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第12話 四天王、得る

「リーくん!」


 ミーナが小走りでリーリエルへと駆け寄る。

 リーリエルの傍らには、先ほどまで戦っていたコボルトウォーリアーがうつぶせになって絶命しており、ちょうど魔石へと変化した。


「……うわー。ウォーリアー、本当に一人で倒しちゃったんだね」


「当然だ」


「あはは、自信満々だね!

 でも、本当にすごいと思うよ。

 私一人だったら、きっと逃げちゃってたと思うし」


「ふん、どうだかな」


 へらへらと笑うミーナに、リーリエルは疑いの視線を向ける。


「お前こそ、コボルトの残党どもを片付けてきたのだろう」


「あ、リーくんも気づいてたんだ」


「奴と戦っていたから雑魚どもの気配まではつかめなかったがな。

 この手の魔物が群れていないなどありえん。お山の大将を気取るものだろう」


「だねぇ。リーくんが大丈夫そうだったから、私はそっちに行ったけど。

 でもやっぱり、ウォーリアーは危険だからさ。

 リーくんを一人にするのは少し不安だったんだけどなぁ」


 言いながら、ミーナは背負ったバッグからポーション入りの小瓶を手にして、リーリエルへ差し出す。


「リーくん、大きな怪我はしてない?

 軽い傷しかないなら、これで治せるよね」


「…………もらっておこう」


 リーリエルがポーションを飲み干すと、衣服に隠れていた箇所の打撲傷が癒されていった。


(この身体、力は弱いが、耐久力については以前の俺と大きな差はないように思える。

 いや、耐久力だけではない。

 この貧弱な身体でトロルやコボルトウォーリアーとやらが倒せるのだ。

 打撃術ストレングスによる打撃力の上昇効果も、それほど変化がないのかもしれない)


「この身体でも、立ち回り次第ではやりようがある、ということか」


「この身体?

 ……あ、そっか。前のリーくんってムキムキさんなんだったっけ?」


「ふっ、そうだ! 実戦で鍛えられたこの俺の肉体は、それは見事なものだった!

 見れば貴様も恐れおののき、そのような慣れ慣れしい態度も取れんことだろうよ!!」


 リーリエルは、自分の細腕をすりすりと触るミーナに誇るように言った。


「そっかそっかー。よかったぁ。

 私、今のリーくんがいいからさぁ。あんまりごっついのとか好きじゃないんだよねー」


「お前の好みだと知るか! 忌々しい! 離せ!!」


 リーリエルが振り払う前に、さっとミーナが手を離した。


「このっ、すばしっこい奴め!」


「まぁまぁ、怒っちゃ嫌だよ、リーくん。

 コボルトの魔石も結構集まったし、アイリーン湖の報酬もあるし、それにウォーリアーの魔石だってあるんだから。

 今夜のご飯は豪勢にいっていいと思うんだよね!」


「…………ふん、別に俺はどうでもいいが、お前がどうしてもと言うなら付き合ってやる」


「もー、リーくんってば素直じゃないんだからっ」


 ミーナが地面に落ちているコボルトウォーリアーの魔石を拾う。


「ほら、忘れないようにちゃんと持って帰らないと」


「そうだな…………あ」


 ミーナから魔石を受け取ると、間もなく魔石はするりとリーリエルの手の中に入っていった。


「ああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

「ぅぐっ!? 貴様、声がでかい!? うるさいぞ!!」


「だってだって!! ウォーリアーの魔石ってなかなか市場に流れるものじゃないんだよ!? 高級品なんだよ!?

 それなのに、それなのに……あぁぁぁぁぁもったいなぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!!!」


 ミーナが情けない顔で、未練がましくリーリエルの手を取る。


「知るか! 大体お前が俺の手に乗せたのが原因…………っ」


 その瞬間、リーリエルの心臓が跳ねた。


「だってだってだって!! 普通魔石を吸収するなんてないもん!!

 あぅあぅあぅあぅあぅ!! 絶対、絶対いいお金になったし、それこそ武器の強化に使うのだってよかったのにぃ……」


「…………」


「……まぁ、うっかりしてた私のせいだよね……くすん。ごめんねリーくん。

 ウォーリアーの魔石はなくなっちゃったけど、それでもコボルトのと依頼の報酬はあるわけだし、やっぱり今夜はパーっといっちゃおうか?」


「…………」


「リーくん?」


 黙り続けるリーリエルにミーナが顔を向ける。

 リーリエルは拳を握り締め、それを凝視していた。


「どしたの?」


「力だ」


「え?」


「力が…………力があふれる…………」


 リーリエルは、自分の体内に循環するなにがしかの力を感じていた。

 今まで感じたことのない、不可思議な熱。

 炎のように熱く、しかし身体を焼くことはなく、むしろリーリエルは心地よさすら感じていた。


(決して大きな力ではない。どうということのない、弱々しいものだ……。

 しかし、この変化。先ほどの魔石を吸収したことによるもので間違いないだろう。

 であるならば………………この事実は、俺にとって決して無視できるものではない、非常に重要なことだ!!)


 リーリエルは口角をあげ、以前のように胸を張り、堂々と、生き生きと嗤った。


「くくくくくくくく! いいだろう!!

 弱体化したこの身体がどこまで強くなれるのか、試してみるのも一興だ!!!」


「り、リーくん……?」


「くははははははははははははははっ!!

 クソッタレな世界に転移したと思っていたがな!!!

 この俺の天運は、その程度で尽きるほどヤワではないということだ!!!!

 くははははははははははははははははははははははははははははははははっ!!!!!」


 テンション爆上がりのリーリエルを前にして、ミーナはびっくりしながらも、素直な感想を漏らした。


「………………ねぇ、リーくん。

 なんだか、肌も髪もすごーくツヤツヤになってるように見えるんだけど……?」

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