今日はいい夢 見れるかな
ホラーは初めてかきましたので、つたない所があるかと思いますが、お許しくださいっ(汗
今日も昨日と変わらない
「ブタが学校に来てるよ!」
頭のてっぺんにおだんごを作ったクラスメイトが叫んでいる。
「ブタはブタ小屋にいろよ!」
「ここは人間が来るところなんだよ」
わたしは、耳をふさいで机につっぷした。
ガン!
机が揺れる。背中に衝撃が走る。頭に、なまあたたかい何かがびちゃびちゃとかかる。
「おい! 早く出てけよブタ」
「だめだよユッコ、そんなことしちゃ。ブタにはブタ語で話しかけないと」
「ミサキ、ナイスっ。ブーブーブー?」
教室中に笑い声が響いている。
かたく閉じたまぶたの裏で、赤や緑の火花が散った。
机が濡れているような気がした。
この頃、夢を見る。幸せな夢だ。
朝起きると、家に朝ごはんの匂いがただよっている。階段を下りてリビングへ行くと、仕事でいないはずの母の姿がある。
「おはよう。急がないと遅刻よ」
今まで聞いたことの無いやさしい声と口調で、母がわたしに語りかける。
「うん。いただきます」
手を合わせて、ご飯を口に運ぶ。おいしい。
全部おなかにおさめて、もう一度手を合わせる。
「ごちそうさまでした」
「おそまつさま。ほら、もう時間ないわよ」
母に追い立てられ、歯みがき、洗顔をして制服に着替える。スクールバッグを肩にかけて、靴を履いた。
「行ってきまーす」
「行ってらっしゃい。車に気をつけてね」
優しい母の笑顔を後に、通いなれた通学路を歩いていくと、いつもの集合場所で友達が待ってくれている。
「おはよう、ユッコ、ミサキ」
「遅いよー」
「早く行かないと遅刻だよっ」
ミサキに急かされて学校へ行き、ダッシュで教室に入り込む。
「おはよー!」「もう先生来るよ」「もー、来ないかと思ったー」
様々な声がかけられ、わたしは照れ笑いをする。
ジリリリリリリリリリリ
目覚まし時計がするどく頭の中にひびいて、わたしの夢は終わる。
今日も昨日と変わらない
「おいブタ!」「お前うざいん」「んでくれない?」「ればいいの」「かじゃな」「くんなブ」
ああ、幸せな夢の余韻で…今日は、あんまり暴言が気にならないな…。
頭の中に、もやがかかったみたいで、辛いことにも、全然耐えられそう…。
あの夢が、守ってくれてるのかな…ウレシイ…
楽だ…
最近、毎日が楽しくて仕方ないのに、ひとつだけ悩みがある。
それは、毎晩見る夢のこと。
「うざいんだよお前!」
「いてもいなくても一緒だから」
「つーかブタは学校来んな」
「もーいーから自殺しちゃえよ」
どうしてなんだろう。毎日幸せなのに。
朝ごはんはおいしくて、お母さんは優しくて。友達もいっぱいいて、親友のユッコとミサキは大好きだ。
それなのに。
ガン! と机が蹴られる。同時に、背中にも衝撃が加えられる。どこもかしこも傷だらけ。
夢だって、分かってるけど。苦しいよ、痛いよ。
幸せなはずなのに、なんでこんな夢ばっかり見ちゃうんだろう?
ミサキもユッコも、わたしの親友なのに。
ああ、もういいや。
夢の中だし。みんな、死んじゃえ。
ふふふ。明日からはきっと、もっといい夢が見れる、かな。
見れなかったら、もっと…
きのう午前8時40分、○×中学校のA子さんが、同級生に暴力をふるったとして補導されました。
死亡者 2名 A子さんはこの2名にいじめを受けていたと同級生が証言しました。
学校側は、いじめがあったらしいことは認めず、A子さんは精神に支障をきたしていると見られています。
また、彼女は幾度か意味の掴みかねる言葉を発し、以下がそれです。
「今日もまたいい夢じゃない。まだ…」