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第31話 四天王、魔石をしまう

 悪魔デーモンたちとの戦いを終え、リーリエルたちはゴルディート城を後にした。

 念のため城中を全員で確認したが、失踪したとされる村人はいなかった。

 イレーヌの言では、「吸血鬼ヴァンパイア悪魔デーモンを呼びだすための贄として、少しずつ各所から村人をさらったのではないか」ということであった。

 イレーヌとベルグは、ギルドに依頼を出された件だけではなく、別々の村から少しずつ村人が消えている情報を得ていたのだ。

 イレーヌの考えを証明する術はなかったが、実のところそれは事実であった。


 一行は街へ戻るとギルドへ顔を出し、受付の禿頭の男、コリンに経緯を説明して報酬を得た。

 悪魔デーモンと遭遇したことにコリンは驚いたが、難敵を打倒したリーリエルたちの無事を喜んだ。

 5人は報酬を山分けすることで同意し、酒場で依頼達成を祝う。

 リーリエルは腹が膨れてから宿に戻ろうとしたが、ミーナに引き止められ、今日一日言うことを聞くということをたてにされ渋々最後まで付き合った。

 深夜になり、ガヴリーとベルグが酔いつぶれると解散となった。




 リーリエルは宿へと戻り、ベッドで横になっていると、コンコンっと控えめなノックがされた。

 扉が開けられ、ミーナが顔を出す。


「リーくん、起きてる?」


「何か用か」


 リーリエルが身体を起こし顔を向けると、ミーナは安心して部屋に入りベッドに座る。

 ミーナは酔いつぶれたガヴリーを、ガヴリーが以前に泊まっていた宿へと送ってきていたのだ。


「忘れないうちに渡しておこうと思って」


 ミーナの手には、薄紫色をした魔石があった。

 リーリエルは見覚えのある魔石を見て考え込み、やがて心当たりに思い至った。


「……ひょっとして、あの吸血鬼ヴァンパイアのか?」 


「やっぱりそうだよね? 前に城を調べたときに最上階で落ちてるの見つけて拾っといたんだ。

 さすがに悪魔デーモンには劣るけど、これだって十分質のいい魔石だよ」


「ほう。ミーナ、なかなかやるな」


「うん? そっかな? えへへへ。私もね、よく気づいたよね」


 照れるミーナに、リーリエルは口元を緩めた。


「報酬は山分けということで同意していたにもかかわらず、こっそりと戦利品を隠し持っておくとは。

 悪魔デーモン戦で見せた不意打ちといい、お前の行動は非常に合理的だ」


「ちょっと、リーくん。変な言い方しないでよ。

 それだと私がなんだかずるい人みたいじゃない」


「自覚がないのか?」


「リーくん!」


 ミーナがぷくっと膨れるが、リーリエルは気にした風もない。


「もう!

 ……吸血鬼ヴァンパイアはリーくんが一人で倒したんだから、これはリーくんのものでいいでしょ」


「それもそうか」


「どうする? また吸収しちゃう?

 売ったりとっておきたいなら、私が預かっておこうか?」


 ベッドに置かれた薄紫色の魔石を、リーリエルは左手でとる。

 ミーナが機嫌よく、若干だらしない顔をした。


「あ、吸収するんだ?

 リーくん、また綺麗になっちゃうんだ。困っちゃうねー」 


「お前は何を言っているんだ?」


「あれ? リーくん、ひょっとして気づいてないの?

 実はねー、コボルトウォーリアーの魔石のときに気づいたんだけど、リーくんが魔石を吸収したときって、輝くようなお肌に………………あれ?」


 得意気にしていたミーナが首を傾げる。

 リーリエルの手には魔石が置かれたままで、手の中に吸い込まれるようなことはなかった。


「どうやら、魔石を吸収できるのは右手だけのようだな」


 リーリエルは得心し、自分の魔石袋にしまう。

 冒険者となったときに、魔石袋はギルドから支給されていた。


「……リーくんて、なんか不思議の塊みたいだね」


 魔石袋を机に置いたリーリエルが振り返る。

 ミーナは淡く微笑んでいた。


「魔石が吸収できちゃうのも、魔法を使ったら女の子になっちゃうのも。

 身体はすっごい丈夫だし、魔物だって殴って倒しちゃうし」


「俺にはお前や、この世界の方がよほど不可思議だな」


「世界は知らないけど、私は普通の女の子だよ」


「くっくっく。いい冗句だ」


「ジョークじゃないし」

 

悪魔デーモンとやらを一撃で倒す者を普通と言い切るとはな。

 お前の感覚がズレていることは、俺でもわかる」


「それは…………ぶぅ」

 

 ミーナは眉をひそめるが、すぐに戻した。


「ねぇ、リーくん。今日楽しかったね」


「ほう、意外だな。お前もあの戦いを愉しめていたとは」


「そうじゃなくって! 戦いは大変だっただけだよ!」


「なんだつまらん」


「もー。酒場で打ち上げしたでしょ?

 みんなでワイワイして、いっぱいご飯食べて、お酒飲んで、いろいろ話して」


「騒がしかったな」


「こういうのは、賑やかだったっていうんだよ」


 ふふんと得意気に笑うミーナに、リーリエルはわざわざ反論することはせず、適当に「そうか」と相槌をした。

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