第48話 作戦会議
「偵察の話では地竜で間違いないそうだ」
その皇帝の言葉に誰もが押し黙った。
地竜というのは魔竜の中でもスピードが速く、攻略が難しいことで知られている。
すばやく、凶暴で、知能も高い。
それでも、古い文献の中の話なのだから確証があるわけではなかったが。
それが魔力が濃くなりすぎたせいで、15階層まで上がってきてしまったのである。
このまま放置しておけば、やがてそれは地上付近までやってくることになる。
「それでは明日の正午をもって突撃ということに・・・・・・」
そう師団長が告げた。
それを聞いたナタリーの表情が変わる。
これから言わなければならないことに苦痛を感じているのかもしれない。
「待ってください。全員での突撃の前に、我々の第12騎士団と第4騎士団のみで、作戦を行わせてください。もしかしたら我々の力だけで倒せるかもしれません。もしそれで倒せなければ、全体での突撃も仕方がないものと考えますが、その前に私たちの作戦を試させてはもらえないでしょうか」
「試すといっても、たった二つの騎士団で何ができるのです。それに第4騎士団と言えば、最近、団長の交代があって評価を大きく下げたばかりではないですか」
「私の騎士団には切り札があります。ご存知ではないですか。あのインケルスを倒した騎士がいるのです。その彼に賭けてみようと思っているのです」
ざわめきが起こった。
この中で知らないやつはいないだろう。
最近では本当に有名になっているのだ。
もし今回の侵攻での地竜討伐が決定した場合、こうすることが決まっていたのだ。
俺などは最初からこうなるつもりでいた。
「面白い、やらせてみよう」
と、皇帝が言った。
「しかし、それほどの腕の者がいるのなら、何も最初に使わなくても・・・・・」
「最初に使うからこそ、被害を出さずに済ませられるのかもしれないのです」
「よろしい。それでは最初に、その2つの騎士団に合同作戦を行わせ、それが失敗に終わった時は、師団長の考案した作戦通り、騎士団を評価順に3つに分け、計3度の総攻撃を開始する。その際、第8騎士団は鱗に亀裂が出来てからの攻撃要因として温存。これでよろしいかな」
誰からも異論は出ない。
これで皇帝によって作戦が最終決定されたことになる。
皇帝の耳にも俺の活躍が入るように、ことさら派手に暴れたおかげだ。
公平に見えて、突撃作戦は師団長がスポンサーとなっている第8騎士団ばかり優遇されている。
しかし今はそれを言ってる場合じゃない。
ここまでは、すべて俺たちの計画通りに進んでいる。
あとは俺たちがしくじらずにやれるかどうかだ。
俺たちは作戦本部のテントを出て自分たちのキャンプに戻った。
そしてナタリーのテントで最後の確認をする。
俺たちが車座になると、ナタリーが口を開いた。
「すみません、私の力が及ばないばかりに、明日にも地竜と戦うというのは押し切られてしまいました。皇帝まで、それを支持していたので、どうにもなりませんでした」
「それは言っても仕方のないことです。それでは俺の考えた明日の作戦を言います。偵察に行った者の話をまとめると、地形はこのようになっているようです」
ジュリアンが真ん中に地図のようなものを広げる。
「まず入り口がここにあって、そこから傾斜が続いています。この傾斜の上に本体を待機させます。逃げ道も近くにあり、戦況もよく見えるので、ここにナタリーたちも待機してください。傾斜の下に少しだけ高台になったところがあり、その下の一段低くなったこところに地竜はいます。まず、この高台を俺とレオナルド、それにシェンとケンで取ります。その後、高台の下でカズヤに囮をやってもらう。地竜の背中を高台に向けるように動いてくれ。地竜の背を確認したら槍を投げます。地竜の攻撃を防ぐことはできないのでカズヤの魔力でもそう長くは持たないでしょう。槍は7本あるので3人が一斉に投げて、投げるチャンスは2回のみ。もしそれで作戦が失敗したら、とりあえずカズヤだけでも回収したい」
「回収したいって言っても、地竜の攻撃を避けられるのはコイツだけだぜ。それよりも天井を崩して動けなくするってのはどうだ」
「穴掘り用の召魔で天井を掘っていれば相手に気づかれてしまう。移動されてしまえば終わりだ。地竜はそこまで馬鹿じゃない。うろこに亀裂が生じれば、それを敵から庇うくらいの知能はあるそうだ。光魔のようなもので一瞬のうちに天井を崩せばいけるかもしれないが、階層の壁をぶち抜いて移動するような奴らだ。そんな長く足止めは出来ない。カズヤの魔力を全部使ってまで、それをやるのはギャンブルが過ぎる。作戦が失敗し、回収が無理となったら本隊に突撃させる。それに乗じてカズヤを逃がし、少しでも俺たちの体力を戻してから突撃に参加だ」
「そううまく動いてくれるかね。明日、現場で突撃の命令を出すのは誰だ」
「師団長になります。私も隣にいるのですぐに突撃させられるでしょう」
それを聞いてレオナルドも腹を括った表情を見せる。
こうなれば俺はうまく逃げ回れるかだけ考えていればいい。
作戦会議が終わりテントから出るとジュリアンに声をかけられた。
「カズヤ。いいか、いざという時にだけ瞬間移動は使うんだ。簡単に使うんじゃないぞ。一回分の魔力だけは常に残しておけ。瞬間移動に使わなくても、回復にも魔力は使えるからな」
「わかってるよ。何度も聞いたって。あと爪の攻撃は絶対に避けるんだろ。それもわかってるから。そっちは槍の爆発に俺を巻き込まないことだけ注意してくれ」
「まあ今日はゆっくり休むんだ。お前に限って寝られないなんて事はないだろうけどな」
俺は自分のテントに戻って横になった。
最後の夜になるかもしれないから、クリスティーナたちと色々したかったけど、やっぱり色々まずいだろうから何もしなかった。
気持ちが落ち着かなくてそれどころじゃないっていうのもあったけどな。
それでも4人に囲まれて寝ていると暖かくて気持ちが落ち着いた。
3ヶ月前までは受験勉強に精を出していたなんて信じられない。
まったく不思議な人生だ。




