第50話
翌日の昼前に、リーリエル、ミーナ、ガヴリーは街を出た。
結局バルビナの依頼を冒険者ギルドを通して受けることとなったのだ。
ベルグやイレーヌにも声をかけようとしたが、二人は見つからなかった。
3人は南の山を越え、支給された地図を見ながら指定された場所へと向かう。
道中でオークやゴブリン等のモンスターと遭遇したが、リーリエル達の相手にはならなかった。
険しい山道を超えていく。
休憩をはさみつつ、歩き続けて暗くなったころ、
「や、やっとついた……」
ガヴリーが膝に手を置いて、はぁ~っとため息を吐く。
目の前の洞窟には、いくつか魔法陣様の紋様が施されている。
魔物の侵入を阻む結界もあり、明らかに人の手が入ったものだった。
「この洞窟に今回の依頼人、セルビオさんがいるんだね」
「早く行こうよ~。ボクもうクタクタだよ~」
ガヴリーが洞窟に入りながら明かりの魔法を使おうとしたところ、呪文を唱える前に、ぱっと明かりがついた。
「ぴぇっ!?」
びくっとして、ガヴリーが後ずさる。
リーリエルとミーナが周囲を警戒した。
「び、びっくりした。急に明かりがつくんだもんなぁ」
「……誰かいるのかと思ったけど、気配はないね」
リーリエルもまったく気配が感じられずにいて、間もなく気が付いた。
「消えているな」
「あ、ホントだー」
洞窟内の明かりは消えている。
ガヴリーが洞窟に入ると、ぱっと明かりがついた。
「わー、なにこれ、おもしろ~い」
ガヴリーが洞窟を出たり入ったりすると、それに合わせて明かりが消えたりついたりした。
そして未だに人の気配は感じられなかった。
「これ、自動でできるんだ」
「便利な技術があるものだな」
「……そうだね」
ミーナが緊張した面持ちでうなずいた。
◇ ◇ ◇
洞窟の奥へと進むと、やがて開けた場所へ抜けた。
食品や衣服、その他雑多なものが至る所に積まれており、さらに奥はいくつかの部屋に分かれて続いている。
その内の一つから、男が出てきた。
「……おはよう。君たちがバルビナの言ってた人かい?」
ミーナが一歩前に出る。
「はい。私たち、先生……バルビナさんの出した依頼で来た冒険者です。
はじめまして。私はミーナです、こっちがリーリエルにガヴリーです」
男は一人ずつ顔を見て小さくうなずく。
男は中肉中背で、ローブを着ていた。見た目は20代前半といったところ。
ボサボサに伸びた翠髪、髪の間からは人よりも長い耳が出ていた。
「そっか。僕はセルビオ。
見てわかるようにハーフエルフだよ。
君たちは、まだ20歳になってないかな? 若いね。
僕は君たちの10倍は生きてるよ」
「あ、はは……」
ミーナが愛想笑いを浮かべる。
ハーフエルフと気づいた時点で、かなりの年上であろうことは予想していた。
「ダンジョンの探索は明日から行うよ。
君たちには僕の護衛をお願いする。
今日のところは奥の部屋で休んでよ。あるものは使ってくれて構わない。
その辺にある食べ物も好きに使っていいよ。
じゃあ、そういうことで」
セルビオは一気に説明を終えると、出てきた部屋へと戻っていった。
静かになった部屋で、ミーナは困ったように笑った。
「……とりあえず、ご飯食べてから休もっか。
私、用意しちゃうね」
ミーナは、積まれた野菜や干し肉を見て、
「これ、本当に使っていいのかな?」
「奴が好きにしろと言ったのだ。構わんだろう」
「そっか。そだよね。
よし、明日に備えて美味しいもの作っちゃおう!
リー君、手伝ってね!」
「お前、俺に料理ができると思うのか?」
「魔法で水出して、野菜洗ってくれるだけでも助かるから。
私だと、水を用意するのも一苦労なんだよ」
言いながら、ミーナは台所に必要なものを並べていく。
リーリエルは面倒に思ったが、空腹には勝てず適当な入れ物に水を出した。
「おい、ガヴリー。お前も手伝え……うん?」
振り返った先に、ガヴリーの姿はなかった。
リーリエルがあたりを見回すと、部屋の奥の一室から声がした。
「おおっ! ここ、お風呂あるよ! やるねー!!
…………うーん、水は出ないのかぁ。
リー! ちょっとこっち来て!! 水出して水!! ボクがあっためるからさー!!」
ガヴリーの声に、ミーナが笑った。
「リー君、行ってあげて。
山道を歩き通しだったし、汗ベタベタだよ。私もお風呂入りたい」
「……この俺を使い走りにするとはな」
不満気に言いながらも、リーリエルは魔力を練り上げ始める。
外見に気を遣わないリーリエルも、今日の移動でかいた汗は流したいと思った。




