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悪役令嬢が四つ子だなんて聞いてません!  作者: 青杜六九
学院編 5 異国の王子は敵?味方?
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122 悪役令嬢は新たな攻略対象者を知る

ゴクリ。

自習室に唾を飲みこむ音がする。

窓の外、リオネルの後方に広がる風景はオレンジ色に色づき、日暮れが近いと感じさせる。

「やだなあ、皆、知らなかったの?」

「存じませんわ。……と言いますか、リオネル様は『とわばら』をご存知なのですね」

リオネルは丸い瞳をキラキラさせて頷いた。

「正確には、『とわばら2』をね。『1』はプレイしたことないもん」

「殿下は、前世で女の子だったのね」

「うん。病院のベッドの上で、携帯ゲーム機で『とわばら2』をプレイしたんだ。残念なことに全部はクリアできなかった……」

病院と聞いてリオネルの前世の終焉を思い浮かべ、四人は押し黙るしかなかった。


しばらく、リオネルのプレイ履歴の話になった。

「『とわばら』と『2』のダブルパックを買ってもらってさ。キャストで選んで『2』からプレイしたんだけど、『2』は『1』に攻略対象をプラスして作られただけあって、イベントも多いみたい」

「では、単刀直入にお聞きしますわ。増えた攻略対象と、隠しキャラを教えてくださいませ。悪役のハーリオン侯爵令嬢がどうなるのかも」

マリナのアメジストの瞳が血眼になっている。

「『1』がよく分かんないから、不完全な情報だと思うよ。いいの?」

「何でもいいです!お願いします!」

アリッサが頭を下げ、机に額をぶつけた。

「『1』の攻略対象は四人だったよね。セドリック王太子、レイモンド、アレックス、マシュー先生。僕が調べた限りだと、皆君達の恋人らしいね」

「恋人なんて……照れますぅ」

もじもじしているアリッサを、エミリーの肘鉄が襲う。


「『2』には四人のキャラクターが加わった。どうやら、『1』で関係があったキャラもいたみたい。調べてないからわかんないな。一人目、キース・エンウィは、ヒロインが魔法科を選択した時だけ出てくる」

「やっぱり、キースか」

容姿に実力、身分や家柄が揃った彼が、攻略対象ではないはずがない。

「つまり、キースは隠しキャラじゃないってことね」

「その通り。二人目はうちのクラスのレナード・ネオブリー。キャラが好みじゃなくて、僕はクリアしてない。メリーバッドエンドらしいよ」

「嘘!」

ジュリアが叫んだ。マリナがふむふむと頷く。

「ヒロインでメリーバッドエンドなら、悪役の私達がどんな目に遭うか、想像に難くないわね」

「……ジュリア、もうフラグ回収してるんじゃない?」

にやりと笑ったエミリーは、完全に死んだ魚の目だった。

「攻略対象は『1』の四人より病んでるって評判だったよ?レナードが病んでるところなんて思い浮かばないよね。三人目は、グレゴリー・エンフィールド。学院の行事で接点がある図書館長らしいね。まだ会ってないな」

「晩餐会の予行に出ていたわ」

「へえ。見てないや。役割は年上キャラの補充ってところだろうね。身分も侯爵だし」

「いたいけな私を殺そうとした男よ。何がいいのか分からないわ」

マリナの呟きに、リオネルが絶句する。

「……それ、本当?で、どうしたの?」

「どうって……こうして生きているんですもの、反撃したに決まっているわ」

「まずいよ、マリナ。グレゴリーの出会いイベントだよ、それ。反撃されると燃えるって」

「……『ヒロイン』は、でしょ?私達は『悪役令嬢』なのよ。そもそも……」

「とにかく、あいつはダメ。危険だから近づかないほうがいいよ。エンディングがグロいって評判だよ」

机をバン!と叩いて立ち上がり、リオネルは熱く語る。


「顔に騙されてはいけないよ。……それと、四人目」

「四人目は、僕の兄上だ。アスタシフォン王国王太子、オーレリアン・ヒューリー・アスタス。本来は今回の交流に来るのは兄上だったんだ。ただし、兄上が物語に出てくるのは二周目以降。一周目で『1』の攻略対象から、愛の証のアクセサリーを集めないといけないから。アクセサリーは知ってるよね」

「ええ。セドリック様はサファイアの髪飾り、レイモンドはエメラルドのイヤリング、アレックスはルビーのペンダントだったかしら?」

「……もらってないし」

「拗ねないで、ジュリアちゃん」

「……マシューは腕輪」

「マリナは持ってたね。アリッサは?」

「……レイ様にもらったのに、もらったのに……ぐすっ」

滝のように涙が溢れる。

「どうも失くしたらしいんだよね」

「失くしてないもん!宝石箱にしまってあったのに……」

「管理は厳重にね。ヒロインに取られたら大変だよ?」


「先ほどから思っておりましたが……リオネル様は何故、私達にいろいろと教えてくださるのですか?悪役令嬢よりヒロインを応援するものではございませんの?」

えー、と声を上げ、リオネルは眉間に皺を寄せて、嫌そうな顔をした。

「あのブリッコ、虫唾が走るんだもん。兄上と僕は半分しか血がつながっていないけど、それなりに似ているらしくて、早速アタックしてきたんだよ」

「うわ」

「積極的……」

「でもさ、僕、男の格好してても女だからさ」

「えっ!?」

ジュリア以外の三人が声を上げた。

「言わなかったっけ?……ま、ブリッコにベタベタされても全然うれしくないんだよ。僕にはルーファスとノアという、目の保養になる取り巻きがいるし、ハーリオン四姉妹のほうがずっと美人じゃないか」

「いやあ、それほどでも」

ジュリアが照れて頭を掻いた。

「ハーリオン侯爵令嬢に悪役令嬢のレッテルを貼らないで、自分の目で見て判断しようと思ったんだ。一番最初に会ったマリナは好感のもてる令嬢で、セドリックはベタ惚れだったし、僕がジュリアに絡んだ時、アレックスの嫉妬がすごかったよ。歓迎会でアリッサが出ていって、レイモンドが必死の形相で追いかけて行ったよね。これは彼らを本気にさせてると感じた。皆だって、簡単にヒロインにくれてやる気はないでしょ?僕はいつでも、愛し合う恋人たちの味方でいたいのさ」

目を細めたリオネルは、机に肘をついてくすくすと笑った。


日曜日の仕事の都合で明日は投稿できないかもしれません。

なるべく書けるように頑張ります。


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