表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

60/62

第60話

 山が鳴動する。

 木々は次々と爆砕され、徐々に見晴らしがよくなっていく始末であった。


「このっ!!!」


 ミーナがケルベロスの胴を斬る。

 ケルベロスの巨体に比べてミーナの剣はあまりにも小さかった。

 しかし、連続で振るわれ続け、幾度も肉体をそぎ落とされていくのを放置できるほどの余裕はケルベロスにもなかった。


(このまま押し続ければ、きっと勝てる)


 ミーナはケルベロスの周囲を動き続けて、翻弄し続けた。

 ケルベロスに狙いを定めさせず、常に先手を取り続けるために。


(……街の結界は信用しきれない。

 確かに私も、魔物が結界に弾かれるところは見たことがある。

 でも、もしも、すべての魔物や魔獣の侵入を阻めるのなら、あの村は……)


 胸を蝕む想いを断ち切るように、ミーナは剣を振るい続ける。


(このまま押し切る!! 街には行かせない!!)


 痛みに耐えきれず、ケルベロスは苦悶の声を上げた。

 一抹の希望を持ったミーナの耳に、怒りの声が響いた。


「小賢しい!!」 


 ケルベロスが両端の首からブレスを放つ。

 これまで行ってきたように、ミーナは跳躍してブレスによる衝撃波を躱すと山が大きく削られた。

 このとき、ケルベロスは初めて真ん中の首からブレスを放った。

 ミーナの視界が炎で満たされる。


「くっ!?」


 腕で顔面を庇い、着地と同時に炎で覆われるその場を離れた。

 炎はすぐに消えたが、ミーナの腕は黒ずんでいた。


(…………やられた。単調に動きすぎてた) 


 剣を持つことはできるが、今まで通りに全力で振るうのは難しかった。

 弱気になりかけた気持ちを、ミーナは無理矢理に奮い立たせる。


(ううん、剣はまだ使えるんだ。大丈夫!

 私はまだ戦える。戦って、この魔獣を倒せる!)


 気持ちを切り替えたところで、ケルベロスのブレスが放たれた。

 先ほどよりも広範囲の炎のブレス、3つの首すべてが炎のブレスを放っていた。


「ちょっと!?」


 迫る炎の壁を前にして、ミーナは慌てて後方へと跳躍した。

 敵に向かっていく気持ちが強くなりすぎていて、ミーナの反応はわずかに遅れていたが、炎は辛うじて届かなかった。

 ミーナが安堵しかけた瞬間、炎を食い破るようにケルベロスが躍り出た。


「っ!?」


 ケルベロスの右端の首の顎が大きく開く。

 ブレスを放つためではなかった。

 ミーナは反射的に剣を振るうが、巨大な牙に弾かれて転がっていく。

 勢いのまま顎が閉じられ、牙がミーナの胴を前後から貫いた。


 ―――――――――!?


 声にならない絶叫が上がる。

 ミーナはケルベロスに上半身を食われていた。

 両断までは免れていたが、ミーナの身体は巨大な牙によって深々と食い破られていた。

 ケルベロスが勝利を確信して声を上げる。


「このまま汝を食い殺し、我が血肉としてやろう!」


「あああああああああああああああああああああああ!!!」


 漆黒に染まる視界の中で、ミーナは激痛に悶絶しかけながら雄叫びをあげた。

 両手を虚空へと突き出す。

 自身に宿る強大な魔力を身体からすべて吐き出すようにして、制御を放棄した魔力を全力で放った。


「ぅおおおおおおおっ!?」

 

 ケルベロスが驚愕と苦悶の声を上げる。

 ミーナの両手から放たれた魔力球が、ケルベロスの脆弱な口内からその首を破壊していた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ