動き出す魔王
今回はあまりストーリー自体は進みませんが、今後に関わる重要回となってます!
「おっしゃあああああぁぁぁぁぁ!!勝ったぞおおおおぉぉぉぉおお!!」リゲルは歓喜の雄たけびを上げた。
その声を始まりとして、村人が次々に賞賛の声と拍手をリゲルに送る。
「やったね、リゲル!本当に、ユニークスキルなしで魔獣を倒せることを証明されちゃったね」いつの間にかミラが到着していた。
「おう!さっきの魔法ってミラだろ?ほんとありがとな。あの魔法のおかげで魔獣に隙が出来たんだよ」
「う、うん。ま、まぁね。ど、どういたしまて」リゲルの素直な感謝にミラが動揺してしまう。
「それにしても、本当にリゲルが魔獣を倒すなんてね~。本当にビックリしちゃっ、キャッ!」
ミラの体がリゲルによって突き飛ばされる。
ミラが倒れながらリゲルを目で追う。
そして、気付く。
宙を飛ぶリゲルの体と、その体から噴水のように噴き出す鮮血を...
そして、さっきまでミラが立っていた位置に立つ一匹の魔獣。イノホーンである。
リゲルが気絶させたはずのイノホーンがそこに立っていたのだ。
それを目にした瞬間、ミラは魔法を詠唱していた。いや、詠唱というよりは悲鳴に近い。
「フレイムイクスプロージョン!!!!」
次の瞬間、そこにいたイノホーンは跡形もなく消滅していた。残っていたのは焦げた土のみであった。
そして、ミラも魔力を使い切り意識を失った。
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「本当にこいつにすんのか?」
「こんなちょっと体が動くやつが俺の力の後見人なんて、俺は認めないぜ」
「どっちでもいいんじゃないの~」
「私もそー思う」
「ほんとうにこのちびっこにあの器が備わっているの?」
「下手したら、俺らの力に耐えられずに壊れるんじゃないのか?」
「うむ。確かにこの子が例の器を持つ子の事だ。その資質は備わっている」
「それは俺も気付いているさ。けれど、この程度で信じろって言われてもな」
「監視は継続ってことだね」
「どっちでもいいよ~」
「私もそー思う」
「そんなに俺は暇じゃないんだ。もっと楽しいことがあったら呼んでくれや」
「うむ。了解した。それではこれで、【魔王定例会議】は解散」
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ベッドの上のリゲルが目を覚ます。
「ん?ん~、ここは...どこだ...?」
見られない天井にリゲルが呟く。
「リゲルゥ~~!!生きてた~」そう言ってミラがリゲルに抱き付く。
「お、おい。いきなりなんだよ...」
「だって、リゲル。私を庇ってイノホーンに殺されるから...」
「いやいやいやいや、死んでないし!!勝手に殺すなよ!!」
「あぁ、ごめんごめん」
「そいや、イノホーンは?」
ちょっとした茶番が終わってリゲルがミラに気を失った後の事を聞く。
「いやぁ、私もね、あの後気を失っちゃってね。イノホーンは私の魔法で爆ぜたはずなんだけど...」
「普通に言ってるけど、イノホーンを魔法で爆ぜるってな...【魔聖」こえぇーよ...」
ミラの魔法の威力にリゲルがビビる。
そんな時
「あら、リゲルくん起きたのね」そう言ってサーラが入ってくる。
「あっ、母さん。リゲルが生きてた!!」
「そりゃそうよ、私が治療したのよ?ミラ、あなただって魔力切れで気絶したから仕方なく私が魔力注入したのよ?」サーラが自慢げに答える。
「えっ、サーラさんが!?ありがとうございました!」リゲルがサーラに感謝する。
「お母さんが私を!?そんなことできたの!?にしても、仕方なくって...」ミラが自分の母親の実力に驚き、そして悲しむ。
「リゲルくんはユニークスキル使わずに魔獣倒すくらい頑張ったらしいから、張り切っちゃったのよ。ミラは私と魔力の気質が似てるから片手間にね。にしても、ミラまで私の魔法を知らなかったの?」
「え、片手間って...」ミラがさらに傷つく。
「まぁまぁ、今日はそれくらいにして、二人とももう寝なさい。体も万全じゃないんだから」そうサーラが言い二人とも自分の部屋に戻っていった。
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二人がいなくなった部屋にサーラだけとなる。
すると、どこからか一人の影が出てくる。
その影がろうそくの明かりで顔がはっきり移る。
「あら、あなた。ミッド魔獣牢の方は平気なの?」
「まぁな。魔獣どもを生け捕りにするのが王国の望みなのは分かっているが、そんな暇もなく片っぱしから消し飛ばしてるから、あとで怒られるだろうけどな」
アラノスがいたずらをした子供のような表情を見せる。
「こっちにも、イノホーンが出たのよ。けど、どうも私の【直感】の上をいっていてね。狂暴化していたわ。
「ミッド魔獣牢にDランク魔獣はいないはずだがな...少し調査してみよう。村のことは頼んだぞ【火焔の魔女サーラ】」
「いやだっ、そんな懐かしい名前で呼ばないでよ、懐かしい。けど、今日ねミラのがフレイムイクスプロージョンを放ったの。娘の成長に感動しちゃったわね」
「やっぱり、お前の子だな。村が消し飛んでないということは、お前よりコントロールが良かったんだな。お前だったら思いのままに詠唱して村と屋敷が消滅してたよ」アラノスが皮肉を込めて言う。
「そんなことない...こともなかったけど。昔の話よ」サーラがすこしばつが悪そうに返事をする。
「そろそろ時間だ。では、リゲルとミラと村の者を頼んだ」アラノスがそういって、またどこかに消えていった。
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翌朝。
「た、大変だぁーーー!!村の中心に魔獣が現れたーーー!!」そう言ってこの屋敷に仕えている男が入ってきた。
次回、リゲルとミラが魔獣討伐の冒険に!