第28話 四天王、思いつく
悪魔の魔法の準備が整い、唱えようとしたとき、
「燃囲円!!」
悪魔は紅蓮の炎に包まれた。
リーリエルが声の方へと顔を向けると、ガヴリーがヤケクソ気味に爆笑していた。
「ふひ、ふひひへへへへへへへ!!!
どーだこの化け物!! 燃えろ燃えろ燃えろ!!! あーっはっはっはぁ!!!」
ガヴリーから放たれた炎魔法は、悪魔の意識外からの攻撃であり、なおかつ悪魔は攻撃の意志で満たされていたことから、奇しくも完璧なカウンターとして直撃していた。
炎の効果が消えると、悪魔の身体は煤けて、纏っていたローブはボロ布と化していた。
「……ギギ」
「よーし! よしよしよし!! 効いてる効いてる、ボクの魔法ってば効いちゃってるぅっ!!!」
ガヴリーがリーリエルへ駆け寄り、勝利を確信してホクホクのドヤ顔をした。
「どう? どう? ど~お~ボクの魔法!?
なんか、あいつに君の攻撃効いてるっぽかったし、もしかしてボクの魔法も効くんじゃないかなーって思ったけど、やっぱりだったね!!
あいつ悪魔だけど、雑魚だよ雑魚! 君がひきつけて、ボクが魔法で撃つ!!
ボクたちが力を合わせれば、楽勝だね!!!」
「急にやる気になったな、お前」
「だってだってだってぇ、もう絶対ダメかと思ったけど、君はいい勝負してるし案外いけそうだったじゃん?
チャンスは逃さず、畳みかけてこそだよねっ!」
(現金な女だ)
リーリエルは呆れるが、ガヴリーの放った魔法は確かに悪魔を焼き、ダメージを与えている。
戦いに割り込まれた事実は気に食わなかったが、ガヴリーの奮闘自体は認めていた。
「ではその調子で、もっと強力な魔法を使うのだな。
あれでは奴を倒せん」
「ふぇ? でも、結構ダメージ受けてる感じだったよ……」
ガヴリーが言葉を引っ込めて、サーっと顔を青くした。
悪魔の羽織っているローブはボロ布となっていたが、受けた傷は急速に回復をしていた。
「ちょ、ちょーー!? なにあれ!? 魔法もなんも使わないで回復しちゃうとか反則じゃない!?
ズルだよ、ズルでしょあんなのーー!?」
「戦いにズルも糞もあるか。だいたい奴が回復することなど、ベルグやイレーヌの攻撃を受けたときからわかっていたことだろう。
一撃で倒すか、さもなくば回復する間もなく連打すればいいだけだ」
「む、無理だよぉ……燃囲円って、ボクの今使える一番強力な攻撃魔法だし、とてもじゃないけど連続でなんてできないよぉ……」
ガヴリーは一気に勢いをなくして、ぺたりとその場に座り込んだ。
「あぅあぅあぅ。やっぱり悪魔は悪魔なんだぁ。
うぇぇぇ、なんでボクってば調子のって出てきちゃったんだよ……ぐぇっ!?」
リーリエルがガヴリーの首根っこを掴み、右方へと投げ捨てた。
それと同時に、悪魔が両の手を突き出した。
悪魔が魔法を解き放つ。
「獄災」
悪魔の掌から漆黒の炎が生じ、あっという間にリーリエルへと迫る。
リーリエルは左へ跳躍して躱すが、黒炎はリーリエルを逃すまいと追い続ける。
「鬱陶しいわ!!」
リーリエルが拳を振るい、黒炎をかき消そうとする。魔力強化された拳により、黒炎は部分的に霧散するが、すべては消しきれずリーリエルの右腕にからみついた。
リーリエルは顔をしかめ、何度か左手で乱暴に払うと、黒炎はようやく消える。後には、肉の焼けた匂いがした。
「グギギギギ……オマエヲ、クラウ、ワレ、タマシイ、クラウ」
「ふん、すでに言ったはずだ。この俺を倒せたのならばとな」
「クラウ、クラウ、ワレクラウ、オマエクラウ、クウクウクウグウグウゥゥゥゥゥゥ!!」
地獄の底から漏れだしたようなうめき声による威圧に、離れた場所にいるガヴリーは「あわわわわっ」と、ガタガタ震えまくった。
リーリエルは悪魔の威圧は意に介さず、集中して魔力を練り上げ始めた。




