第54話
サイクロプスの魔石を前に、リーリエルは口角を上げる。
「なかなか歯ごたえのある奴だったな。
次は正面から打ち倒してみせよう」
リーリエルは、強敵を屠った高揚感に満ちていた。
そこへ、どーんっと横からミーナが抱き着いてきた。
「リー君、やったねー!」
興奮するミーナと対照的に、すんっとリーリエルは無表情になった。
「私たち、いいパーティだよねっ。
完璧なコンビネーションじゃなかった?
サイクロプスってAランクモンスターだからね。すっごい強いんだから!」
「ランクなど聞かずともわかる。
タフな相手だった」
「ふふふ~」
「何を笑っている、気色の悪い」
「だってー、リー君にくっついてても文句言われないし~」
「…………」
「うきゃー」
思い出したように、リーリエルはミーナを引きはがしにかかる。
ミーナは楽しそうに悲鳴を上げながら、素直にリーリエルから離れた。
「おおっ、これがサイクロプスの魔石!?
化け物なナリして綺麗じゃーん」
ガヴリーがサイクロプスの蒼い魔石を拾う。
目元まで持ってきて、光に反射する魔石に興味を示した。
「こうして見ると、高級感溢れてる気がするよ。
ギルドでいくらの値がつくか楽しみだねぃ」
ガヴリーは機嫌よく小躍りをする。
ミーナも嬉しそうに笑うが、あっと呟いてリーリエルに聞いた。
「リー君的には、あの魔石、吸収したかったりする?」
「当然だ。あれだけの強さの魔物であればな。
取り込めば、力の向上は期待できるだろう」
「うーん。だったら、ガヴちゃんに説明して……」
「必要ない」
「え?」
ガヴリーは魔石を高く持ってくるくる回っている。
リーリエルは、くくくと声を漏らした。
「アレは俺の力で倒したものではないからな」
リーリエル達は、セルビオの案内で進み続ける。
やがて、木々に囲まれた場所へたどり着くと、セルビオは真ん中に鎮座する石板に近づいた。
石板は台座に置かれていて、複雑な紋様のようなものがびっしりと描かれている。
高さは人の背ほどあった。
「文献では、確かこの辺りに……」
セルビオが石板の横の何もない場所を、ペタペタと触るようにしている。
「なになに、そこになんかあるの痛ーっ!?」
小走りで近づいてきたガヴリーは、まるで見えない壁にでもぶつかったようになり、涙目になって鼻を押さえた。
「痛ぃーー、鼻潰れたぁ」
「……お前、それだけ迂闊でよく単独で冒険者などやっていられたな」
「ば、馬鹿言わないでよ!
これでもボクはねぇ、罠とか発見するの得意なんだからねっ!」
「どの口が言うか」
「まぁまぁ。
ガヴちゃん、ゴル……なんとか城では、隠し扉も見つけてたよね。すごいよね」
「ミーナわかってるぅ!
そう、ボクってば目の付け所が違うからぁ」
「ゴルディート城で悪魔と遭遇したのは、元はと言えばお前が発端だったように思うが?」
「あ、あれは…………そう! あくまで調査に来たんだから!
悪魔がいなきゃ、結局何がなんだかわからなかったでしょ!?
そうそう、ボクは真実探求のために悪魔を炙り出したってわけなの!
あえてやったんだよ、あーえーてー!!」
胸を張るガヴリーを尻目に、リーリエルは空間に手を当てた。
「一体なんなのだ、これは。壁か? ここから先へは進めんのか?
向こうにも木は生えている。空間は変わらず広がっているように見えるが」
「透明な壁、なのかな?
感触は固いけど、冷たくも熱くもない。変な感じ」
「…………二人とも無視しないでよぉ」
ガヴリーは涙目になった。
「では、準備しますね」
周囲を調べていたセルビオが告げた。
セルビオが空中で指を動かすと、指に沿って白色光が描かれていく。
ガヴリーが目を丸くした。
「なにそれ、魔法!?」
「魔法と言うよりも、どちらかと言えば結界術に近いでしょうか」
「結界って街とかに張られてるアレ?
モンスターが通れなくなるやつ」
「そうです。
これは、私達が通るためのものですけどね」
楽しそうにセルビオが言って、指を止める。
セルビオは空中に魔法陣を描いていた。
中央に手を当て唱える。
「解放」
セルビオの呪文に反応し、ゴゴゴゴゴという音と共に石板が中央から左右に別れた。
「それでは、行きましょうか。
おそらくこの先が、ゴールです」
石板の間に歪みが生じ、セルビオが通ると姿が見えなくなった。
「珍妙な仕掛けだな」
リーリエルが後を追い、
「…………」
ミーナが無言で続き、
「ようやっとゴールかぁ。
手が込んでるし、これは古代の宝なんかあっちゃったりするかも~」
ルンルン気分で、ガヴリーが通り抜けた。




