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第41話

 ガヴリーの放った魔法、爆炎弾バースト・フレアは魔弓を介して人の大きさほどの炎球として発射される。

 炎球はダミアスに接触し、炎が包み込むと同時に爆散してダミアスを吹き飛ばした。


「…………ぐ……」


 吹き飛んだダミアスが地を這いずる。

 起き上がろうとするが、もはや身体に力が入らなかった。


「……馬鹿な……この俺が…………人間の小娘なぞに……。

 こんなこと……ありえるわけが……」


「実力もわからん相手に舐めてかかるからだ」


 リーリエルがダミアスの前に立ち、拳を振り上げる。

 その姿を見たダミアスが驚愕した。

 リーリエルの頭部を凝視する。

 そこには、髪に隠れるようにのぞく小さな角が見えていた。


「……馬鹿な!? その角……お前、魔族か!?

 なぜ、魔族が俺の邪魔をする!?」


「終わりだ」 


 リーリエルは迷いなく拳を打ち付ける。

 頭部をつぶされたダミアスは間もなく魔石へと変化した。

 リーリエルは魔石には目もくれず、周囲にとどまっているオーク達を睥睨した。


「次はどいつだ。

 さっさとかかってこい」


 リーリエルが一歩踏み出した途端、オーク達は蜂の巣をつついたようにバラバラに逃げ出した。

 騒々しい音が響いていたのも束の間、周囲は静寂に包まれた。


「ふん」


 リーリエルは右肩を軽く回し、左手でオーガの魔石を拾う。

 ガヴリーの下へ歩いていくと、ガヴリーは爆炎弾バースト・フレアを撃った状態で固まっていた。


「いつまで構えている。とっくに戦いは終わっているぞ」


「………」


「おい、ガヴリー?」


「…………ったい……」


「あん?」


「いったーーーーーーーーーーーーーーーーーい!!!」


「ぐおっ!?」


 ガヴリーに顔を寄せたリーリエルは、絶叫を聞いて大きく身をよじった。


「な、なんだお前!?」


「いった、いった、めっちゃくちゃ手ぇ痛ああああああああああああああああああああいいいい!!!

 絶対コレ火傷してるよおおおおおおおおおおお、どちゃんこ痛あああああああああああああああ!!!!」


「ぐっ!? う、うるさ……」


 リーリエルが顔をゆがませて両耳を抑えようとする。

 しかしガヴリーは魔弓を放り投げて、涙目でリーリエルの両手をがっと握った。


「あのオーガ、クソでかな剣ぶんぶん振り回すからめちゃくちゃ怖かったし、どんどん距離詰められるから狙いつける暇なかったし、こんな間際で爆炎弾バースト・フレアとか撃ったら絶対に反動で焼けちゃうと思ったよおおおおおおおおお!!!

 いだいよおおおおおおおおおおおお!!!!」


「馬鹿!! 静かにしろ!!! 痛いならとっとと治癒魔法を使えばいいだろ!!!」


「こんなに痛いのに魔法使う集中なんてできるわけないでしょおおおおおおおおおぴえええええええええええ!!!!」


「うるさい、とっととこの手を放さんかああああああああああああああああ!!!!!」


「手ぇ振らないでいたああああああああああああああああああああああああああああああああいい!!!!!」






 げんなりとした表情で、リーリエルは夕闇に染まる山を降りていた。


「……まったく、戦うよりもよほど疲弊したわ」


 ぴえんぴえんと泣き続けるガヴリーの手をどうにか振りほどいて、リーリエルはポーションの入っていたバッグを取りに行く羽目になったのだ。


「ちょっと、リー、速い」


 ガヴリーの両手は爆炎弾バースト・フレアの余波で焼けていた。

 リーリエルにポーションをぶっかけられ、ある程度回復はしたが全快には至っていなかった。

 治癒魔法を使おうにも、ガヴリーの魔力はすでにからっぽであった。


「うるさい、こんなペースでは完全に日が暮れる」


「あのねぇ、ボクまだ手ぇ痛いんだからね」


「ならば離せばいいだろう。

 一人で歩け」


「ぷぷぷー、リーは馬鹿だなぁ。

 めっちゃ疲れ切ってるんだから、ボク一人でまともに歩けるわけないじゃん」


「………」


 馬鹿にされた瞬間、リーリエルは拳を固めるがギリギリで踏みとどまる。

 ガヴリーは痛みの残る手で、リーリエルの裾を掴んだままフラフラと歩いていた。


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