表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

34/62

第34話

「ヴァンパイアの魔石をあげたああああああ!?」


 ガヴリーの叫びにリーリエルは動じず、ただ騒々しいとばかりに顔をしかめた。


 リーリエルは用件を終えたので教会を出ると、外で遊んでいたミーナたちが子供たちと別れて合流した。

 ミーナに教会でのことを聞かれたためリーリエルが話していたところ、ガヴリーが絶叫をあげたのだ。


「ヴァンパイアって、あの城にいたヴァンパイアだよね!?

 ばっっ、ばっ、ばっばっ、馬鹿じゃん!? 君、アレの魔石がどんだけの価値なのかわかってんの!?」


「知っている。お前が受けた調査依頼の報酬よりも高いのだろう」


「はああああああ!? なんで知っててそういうことすんの!?

 馬鹿じゃん! 超馬鹿じゃん!! もったいなあああああいぃぃぃ!!!!」


「馬鹿はお前だ。俺のものをどうしようが俺の勝手だろう」


「うっ…………そ、そりゃそうなんだけど……。

 ちょっとミーナ! いいの!? よくないよね!?」


「う、う~ん。いいか悪いかで言われると、悪いとは言えない、かなぁ。

 ホントにいいの!? とは思っちゃうけど」


「俺が決めたことだ、いいに決まっている」


「じゃあ、いんじゃないかな?」


「ちょおおおおお!?

 ダメでしょミーナ!! この子、絶対ちゃんと理解してないって!! ド田舎から出てきたんでしょ!? お金のこと自体よくわかってないんじゃないの!?」


(ガヴちゃん鋭いなぁ)


 騒ぎ立てるガヴリーに、ミーナはしみじみと感心し、リーリエルは取り合うことを完全に放棄したのだった。





 三人は、武器屋の前にいた。

 用件を終えたリーリエル、もともと暇だったミーナはやることがないため、ガヴリーに連れられてきていた。

 ガヴリーは鼻歌交じりに、ミーナは普通に、リーリエルは気乗りしない表情で店へと入った。


「いらっしゃい、ここは武器屋だ。

 ……おや、君はこの前の。ははっ、嬉しいな。また来てくれるとは」


 落ち着いた声音の女店主、ゲルトがリーリエルを目にして柔らかくも妖艶な笑みを浮かべた。

 リーリエルは不満をあらわにして、


「来たくて来たわけではない。

 こいつがここに用があるというだけだ。勘違いするな」


「ふんふん、この感じ、わかるぞ。君はツンデレというやつだろう。

 安心してくれ、私は包容力には自信がある。君の素直になれない本心も察し、海のように広き心で包み込んであげよう」


「つんでれとは何か知らんが、お前が寝言をほざいているのはわかる。

 そのイカレた頭の中をくりぬいて水でゆすいだ後、教会に行き神父にヒールでもかけてもらえ」


「ふふっ、小鳥のように愛らしいさえずりだ。もっと聞かせてくれたまえ」


「…………」


 笑みを崩さないゲルトに、リーリエルは諦めたようにため息を吐いた。

 何を言ったところで無駄だと理解したのだ。

 満足そうにうんうんと頷くゲルトに、ガヴリーがひょこっと前に出て声をかけた。


「こんちわー。この街だと一番いい武器屋がここだって聞いたんだけど、弓ってある?」


「うむ、弓ならばそちらの方だ」


「ほうほう…………かなり品揃えいいんだね。ミーナがおすすめするだけはあるよー。

 おぉっ! 魔弓もちゃんとある!」


 ガヴリーが並べられた弓から、短弓をひとつ手にして吟味する。


「マイナー武器だからしょうがないんだけど、魔弓ってあんまり見かけないんだよねー」


「私の店はかゆいところにも手が届くのが自慢だ。様々な武器を抜かりなく扱っている。

 当然、質にもこだわっているぞ」


「確かに。なんかよさ気な感じがする。あ、これもいい感じ。お、これも~」


 ガヴリーが次々と弓を手に取っていく。

 ミーナも一緒になって弓を見る。ガヴリーのように良し悪しまではわからなかったが、普段手にしない武器を前に興味をひかれていた。

 ゲルトは、ぐっと親指を立てて、

 

「ふふふふ、なんとも愛らしいな。

 見ているだけで、世に疲れた心を癒してくれる」


「お前、口がなければよいのにな」


 周囲に並べられた武器防具は、リーリエルにも確かな質のシロモノとして映っていた。


「そういえば、君が着ていた『ノッシュローズ』はどうしたんだい?」


「あの呪われた服のことなら解呪した。

 呪いを解いた神父が怨念のようなものを感じたと言っていたぞ」


「怨念とは心外だ。慈愛と真心を込めただけなのに」


「なるほど、怨念だな」


「武器屋の心、使い手知らずといったところか。

 ところで、君は魔法は扱えるのかい?」


「ああ」


「それは重畳!

 ちょうど昨日、会心の出来の杖が完成したのだ。

 魔法威力をこれだけ増幅できる杖は、そうそうないと自負している」 


 ゲルトに差し出された小さな杖を、リーリエルはつい手にした。


「……やたらとキラキラしているように見えるんだが」


「様々な宝玉を埋め込んでいるからな。それが杖の能力を大幅に向上させている」


「……………………振ると、星が出てくるんだが」


「使用者の魔力伝導・増幅率がよいと、そのように小さな星が出るのだ。出てくる星の数が杖の効力と比例する。

 うむ、実に君と相性がよい武器のようだな! 最高に似合っているぞっ!

 なに、心配しないでくれ。私は君から暴利をはたらこうとは考えていない。利益なし、材料費のみで……」


 リーリエルは、叩きつける勢いでカウンターに杖を置いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ