表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢が四つ子だなんて聞いてません!  作者: 青杜六九
学院編 1 魔力測定で危機一髪
129/616

07 ヒロインは魔力測定を受ける

【ヒロイン視点】


ちょっと、何なのよ、あれ!

ハーリオン侯爵令嬢が四人なのも驚いたけど、毎朝王太子が寮に迎えに来るってどういうこと?公式設定では、王太子は侯爵令嬢と仕方なく婚約しているはずでしょう?

なのに、今朝は幸せそうな顔しちゃって、挙句の果てには抱きついてたし。


おかしい。

いろいろとおかしいわよ。

そもそも、出会いイベントで王太子が私に興味を持たないのもおかしいのよ。

こんなに可愛い女子を前に、声をかけないなんて男として終わってる。


レイモンドだってそうよ。

アリッサ?とかいうハーリオンの一人に、デレまくりじゃないの。

クールな美形、ツンデレはどこに行ったわけ?

口元も緩んでるし、デレすぎよ、あれは!


今朝はハーリオン侯爵令嬢が生徒会に入った噂でもちきりだった。

生徒会長の王太子と副会長のレイモンドが、自分達の推薦枠を使って婚約者を生徒会に入れたと。生徒会に入るべきは、ヒロインの私なのに!


学院ではハーリオン侯爵令嬢の話題ばかりで嫌になるわ。

入学式の翌日なのに、一年だけじゃなく上級生も噂しているみたい。

魔法科のエミリー・ハーリオンがミニスカートを穿いていたから。

私だってそれより短かったのに!


教室に行って驚いたわ。

エミリーが黒いローブを着てきたんだもの。

中に制服を着ていれば校則違反ではないとは言っても、あれはちょっとね。可愛くない。

あ、そう言えば。

今日は魔法力測定の日だったわね。

恰好だけでもそれらしくしてきたってことかしらね。


   ◆◆◆


魔法科の訓練場で、新入生は魔法力測定を受ける。

どの属性の魔力がどれくらいあるか、それによって受け持ちの教官が決まるらしいんだけど、入学式の日も今日も、攻略対象者のマシューの姿が見えないのよね。

適当な先生に訊いてみようかしら。あ、メーガン先生だ。

「すみません、先生」

「どうしましたか」

「あのう、魔法科にマシュー先生っていらっしゃいますよね。父の知り合いで……」

「マシュー?ああ、マシュー・コーノック先生は辞めましたよ」

辞めたぁ!?

どういうことなの?

「二年前くらいでしたかね。王宮で魔法事故が起こりましてね。魔導士の魔力に反応して爆発する兵器を作動させてしまったとか」

「そんな……」

マシュー対策で魔法科に入ったのに、肝心のマシューがいないのでは困る。

というより、攻略対象者が揃っていないと、逆ハーレムの発生要件が満たせない。

「どうして、そんなことになったのでしょう?」

「細かいところは私も知らないのよ。あなたの同級生のほうが詳しいかもしれないわ」

「同級生?」

「ええ。エミリー・ハーリオン。事故の時、一緒にいたと聞いていますよ」

何ですってえええええ!?

ハーリオンのせいで、マシューが学院からいなくなったっていうの?


測定試験の順番は、受けたいと挙手して指名された順だった。

手を挙げなければいつまでも見ているだけ、楽でいいわ。

マシューがいない魔法科の授業なんて、真面目にやる意味がないもの。

「あなたの番よ」

先生に促されて、渋々測定器の前に立つ。魔法事故に備えて、メーガン先生の他にも数名の魔法科教師が立っている。その中にマシューはいない。

光魔法のイメージを描いて、測定器に手をかざす。

視界の隅にエミリー・ハーリオンの黒いローブと銀の髪が見える。

――こいつさえいなければ、今頃マシューと……。

魔力測定ではマシューのイベントが起こるはずだったのに!


ヒロインの光魔法があまりに強く、素質があると気づいたマシューが、ヒロインに興味を持っていくの。最初の大切なイベントなのよ。

いつもムスッとしている無口なマシューが、ヒロインの魔法に感嘆し、目を見張る……。そんなイベントだったと思うんだけど。

肝心の本人がいないんじゃね。

マシューを学院から追放したハーリオン侯爵令嬢、エミリー・ハーリオン。

――こいつさえいなければ!


念じる気持ちがいつしか魔力にすりかわっていたらしい。私の光魔法が大蛇に形を変えていた。

「エミリー!危ない!」

金色の大蛇が大きな口を開けて、エミリーを飲みこもうとした。大蛇に気づいたキースが結界を張るものの、光魔法に同属性の結界では効果があまりない。

うねる魔力の波が加わり、爆風と共にエミリーに襲いかかる。先生の結界も間に合わないわ。

――だって私、全力で放ったんだもの。


そう。これは単なる魔法事故よ。

魔法に不慣れな学生が起こした、不幸な事故なのよ。

つい、手元が狂っただけの、ね。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ