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悪役令嬢が四つ子だなんて聞いてません!  作者: 青杜六九
学院編 14
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397 悪役令嬢の作戦会議 17

オードファン公爵家の別邸から、四人はマダム・ロッティの洋品店とローラン金物店に分かれて入った。四人が変装して他の街へ出かけていた間、レイモンドが依頼により、マダム・ロッティの従業員がハーリオン侯爵家の侍女の姿で出入りし、長時間の滞在を怪しまれないようにしてくれていた。

「支度はできた?」

「ええ。完璧よ。どこからどう見ても、ハーリオン家の侍女よね」

「うーん……やっぱ、無理あるんじゃない?」


四人の目の前には、背が高い侍女が立っていた。金髪を三つ編みに纏めて、下を向いて脚を揃えて立っている。

「僕は……どうしたらいいのかな」

「この格好でうちに来てください。ね、いいよね、マリナ」

「私達のお願いを聞いてくださるなんて、スタンリー先輩はお優しい方ですね」

にっこり。

マリナのアルカイックスマイルが炸裂した。

「王太子様の影武者ができたんですもの、きっと大丈夫ですよ?エミリーちゃんも応援するって言ってますし」

「……言ってないし」

「そうそう。先輩がいれば百人力だよね」


レイモンドの発案で、四人姉妹の捜索にスタンリーを同行させようということになった。剣や魔法が使えるわけではないが、彼の演技力がいざという時にハッタリの効果をもたらすかもしれない。レイモンドが彼に

「特別にご褒美がもらえるかもな」

と言って流し目を送ると、スタンリーは目を輝かせてエミリーを見ていた。

――嫌な予感しかしないんだけど?

それがどうして、スタンリーの女装につながるのか。エミリーには全く理解できなかった。

マリナ達の趣味にしか思えない。

「普通に男の服にしたら?」

「うちの従僕じゃないってバレちゃうわ」

「だからって、この女装は無理がありすぎる。……そうだ。ちょっと腰、曲げてみて?」

「うん、これでいいかい?美脚の君」

「……今度その名前で呼んだら、変態脚本家のスタンリー先輩て呼びますよ?」

スタンリーは前かがみになった。エミリーは無詠唱で魔法を発動させる。


「……あっ!」

「うわあ、おばあちゃんみたい!」

「私にはおじいさんに見えるけど……」

「どう?」

「さっきの女装よりはマシかも。よし、魔法でおじいさんに化けて行こう」

「うちを見張っている騎士団は、新しく雇った使用人にも目を光らせているようね。力がありそうな若い男やガラの悪い連中を集めていないかって」

「おじいちゃんじゃ、戦力にならないよね」

「怪しまれない……?」


男物の地味な服に着替えたスタンリーに魔法をかけ、四人の侍女と一人の老人は、裏口からこっそりハーリオン侯爵家に入った。


   ◆◆◆


「スタンリー様のお召し物は、ハロルド様のものでよろしいでしょうか」

ジョンがマリナに確認する。ハロルドが袖を通していない服がかなりあるのだ。服のサイズは問題ないと聞いた。今は客用寝室に通して休ませている。

「そうね、お願い。……と、それから、一つだけ教えてほしいの」

「何なりと。お嬢様」

「ジョンのチェス仲間のセバスチャンのことよ」

「エスティアのお邸を管理している執事の?」

「ええ。……あなたと彼はいつから連絡を取っていないのかしら?」

マリナが問いかけると、ジョンは眼鏡の奥の目を何度も瞬かせた。

「つい先日も手紙をもらったばかりですよ?エスティアの今年の麦の作付について、旦那様に相談したいと書いてきておりました」

「お父様には?」

「ご相談する前に出立されてしまわれましたので、お戻りになってからと思っておりました」

「そう……」

「セバスチャンがどうかしましたか?」

「彼からの報告や手紙が保存してあるのなら、あるだけ見せてくれないかしら?気になることがあるのよ」


ジョンから手紙や書類を預かり、四人は中身を検分することにした。

「……特に不審な点はないわね」

「字も同じに見えるわ」

「チェスの話もおかしいところはないね。……ま、私はチェスなんてできないけどさ」

「いつからジャイルズがセバスチャンに成り代わっていたのかわからないわね。ニセ領地管理人が入り込んだ時期と、セバスチャンの亡くなった時期は同じだと思うのよ。皆はどう思う?」

「マリナの予想に賛成」

ジュリアが手を挙げた。


「セバスチャンは、前の領地管理人……ハリーお兄様の両親を知ってる。彼さえいなければ、ニセ領地管理人を戻って来たハロルド坊ちゃんだと言い張ることができる?」

「可能でしょうね。お兄様がエスティアを離れたのは子供の頃で、あまり顔が知られていなかったし、金髪の青年を連れてきて、お兄様の成長した姿だと言われれば皆信じてしまうでしょう」

「金髪の若い男なんてゴロゴロいるもんね。殿下も、スタンリー先輩も。……あっ」

「どうしたの、アリッサ」

「私達、結局ニセ領地管理人を引きずり出せなかったの。でもね、スタンリー先輩にニセ領地管理人の偽物になってもらったら、本物のニセ領地管理人が出て来るんじゃないかなあ?」

「ちょっと、ややこしいよ」

「つまり、偽物の偽物を仕立てる?」

「うん。先輩の演技力は確かだし、領地の皆さんを信じ込ませられると思うの」

「……ジャイルズが邪魔」

「執事の一人くらい、町の人皆でかかれば、縄でぐるぐる巻きにして地下室に放り込んでおけるじゃん。ニセ領地管理人が邸に来たら、そいつも捕まえればいいよね!」

ジュリアの提案に、アリッサとエミリーが頷く。

「明日、朝になったらスタンリー先輩に相談しましょう。……嫌とは言わせないわよ」

悪い微笑を浮かべて、マリナは三人の妹に目くばせした。


仕事からの帰宅が22時過ぎで、19日中の更新ができませんでした。明日は頑張りたいです。(泣)

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