プロローグ ヒロインは驚愕した
神様ありがとう!
今の私に転生したって分かった時は、天にも昇る心地だったの。ピンク色のふわふわした髪、光の加減で色を変える碧の瞳は愛らしく丸い。小さく整った顔立ちに華奢な手足。これがヒロインでなくてなんだと言うの。お父様は辺鄙な狭い領地に持つ男爵で、見た目ももっさりした十人並みの中年、政治力は皆無だけれど、私の魔法の才能を見て期待してくれている。学費は心配ないわ。学院には特待生で入れると思うの。こんなに光魔法が得意だし。
この先訪れるのは、超級のイケメンに愛される私が主役の恋物語なの。隠しキャラまでエンディングとスチルをコンプリートした私には、少し、いや、かなりアドバンテージがあると思う。楽勝だわ。
乙女ゲーム「永遠に枯れない薔薇を君に」は、高校のような学院を舞台に、下級貴族令嬢の主人公が王子や貴族令息をオトしていくっていうありがちな内容だったけれど、スチルがもう、綺麗で言うことなかったし、各キャラの声だって素敵だった。
私のお目当ては、初めから攻略できる王子なんかじゃなくて、あの方。
逆ハーレムエンドを抜けた先でやっと幸せになれるのなら、王子でもツンデレでも脳筋でも何でもオトしてやるんだから。
◆◆◆
おかしいわね。学院の入学式を前に中庭を迷っていると、王子が助けてくれるんじゃなかったかしら。風が吹いて花びらが舞って、綺麗なスチルだったと思ったんだけど。仕方ないから自分で入学式に行くしかないか。
ああ、あの子。銀の髪の美少女ね。あれが私を邪魔する悪役、ハーリオン侯爵令嬢に違いないわ。……ん?あそこにも銀の髪の子がいる。どっちかしら。魔法科にも剣技科にも銀の髪の……ってどういうこと?
新入生は次々に名前を呼ばれて、返事をしているけど。
四人ともハーリオン侯爵令嬢?嘘でしょ?
悪役令嬢が四人だなんて聞いてないっての!




