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終わる世界で育つ願い  作者: Velu
プロローグ
3/3

プロローグ3

遅刻、それは魅惑の香り。


学生にとっての遅刻とは、なにか特別な行為には感じないだろうか。

小学生の時、軽い風邪をひいてしまった結果、病院に行ってから学校へ向かうという流れを誰しも1度は辿るのではないだろうか。


皆勤賞目指してたから無い?んじゃそれは知らん。


それを考慮に入れたとしても半分くらいはいるだろう。

皆は真面目に朝から登校しているというにも関わらず、1人だけ遅れて潜る校門・下駄箱で靴を履き替える時・教室へ向かう廊下の静けさ、いつもとは少し違う印象を持ったのを覚えている。

なんだか皆に申し訳ないなぁと思う反面、新しい世界や新しい自分を見つけたようでワクワクしたものだ。

男子に限って言えば少し不良っぽい自分を演出できる独壇場である。


教室に入れば友達が

「おおー!お前遅かったじゃん!なにしてたの?風邪か?」

やら

「どうせ寝坊だろwww」

やら

「フリョーかよおまえwww」

などと注目を浴びること間違い無し、いわばこの時この瞬間に限って言えば俺は最高に輝いてたと思う。


とは言え、基本真面目に高校に通っている今の俺としては、いくら遅延とはいえ微妙に後ろめたい気持ちが強いというのが現状である。

メグと駅で配っている遅延証明書を貰う最中にも、ちらほらウチの生徒混じってるんですけどね、基本小心者なんす。


駅から学校へは徒歩5分もかからない位置にあり、俺達はもう校門も目の前に差し掛かっておりました。


そしてここで先程話した遅刻についてだ。

俺達に関して言えば電車の遅延により遅刻したわけなんだが、なんでこの時間に登校する人こんなに多いの?

自転車で登校する奴、徒歩圏内の奴、バスで来る奴、まぁー色々いますわな。

だというのに遅刻者がめっちゃ多い。


翔「なんか遅刻してる奴多すぎない?魅惑の香りに惑わされてる奴多すぎるだろ、正気に戻れ!」

巡「よくわかんないんだけど、後半の言ってること。」

翔「いや、それはいいほっといて。」


俺の発言の後半はともかくとして、ウチの妹君も遅刻者が明らかに多いことに関しては思う所があるご様子。

ぶっちゃけ当社比1.5倍なんてレベルではない。

どうやら周りの生徒達も同じようで、なんか遅刻者多くね?的な空気がヒシヒシ出ております。


校門付近のバス停にはバスが1台停車していて、その車内から見知った顔がヌメッと現れこちらに気づいた。


市兵衛「ん?よぉおはよう奥二重。」

翔「おっす、おはよう無造作ヘアー。」

巡「・・・。」


メグが怪訝な表情でこちらを見ているのを感じた市兵衛は、なるほど!というようなアクションを起こすとメグの方を見て口を開いた。


市兵衛「巡ちゃんもおはよう、ナイスキューティクル!」

サムズアップをしてそう言った。


巡「いや、ちょっとよくわかんないです。あとおはようございます児玉先輩。」



児玉市兵衛こだまいちべえ

俺には僅かに劣るが、比較的イケメンと言ってもいいんじゃないの?ってレベルの容姿を持つ友人だ。

入学初日のことである、俺は急激な腹痛に見舞われ便所に立てこもり脱糞をしていた。

用を足し終わりいざ尻を拭こうとしたのだが、紙が無いことに気づき絶望を咆哮をあげたその時、


???「ふっ、こいつがお望みかい?」


声が聞こえると同時に、隣の個室上空から紙・・・いや、俺にはその時、神が舞い降りた様に見えた。


翔「かたじけない、誰だかしらんが恩に着るっ!」


俺がその言葉を発すると同時に、隣の個室から水の流れる音が聞こえ、男は立ち去っていった。

幾ばくかの時を経て、尻を拭き終え外に出ると個室の壁に背を預け、背の高い一人の男が立っていた。


???「どうやら無事切り抜けたようだな。」

男はそういうとこちらを振り返る。


翔「あんたが紙をくれたのか、助かったよ。なにか礼をさせてくれないか?」

???「礼か・・・そうだな。」


しばらく考える素振りをしたのち、俺の顔を見ると不敵な笑みを浮かべた。

市兵衛「お前同じクラスの時尾だろ?俺は児玉市兵衛。礼ということならば俺と友達にならないか?」


不意を付かれて多少驚きはしたが、こいつは面白い奴だと直感したのを覚えてる。

俺達は固い握手をし友情を誓いあった。

お互い手は洗っていなかった。


これが俺達の馴れ初め。

少しばかりバカの目立つ奴ではあるが、直感通り面白い奴で、俺達はよく同じ時間を過ごす親友となった。



巡「それでなんなんですか、その挨拶。」

至極真っ当な疑問だと思うんだけど、市兵衛のキョトンとした顔を見てか、メグが少しイラだった口調で聞き返す。

巡「なんの儀式なんですか、奥二重とか無造作ヘアーとかいうの。」

市兵衛「あぁ、なるほどそのことか。」

翔「その日の初めに挨拶する時、お互いのイケてる特徴を挙げるゲームだ。」


どれだけ憂鬱な朝だろうと、お互いに褒め合えばなんかその日は楽しく乗り切れるモチベまで上げられるんじゃね?

と先週末に議論を重ねた結果、週明けに決行しようと約束をしていたということを市兵衛が説明すると、メグはなんだか疲れたような顔をしていた。

おかしいな、楽しい要素しかないと思うんだが。とはいえ正直な話、市兵衛が切り出さなきゃ俺忘れてたわ。


巡「それでキューティクルですか、私。」

市兵衛「あぁ、その通りだ。世の中にはコンディショナーとトリートメントを混同している人が多くいることは既に明らかだが、キミはそうじゃないとわかる。その上洗い流さないトリートメントを併用した上でそのキューティクルを維持しているということも見ればわかる。だからこその・・・ナイスキューティクルだ。」

翔「無造作ヘアーがキューティクルを語るな。」

市兵衛「おい、それは褒め言葉のはずだろう、今週の間は無造作ヘアーでの罵倒は許さんぞ翔。」


変なルールが付け加えられた。

メグがまた気持ちうんざりした顔をしたのだが、なんとなくわかりましたよお兄ちゃん。微妙にめんどくさいなコイツ。

ゲーム考えたの俺だけどさ。


などと話をしていると次のバスがやってきて、ぞろぞろとウチの生徒の降りること。

流石に遅刻者多すぎるだろおい。

翔「そういやお前も遅刻か市兵衛。」

市兵衛「あぁ、なにやら事故があったそうでな。渋滞していたぞ。」


各所でトラブルが続出だなんて、世の中物騒ねぇ・・・。

なんて、近所の奥様達の井戸端会議の如く話ながら、3人で昇降口までたどり着く。


巡「私こっちだから、それじゃあね兄。あ、あと帰りに買って来といて、イチゴジャムもうないから。」

お前が大量に使ったんだからお前が買いに行けよ!なんて言いません。

頼られている内が花なんですよ。他所の家の兄妹なんか話すらしないってよく聞くしね。

そのままの君でいて。

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