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病院は、好きじゃない。
「澪さん、点滴新しいものに変えましょうね。変えたらすぐにお夕飯持ってきますから」
いっそ不健康と言えるほど真白い壁、コツコツと硬質な音を立てる床、院内は消毒液のような独特な臭いで満ちていて。
看護師は点滴を変えると、廊下に置いてあった銀のワゴンから食事を取ってくる。…味が薄い。せめてもう少し味を濃くしてくれたらいいのにと思いながら、箸を置いた。
「また、こんなに残して…」
「だって味が薄いです。体の健康ばっかり重視して…心の健康のためにもう少し濃くしてくださいよ」
「何度言われてもダメなものはダメです。それよりもうちょっと食べて」
「…おなかいっぱいです」
看護師は困ったような表情を浮かべ、「仕方ないわね」と夕飯を下げていった。…だって美味しくないし。味気ないとはまさにこのこと。
―お腹がくちくなって、眠気が澪を襲う。それに抗わぬまま、澪はベッドへと沈みこんだ。