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悪役令嬢が四つ子だなんて聞いてません!  作者: 青杜六九
学院編 2 生徒会入りを阻止せよ!
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40 ヒロインは禁断の魔法を手に入れる

【アイリーン視点】


エミリー・ハーリオンに啖呵を切って教室に戻ると、ハロルド・ハーリオンが義妹マリナを食堂から連れ出したと、クラスメイトが噂していた。

――ちっ、失敗だわ。

ハロルドを中庭に呼び出す手紙には、それまで接触を避けたいと書いていたのに、おとなしそうな見た目の割に積極的だったようね。マリナから手紙を書いていないと言われたら、私の計画は崩れてしまう。


指定した時刻にハロルドが四阿へ来るか、確率は半々といったところね。

来なければ帰ればいい。

来たら確実に仕留める。そのために魅了の魔法を身に付けたのだから。


   ◆◆◆


魅了の魔法は、学院で習うような生ぬるいものではなくて、かけられた人間の精神が崩壊しかねない禁断の秘術だから、書かれた本も処分されていて、残っているのは国内でも三冊だけらしい。入学前に王立図書館で借りようとしたけれど、司書に閲覧を禁じられてしまった。話のついでに残り二冊はどこにあるのか尋ねると、高名な魔導士の持ち物だと言う。私はすぐにマシューを思い浮かべた。


入学してすぐ、マシューと親しくなろうとしたけれど、ガードが堅くて全然ダメ。元々こういうキャラで、仏頂面の魔王がデレるまで辛抱強く通わなきゃならないと思っていたから想定の範囲内だったものの、彼から魅了の魔法の本を借りるのは不可能だと思った。


他に、誰が持っているのか。

クラスの中には、魔導士団長の孫だというキース・エンウィがいる。エミリー・ハーリオンを崇拝しているところが気に入らないけど、利用できるものは利用してやろう。一人になったところで、私は初めてキースに声をかけた。

「エンウィ君」

「……何ですか?」

魔力測定試験の時に、私が光魔法でエミリーを襲ったと思っているのだろう。実際に殺そうとはしたけれど、非難する目で見るのはやめてほしい。

「ハーリオンさんのことが好きなの?」

単刀直入に訊ねた。回りくどいのはお互いに時間の無駄よね。

「ど、どうしてそれを……」

そこ、驚くところ?クラスの全員が気づいていると思うけど?

「二人は仲がいいし、婚約者なのかと思ったら、違うって聞いて……私の友達が、エンウィ君のことが気になってて、ハーリオンさんとどういう関係なのか、私に聞いてほしいって」

そんな友達はいない。キースが人気があるのは本当で、全校ににわかファンも多いからか、キースは私の話を信じたようだった。

「婚約はしていませんよ。僕が一方的に、エミリーさんを好きなだけで」

拗ねた顔。少しいじける様子も可愛い。

攻略対象キャラだったら、年下属性でやきもち焼きの……って今は目的達成が第一よ。

「エンウィ君は光魔法も使えるんでしょ?四属性持ちだもの」

「はい。エミリーさんの五属性には敵いませんが」

「ハーリオンさんのことも、光魔法で魅了しちゃえばいいと思うよ」

「生憎、僕の魔法に見とれるような人ではないので」

「見とれるじゃなくて、魅了よ。魅了の魔法って知らないの?」

「……魅了の、魔法?」

「そうよ。相手が自分を好きになるように魔法をかけるのよ」


翌日すぐに、エミリーの傍にいる時の、キースの魔力の気配が濃くなった。

エミリーに気づかれないように、少しずつ魅了の魔法をかけているようね。残念ながら効果は全く見えないけれど。

私から魅了の魔法の話を聞き、実家から魔法書を取り寄せたのね。

ううん。禁書は厳重に管理しているはずだから、無断で持ち出して来たのかしら。

キースがエミリーの傍にいる時間を見計らい、私は男子寮へと転移魔法を発動させた。


思った通り、キースの部屋には魅了の魔法について書かれた本があった。部屋にキースの魔力が満ちていて、きっと何度も練習していたのね。本を見るとそれほど難しい魔法だとは思えなかった。エミリーに気づかれない魔力の出し方でも練習したのかしら。

途中で入ってきた使用人を気絶させ、記憶を消してやり床に転がした。魔法の発動方法を必死に頭に叩き込んで、私は再び転移魔法で校舎に戻った。


その辺の男子生徒で試すと、魔法は簡単に使えた。面白いように私の虜になる彼らを見て、これから王太子達もこんな風に私の前にひれ伏すのかと心が弾んだ。

手始めに毎日接触がある魔法科教師のマシューに魅了の魔法をかけた。流石に魔法科の教師だけあって、私の魔力の気配を敏感に察知し、瞬時に闇魔法で相殺された。手強すぎる。こいつには魅了の魔法をかけられそうにない。何度か呆けているタイミングを見て魔法をかけるものの、悉く弾かれてしまった。


生徒会役員になっておけば今後の攻略が楽になる。何よりレイモンドを一年でオトすには生徒会イベントが欠かせない。手当たり次第に男子生徒に魅了の魔法をかけ、私に投票するように暗示をかける。折角魅了の魔法を身に付けたのだもの。学習の成果を生かす絶好の機会じゃない?

マシューは私のしていることに気づいて、彼らにかけられた魔法を解いていたけれど、私が魅了する人数が多くて追いついていないようね。選挙も楽勝だわ。


   ◆◆◆


四阿に現れたのは、ハロルドではなかった。

手駒にできなかったのは残念だったわ。使えそうだったのに。

代わりに目障りなマリナ・ハーリオンと、ジュリア、アレックスの三人が来た。

予め指に纏わせ仕掛けておいた魅了の魔法をどう処分しようかと思っていたから、アレックスが来たのは好都合だったわ。予定より早いけれど、マシューを虜にしたら次にオトすつもりだったし?


――ジュリアは、怖い。アイリーンをいじめる、ジュリアは悪い奴なのよ。

聞こえないように呟いて、私はアレックスの胸へ魔法を放った。


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