表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢が四つ子だなんて聞いてません!  作者: 青杜六九
学院編 10 忍び寄る破滅
483/616

319 悪役令嬢の作戦会議 15

「二股……」

エミリーが渋い顔で呟く。

「ジュリアちゃん、本当に二人と踊るの?」

「マイムマイム?」

「違うって。一曲ごとに交代するの。剣技科は男子ばっかりだし、レナードがパートナーの当てがないって言うからさ。仕方ないじゃん?」

ジュリアは三人に同意を求めたが、誰一人として頷かなかった。

「あのチャラ男、いくらでも相手はいるでしょうよ」

「女の子の友達がいっぱいいるんでしょ?」

「ジュリアがパートナーにならなくても。レナードは『とわばら2』の攻略対象者なのよね。女子の人気もあるし、声をかけたらパートナーくらいすぐ見つかるわ」


「なーんか、皆冷たいなー」

「一人でイケメン二人も侍らせようとするからよ」

「マリナだって、殿下と兄様がいるじゃんか。私はダメってのは納得いかない」

「……皆に反感買うぞ」

「うん。私もそう思う」

アリッサが眉を下げた。

「……敵はどこにいるか分からない。女子の集団は怖いからな」

「どっちか一人にしたほうがいいよ?」

「分かった。明日二人に話してみる。……で、エミリーはどうするの?マシューは捕まってるんだよね?」


こくりとエミリーは頷いた。瞳に不安の色が浮かんでいる。

「マシューが捕まったのは、マリナ……いや、王太子を暗殺しようとした容疑だ。魔法を受けたのはマリナだし、王太子は怪我一つしていないけど」

「もし『命の時計』を受けていたら、セドリック様の命が縮んだのだから、暗殺とそう変わらないわ」

「……だとしても、冤罪だ。広場でマシューは魔法を止めようとして手を挙げた。それを見た人が騎士団に喋ったらしい」

「騎士団の調査も適当だよね」

騎士団に入りたいジュリアが言うことではないが、騎士団長を筆頭に騎士団は基本的に脳筋ばかりだ。筋道を立てて考え、捜査を進められる人間が何人いるのだろう。

「宮廷魔導士がついてきて、マシューが魔法を使っても防げるようにしてた。……まあ、マシューならあんな奴瞬殺だけど」


「宮廷魔導士ね……。図書館の地下書庫から、エミリーが貴重な資料を盗んだと決めつけたのも宮廷魔導士だったわ」

「……は?」

エミリーの眉間に皺が寄り、低い声が出た。

「地下書庫?エミリー、図書館なんて行ってたの?学校と部屋の往復なのに」

「行かない。外、出たくないし」

「さっき、私とアリッサが学院長先生のところに呼ばれてね、あいつから話を聞かれたのよ」

「あいつ?」

「エンフィールド侯爵。マリナちゃんは、あの人のこと、大っ嫌いなんでしょう?」

「顔も見たくなかったけれど、部屋に入ったらいたの。で、あいつがエミリーを盗人呼ばわりするから、きっちり否定してやったわ」

「もしかしたら、貴重な資料が盗まれたのだって、侯爵の狂言かもしれないでしょう?自分で持ち出したのに、エミリーちゃんのせいにしようとして」

「サイテー」

「エミリーちゃんがマシュー先生と付き合ってるってだけで、資料を盗んだって決めつけてたよ。何か……無理にでもマシュー先生を犯人にしようとしてる感じがする」


「……強制力?」

「何か言った?エミリー」

「皆はどう思う?『ゲームの強制力』ってやつ」

アリッサは何度も瞬きをし、マリナは目を眇めた。ジュリアは相変わらず首を傾げている。そのうちに首のストレッチを始めた。

「最近……すごく感じるの。私達が思いもよらないところで、いろいろなことが悪い方へ向かってる」

「そうね、エミリー。私もたまに考えるわ。私達は悪役令嬢だからって、悪いことをしていないでしょう。悪評は……ゴシップ記事程度にしか立っていないけれど、ハーリオン家は狙われているように思えるわ」

「アイリーンがそこまでできるかな?」

「……だから、敵は一人じゃない」

エミリーの一言に、三人はごくりと唾を飲みこんだ


   ◆◆◆


「おやすみー」

「おやすみなさい」

口々に就寝の挨拶をしてベッドに入る。アリッサはベッドサイドのテーブルに読みかけの本を置いた。エミリーは天蓋の中を闇で満たす。

「そうだ。マリナ、明日交換日記が来るよ。アレックスに渡すように言ったから、今晩殿下が書いてると思う」

「ジュリア……ありがとう。私のために」

「なんのなんの。こっちの世界にもスマホがあればいいのにねえ」


「……テレビ電話なら、ある」

ごそっ。

天蓋から抜けだしたエミリーが、足を下ろしてベッドに腰掛ける。

「キースが持ってた。光魔法の」

「いいねー。それ、一組買ったら?」

「きっと高価なものなのよ。お母様に相談して……」

「チッチッ。マリナは真面目だなあ。殿下に強請っちゃえばいいじゃん。『毎晩あなたの声が聞きたくてたまりません、お顔が見たいんですぅ』って交換日記に書けば、明後日には届くよ」

「ジュリアちゃん、それはちょっと……」

王家の財力なら間違いなく買えるだろう。しかも、『王室御用達』の看板を求めて、魔道具屋が特急で納品すること請け合いだ。『命の時計』の魔法のせいで会えなくても、会話することができるかもしれない。

「セドリック様なら用意してくださるかしらね。でも、いいわ。交換日記も楽しそうじゃない?」

細められたマリナの瞳が寂しそうに見えて、アリッサは手元の熊のぬいぐるみをぎゅっと抱きしめた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ