ですか」と頷いた。



「……政治的には中枢と繋がっていた方が何事にも有益。ですが、現在のカスだらけの皇族にそれ程の価値があるとは思えませんし、むしろハイデランド縁者である方が断然重要です。コニー様は侯爵閣下の御令嬢。故に、優先されるべきはコニー様のお心になります。あなた様の思うようになさったらいい」



 上司の我がままを全肯定してくれる部下。

 なんてありがたいんだろう。



「本当に大丈夫なのね? メルドルフに被害はないのね? 賠償金渋られたりしないかしら」


「皇帝の出方次第ではありますが……。お気になさることではありません。()()()()どうとでもなりますし、します。あぁコニー様が望むならば、帝位もご用意することも可能ですが? なぁにやすいことです。まずハイデランドの閣……」


「ア……アロイス、ちょっと落ち着きなさい。私はそんなこと望みもしないわ。このメルドルフで皇室にわずらわされることなく、民と共に静かに生きていけるだけでいいのよ」


「ふむ、メルドルフに骨を埋める覚悟があるということですか。大いに結構でございます。では早々に民に表明いたしましょう。その折りに、コニー様の隣にイザーク卿が立っていれば尚よろしいのですが」


「え、アロイス? ちょっと突然、何を……」



 私は思わず赤面してしまう。

 領主の隣に立てる者は配偶者だけだ。


 つまりはイザークと結婚しろと言われているようなものだ。



「皇室からいちゃもんを付けられる前に婚約……いいえ結婚してしまったほうが、メルドルフとしては吉です。配偶者のある者を無理矢理奪うなどすれば、皇室の評判は地に落ちます。クズの巣窟の皇室ですが、そこまでは愚かではないと思います。ハイデランド侯爵閣下も二度目は絶対に許さないでしょうし」



 理に適っていて反論すらできない。



「コニー様のお心次第です」


「私が決めるのね」



 神や皇帝に命ぜられるのではない。

 誰かに選ばれるのではなく自ら選ぶのだ。

 メルドルフの領主として、否、コンスタンツェとして。



 私はイザークの方へ向き直す。

 照れたような困ったような表情のイザークが眩しく見えた。

45話をお送りします。


ブクマ評価ありがとうございます!

最後まで頑張ります。


次回もお会いできるように祈って。

皆様に多謝を。

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