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3

 数分も走らぬうちに、澪は足を止めた。


「はっ、はっ、はっ…な、に、アレ…

げほげほっ!」


 体力のない澪は、胸元を掴んで咳込む。息をようやく整えた辺りで、アレが追ってきている可能性に気づいてはっと辺りを見回した。

 …さっきのアレは追ってきてはいない、けれども。


「っ!!?」


 澪は慌て、すぐ近くにあったナースステーションのカウンター下に潜り込んだ。口を強く押さえつける。心臓がばくばくとひどく大きく脈打っていた。



 ―澪のよく知る病院とは、様相が一変していた。廊下のあちこちには病院着を身につけた人が立っていたが、明らかに様子がおかしかった。


 ブツブツと何事かを呟きながらあらぬ方向を焦点の合わぬ目で見つめるもの、無表情のままごつり、ごつり、壁に頭をぶつけるもの。

 暗く見通せぬ廊下の奥に向かって、笑みの形に固定された顔で手を振り続けるもの、隣に立つものの病院着をめくり腹に手を突っ込んでぐちゅぐちゅと掻き回し、病院着と床に赤を広げているもの。


 そのほかにも黒い人型になり損なったような何かがあちらこちらに点在していて、普通の人間はまるで見当たらない。



 病院は澪にとって自宅よりも馴染み深い場所だった。見慣れた場所がこんな得体の知れぬものに支配されて、混乱と恐怖で震えのあまり動けなくなっていた。

 あれらに見つかってしまえば、どうなるのだろうか。


「っ…!!!!」


 強く強く自身の口を押さえる。と、その時。


「…あら?」


 訳のわからない、理解したくない音ばかりが耳に飛び込んで来る中で、不意に聞こえたのは女性の声。


 思わずそちらを見ると、ナース服…?を着た女性と目が合った。髪はお団子にまとめ、小さな白い帽子がちょこんと頭に乗っている。何故かワンピースの上からエプロンを付けているが、それを除けば普通の女性だ。

 女性は驚愕の目を澪に向け、慌て駆け寄って澪の腕を引っつかむ。


「あなた、こんなところにいちゃダメじゃない!」


「え? ちょ、」

「立って、とりあえずこっちに!」


 女性は澪を引っ張って、ナースステーション奥の扉に駆け込んだ。

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女性の服装描写変更

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