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悪役令嬢が四つ子だなんて聞いてません!  作者: 青杜六九
学院編 7 学院祭、当日
343/616

195 王太子と予言

【セドリック視点】


「セドリック様、ちょっと話したいんだ。いい?」

学院祭一日目が終わり、夕食後に自室でくつろいでいたところに、訪問者がやってきた。

「どうぞ」

侍従に促されて入ってきたのは、リオネルだけではなかった。レイモンドとアレックスが続いている。どういう組み合わせなんだろう。

「この四人で話したいと思って。……二人にも来てもらったんだ」

「とても重要な話だそうだ。使用人にも席を外してもらうが、それでいいな?」

「うん。……ねえ、もしかして、明日の『みすこん』のことかな」


僕の部屋は、廊下から入ってすぐが居間、左側に簡単な食事が作れる厨房と、バスルームがある。居間の右側には机や本棚がある書斎があり、さらに奥が寝室だ。レイモンドは書斎で話し合おうと言ったが、居間へ音が漏れるのを警戒したリオネルが、奥の部屋で話せないかと提案した。特に断る理由もないので、僕は三人を寝室へ案内した。寝室にはベッドだけではなく、長椅子と一人掛けの椅子が二脚にテーブルもある。四人で話し合うには十分だった。

リオネルと僕が一人掛け椅子に座り、レイモンドとアレックスが長椅子にかける。アレックスは緊張した顔をしている。そう言えば、奥の部屋に呼んだことはなかったか。


「皆に話したいのは、ハーリオン姉妹の今後のことだよ」

リオネルは落ち着いて話し出した。

「侯爵家から妃を娶るのは諦めたんだよね?」

「うん。君達が不幸にするなら、すぐに攫って行くけどね」

――何を言っているんだ。

「僕はマリナを不幸にしない!絶対に」

宣言すると、レイモンドも同調した。アレックスは僕の剣幕に驚いたようだった。

「まあまあ、セドリック様もさ、そんなにムキにならないでよ」

この飄々としたところが気に食わない。マリナとも仲が良いようだから余計に。

「ところで、三人はマリナとアリッサとジュリアから、何か聞いてる?前世のこと」

「ぜんせ?」

アレックスがきょとんとしている。部屋に入って第一声がこれか。かくいう僕も、一瞬聞き返しそうになったけれど。

「人によっては、生まれかわる前の人生の記憶がある者がいるとか。そういう類の本を読んだことはあるが……俺は信じていないな。アリッサとも話したことはない」

読書が趣味のレイモンドは何でも知っている。同じく読書好きのアリッサとも話題にしたことがないんだ。意外だな。

「アレックスは知らなそうだよね。……じゃ、セドリック様はどうなの?」

「僕も……うん、前世の話はしていないな」

マリナとじっくり深い話をしたことがない気がする。さり気なく問題ありじゃないか?

将来は夫婦になるのに。

「そう。……じゃあ、この話は終わり。別な話にする」

リオネルは少し考えてから、再び口を開いた。


「アスタシフォンに伝わる先読みの力で、僕は彼女達の未来を見たんだ」

鋭い視線が僕、レイモンド、アレックスを順に射抜く。

「未来?胡散臭い話だな」

「明日とか、来年とか?もっと先も?」

「僕が見たのは、だいたい数年以内の話。そうだね、遠くても三年先ってところかな」

唇に指を当て、リオネルは声をひそめた。

「これから言うことは、彼女達には言ってはいけないよ。君達が自分で解決するんだ」

「俺達が解決……ということは、何か厄介ごとに巻き込まれる、と」

「その通り。流石レイモンド、鋭いね」


   ◆◆◆


「……つまり、マリナは僕に婚約を破棄される?」

「そう。婚約破棄され、実家は零落れ、マリナは邸に入った強盗に殺されるんだよ。僕はハーリオン家が没落するのは、誰かに仕組まれたからなんじゃないかって思ってる。筆頭侯爵家が没落するなんて、余程のことがない限り難しいからね。おそらく、王家が手を回して……」

「馬鹿な!僕から婚約を破棄するなんてあり得ない」

勢い余って椅子から立ち上がる。リオネルは平然として僕を見上げた。

「セドリック様は他に好きな人ができるんだよ。……信じられないだろうね」

「相手は誰か知っているの?僕の知り合い?」

「知ってるよ。今日もマリナの役を奪おうとしていたじゃないか」

――何だって!?

「アイリーン・シェリンズ?あいつが?」

驚いて絶句した僕の代わりに、レイモンドが声を荒げた。

「そういう話になっているんだから、仕方がないよ。……そうそう、婚約破棄しないで、マリナが王太子妃になっても、セドリック様は彼女を酷い目に遭わせるんだ。身重のマリナを遠くの城に幽閉して、妾のアイリーンを公式の場に伴う。マリナは発狂して……死ぬ」

「嘘だ!信じるもんか!」

掴みかかった僕をアレックスが止めた。「ゆうへい」って何ですか、とレイモンドに聞いている。

「信じたくないのは分かる。……でも、マリナにとっては、婚約者に捨てられても、夫に裏切られても、結果は同じなんだ」

リオネルは少し躊躇った。

「マリナを破滅させるのは、セドリック様なんだよ!」

真剣な瞳。嘘を言っているようには見えない。

――信じたくない、信じてたまるものか。


その後もリオネルは何か話を続けていたが、僕の耳には入って来なかった。やがて話し合いが終わり、難しい顔をしたレイモンドと、呆然としたアレックスが部屋を出ていった。


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