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エンディット・エンドロール  作者: 春夏秋 冬
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序章

 自身の頭に触れると、そこにはいつもと変わらないように髪に隠れた角が二本生えている。

 あまり角が大きいのかと言われると、髪に隠れるほどだから決して大きいとは言えない。でも、僕にとってこの角は存在としてとても大きなものであった。

 何故、この角の事を大きく考えるのか。そう思って脳裏に浮かんだ答えは、僕たちによく似た化け物のことだった。

 角を持たないこと以外は僕たちと何ら変わりのない種族。

 けれど僕は、化け物たちに会ったことが一度だってない。じいの話と、ちょっとした文献。その中でしか僕は化け物たちについて知らないのだ。

 じい以外に化け物たちの話を聞くと、誰だって首を横に振ってこたえようとしてくれない。それどころか化け物たちを知っている人たちのほうがよっぽど少なかった。

 それは仲の良かった給仕(メイド)も、姉さまたちも同じだった。

 僕たちと姿がよく似ているという化け物たちは、国の中では禁忌(タブー)の存在であると僕が知ったのは、疑問を持ってすぐの事だった。

 でも、当時の僕にとって知らないことを知らないままにするのはとても嫌だった。物分かりがいいとは僕自身も分かっていたはずなのに。

 それからは国中の本という本を漁りに漁った。高位の研究者たちにも話を聞きに行った。

 結果、化け物たちについて書かれていた本は二冊。身体的な特徴と、昔についての出来事、あとは悪口。労力の割に合わない褒賞だった。

 

 それでも、あの労力は無駄ではなかったとは、自分自身が知っていることだ。

 小さな探究者が残した功績は僕のもとから離れることはない。時が経ち、あの頃からすでに七年過ぎた今でも、化け物たちに対する疑念は晴れることはなかった。

 

 今になってじいの話を思い出すと、彼の話は化け物たちについて随分と肯定的だったことを覚えている。

 化け物たちの話をするじいの顔は随分と和やかだった。小さい子供たちにおとぎ話を聞かせている時のような顔。今はもう、その顔を見せてくれることは叶わないが、僕はその顔が大好きであった。

 それについて思い返すと、ひとつ、いつも疑問に感じていたことが脳裏へとよみがえった。

 じいは…、化け物たちをこう呼んでいたのだ。


 『人間』と。

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