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悪役令嬢が四つ子だなんて聞いてません!  作者: 青杜六九
学院編 2 生徒会入りを阻止せよ!
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17 悪役令嬢は幽霊役員を勧誘する

「生徒会?俺が?」

アレックスの机の上に腕を組み、顎を乗せたジュリアが、「そ」と相槌を打つ。

「やだよ。誘われたけど断ったんだぞ」

「そこを何とか。名前だけでいいからさあ」

既に何の勧誘だか分からない。ジュリアはアレックスを生徒会の幽霊部員ならぬ幽霊役員にしようと試みていた。

「生徒会に入ったら、放課後は練習できなくなる。それでいいのか?」

放課後の練習は、二人が入学前から約束していたことだ。アレックスと練習できないのはジュリアにとっても痛い。

「そりゃ、困る……よ?」

上目使いで見れば、アレックスは心なしか頬を染めて視線をずらした。

「だろ?だから無理なんだって」

「ねーねー、何の話?」

話しこむ二人の間に、笑顔の男が割り込んでくる。

「レナード……いきなり話に噛んでくるなよ」

「いいじゃないの、俺とアレックスとジュリアちゃんの仲なんだから」

「そこまで仲良くねーし」

「まあまあ。で?練習相手が欲しいのかな?」

苛立つアレックスを放置して、レナードはジュリアに話しかける。

「そう。アレックスに生徒会に入って欲しくて」

「へー」

「お前、マジでどうでもいいと思ってるだろ」

「当たり。……ああ、でも俺もアレックスが生徒会に入るの、賛成」

賛同者が現れ、ジュリアはがばっと身を起こした。レナードの手を握り、「友よ!」と喜んだ。

「おい!勝手に決めるなよ」

「アレックスは生徒会で頑張って。ジュリアちゃんの練習には、俺が付き合うから」

「レナードが?」

魔法事故の発生により、練習試合が途中で終わってしまったため、彼の実力は未知数である。ジュリアはいささか不安を覚えた。

「何、その顔。もしかして、弱いと思ってる?」

「弱いんだろーが」

「アレックスは黙っててくれるかな。……試しに打ち合ってみる?」

「いいの?」

剣の練習の話となると、たちまちジュリアの瞳が輝く。アレックスが大袈裟に溜息をついた。

「いい加減にしろ。放課後は俺と練習だ!生徒会には入らない!以上!」

「ちぇ……。独占欲強すぎ。束縛する男は嫌われるぞ」

「なっ、んなンじゃねえよ」

バシッ。

レナードの二の腕を軽く叩き、アレックスが赤くなっている。

「ねー、ジュリアちゃんもそう思わない?それとも、束縛されたいタイプ?」

「え?え?」

二人が何を言っているのか分からず、ジュリアが首を傾げていると、教室のドアが開いて語学の教師が入ってきた。


   ◆◆◆


「はあ……」

マリナはとぼとぼと廊下を歩きながらため息をついた。

先程フローラに作戦を打ち明けられ、普通科二年の教室へ一人で行くようにと念を押された。

「気が重い……」

妹を悪意のある噂から守るためとはいっても、マリナに課された試練は大きかった。


   ◆◆◆


「よろしいですこと、マリナ様。決してアリッサ様とご一緒されてはいけませんわよ。一人で、どうしても来たくて来てしまったという演技が必要なのです」

「演技?」

「そのうちに演技でなくなるかもしれませんわね、あるいは」

「二年の教室で何をすればいいの?」

「教室の戸口で王太子殿下をお呼びしてくださいな。ええ、話しかける相手は適当にそこいらにいる生徒で構いませんの。その方が殿下をお連れする前に、教室に入ってしまってください」

「そんな、はしたないわ。上級生の教室に」

「殿下が教室のどこに座ってらっしゃるか、わたくしも存じませんけれど、そこまで走って行って抱きつい……」

「ええー!それダメ、絶対無理っ!」

「マ、マリナちゃん……」

完璧な令嬢であるマリナが絶叫し、アリッサが口を塞いだ。

「そこで、クラスの全員に聞こえるように、殿下が恋しくてお昼時まで待てずに来てしまいました、とでもおっしゃってください」

――超絶恥ずかしい……!

「マリナちゃんにそんなこと言われたら、セドリック殿下のことだもの、きっと一週間は浮かれて役に立たなくなっちゃうわ」

「そうね……」

――っていうか、私も恥ずかしすぎて再起不能になるわよ。

マリナが遠い目をした。作戦通りやれる気がしない。

「では、わたくしはアリッサ様と先にダンスホールへ行っていますわね。皆勤賞を狙ってらっしゃるマリナ様ですもの、ダンスの授業が始まる前までにお戻りでしょう?」


   ◆◆◆


――時間がない。

手っ取り早く課題をクリアして派手に噂を広めてもらおう。

マリナは二年の教室の前に立った。

ギイ……。

「失礼しま……あ」

ドアを開けて、王太子を呼び出す予定だったが、

「マリナ!」

目の前にセドリックが立っていた。

――どうしよう、想定外だわ。シナリオが崩れて……。

「どうしたのかな。僕のクラスに何か用事?」

青い瞳が輝き、セドリックは満面の笑みだ。悔しいけれどカッコいい。

メイン攻略対象者の笑顔は破壊力抜群である。

「用、と言うか……」

――仕方ない、いちかばちかだ!えいっ!

ドン!

「わっ、マ、マリナ?」

マリナはセドリックの胸に飛び込み軽く抱きついた。



学院編2章の改稿作業を続けています。

途中で話が変わっていく予定です。申し訳ございません。

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