第23話 四天王、舌打ちをする
リーリエルとミーナは教会を出て、一度宿へと戻ってきた。
リーリエルの来ていたゴスロリ様の服を置いてくるためである。
「あぁあぁ。かわいかったのになぁ。癒しがなくなっちゃうなぁ」
ミーナはブツブツ言いながら、部屋の隅に服をかける。
「まだ言うかその口は。
文句があるなら、貴様が着ればいいだろう」
「いやー、私にはちょっとハードル高いからさー。
だって目立つじゃない? この服って」
「……貴様はその目立つ服を、四天王であるこの俺に着ろと言うのか?」
「うん! ふぁぐっ!? いったーい!?」
◇ ◇ ◇
「で、なんでまたギルドに戻ってこなければならんのだ?
いい加減理由を話せ」
「もうすぐわかるよー……あ、いたいた。おーい!」
ギルドに併設された食堂内を見渡し、ミーナが手を振る。
その先では、同じように手を振る人物がいた。
「お待たせ。うわっ、随分頼んだねー」
ミーナは迷いなく席につくと、テーブルいっぱいに並べられた料理に圧倒された。
「ここ数日、まともなもの食べられなかったからさ。
昨日もいっぱい食べたんだけど、さっき起きたらお腹ペコペコで。ちょっと待っててね」
にぃっと笑って、銀髪の少女は並べられた料理を、見る間に平らげていく。
右耳の上で縛った髪が、食べる動きに合わせて揺れていた。
ふえーっと驚くミーナの横で、リーリエルは苦虫をかみつぶしたような顔をする。
「……貴様、どういうつもりだ?」
「うん?」
「今更こいつに、なんの用があるというんだ?」
「リーくんは、ないの?」
「当たり前だ。こいつと俺は何の関係もない」
リーリエルは、食事に夢中になっている銀髪の少女、ガヴリーを忌々しそうに睨みつけた。
「そっかー。リーくんにはないんだー」
「なんだその含んだ言い方は?」
「別に何も含んでないよー。
ただ、この後ガヴちゃんと一緒にお仕事するだけだよ。
昨日、街に帰ってくる途中、いろいろと二人で話したの」
「仕事だと? ギルドの依頼か?
別にこいつを連れて行く必要は……」
「と・こ・ろ・で。リーくん、約束は忘れてないよねー?
今日は一日、私の言うこと聞いてくれるんだよね? 朝そう言ったよね?
まさか魔王四天王ともあろう方が、ちょっと気に入らないことがあるからって、一度決めたことを簡単に反故にしたりなんかしないよねー?」
「勝手に誤解するな。気に入らんとは言っていない。
俺はただ、何でだと理由を聞いているだけだ」
「……リーくん。今にも机叩き割りそうな雰囲気で、そんなこと言われても説得力全然ないよ」
苦笑するミーナの言葉に、リーリエルは目を逸らして舌打ちした。
「わかった。勝手にしろ」
「うん、そーする」
吐き捨てるようなリーリエルの言葉に、ミーナは気にした様子もなく答える。
リーリエルは、ますます顔をしかめた。
「それでね、今日は昨日のお城に行くんだよ。
コル……コルテット城だっけ?」
「ゴルディート城だ。
なぜまたあそこへ行く? あの城に巣くっていた吸血鬼は殺したぞ?」
「そうだね。でも、ガヴちゃんは、まだ解決してないって言うんだ」
「解決?」
「ガヴちゃんがギルドから受けた、村人の失踪事件の調査依頼」
「あの城の吸血鬼が攫っていたのではないのか?
吸血鬼は人間の生き血を好むのだから……」
言いながら、リーリエルは違和感を覚える。
(……待て。吸血鬼は確かに人間の生き血が好物だ。
だがそれは、確か……)
考え込むリーリエルの横から声がした。
「吸血鬼は人間の生き血を好むけど、より嗜好に合うのは若い人間のものに限られる。
失踪事件の原因が吸血鬼なのだとしたら、村人たちが老若男女問わず姿を消したのは、腑に落ちない話ね」
「イレーヌさん?」
「こんにちは、ミーナちゃん、リーリエルさん。
そっちの子は、はじめましてね」
イレーヌは人当たりのいい笑みを浮かべる。
「さっそくだけど今の話、私とベルグも一枚かませてもらえない?」
「え? 私はいいけど……」
ミーナは、イレーヌとベルグを交互に見てから、リーリエルに顔を向けた。
「リーくん、どうしよ?」
「好きにしろ。まともな戦力が増える分には、困ることはない」
「そっか。そうだよね。
ねぇ、ガヴちゃんはどうかな? 二人とも、信頼できる人たち、なんだ、けど……」
「ぷはーっ!! 食べた食べた!! お腹いっぱいだぁ!!! も~、満足満足ぅ!!!
……ん? だれ、この人たち?」




