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第42話 まだまだ特訓

 朝の会議も終わり、今日もジュリアンと向かい合って座っている。

 この人殺しのオカマみたいな顔にも慣れて、いくらか愛着もわいてきた。


「結局、飛び道具でどうにかするのは無理みたいだぜ。アンナとシンシアは槍の先に爆発物を付けて投げるのが一番いいと言ってる」


「まあそうなるだろうな。お前の発想は面白いが、それを実現するには1年や2年の時間があっても無理だ。火薬のほうは何とか準備ができる。そのうち届くだろう」


「たとえば異世界にあるようなものを呼び出したりはできないのか?」


「そういう魔法も研究されているが、物自体は魔力を発していないので魔法の力で探すことは無理だといわれている。マーリンがその分野の研究をしていたと聞くが、あの歳になるまで主だった成果を挙げたという話は聞かないから、もともと無理な話なんだろう」


「それじゃ、やっぱりオーレグあたりに頼んで気を引いてもらって、後ろからレオナルドにでも槍を投げさせるしかないな」


「なんだ、聞いてないのか。オーレグは引退らしいぞ。この前の怪我の治りが悪くて、次はもう命にかかわると医者に言われて引退だよ。スポンサーの貴族も稼ぎ頭をなくして、たいそう落ち込んでる。あの騎士団もしばらく最前線に立つのは無理だな」


「マジかよ。それじゃ誰が魔竜の気を引くんだ。そんなこと出来る奴が他にいるのかよ」


「お前がやるんだ。もともと歳のせいで持久力のなくなったオーレグには荷が重い。スタミナのあるお前の方が適してたんだ」


 なんてこった。

 オーレグがいるから何とかなると思ってたのに、なしでやるってのか。


「どんな魔竜がいるかわからないのに、どうやって対策を立てればいい。学園の授業ではいくつか種類がいるみたいだったが」


「基本的には魔法エネルギーを分解する鱗と、長い爪による物理攻撃だ。だから奇策の類は通用しない。爪の攻撃を受け止めるのは無理だ。避けるしかない。受ければ剣ごと折れて終わりだ。受け流すのも難しいだろう」


「なるほど、あの特訓にも意味があったんだな。俺は倒すために何をやればいいのか全くわからない。俺は何をやればいい。何かアドバイスはないのか」


「間違ったことをコツコツやるな、正しいことを適当にやれ。目的を達成するためには、それが一番の近道だ」


 またそれかと、俺は思った。

 そのアドバイスは役に立たないんだよな。

 何が正しいことなのかわからないんだからどうしようもない。


 そしてまた昨日と同じ特訓をやらされた。

 頭の形が変わるほど殴られたところで、やっと俺の魔力が尽きて終わった。


 そんな日々を繰り返して1週間が過ぎた。



「メリエルの攻撃は単調すぎる。そんな攻撃じゃあたらない。ニーナは当てることに執着しすぎだ。腰が入ってないから簡単に止められる。クリスティーナは遠慮しすぎだな。もっと本気できてくれてかまわない。シンシアはワンパターンすぎるぞ」


 たった一週間で俺はアドバイスしながら避けていられるようになった。

 4人の動きも大体覚えてしまったので、これじゃ練習にもならない。

 いい加減な体勢で木剣を振り回すニーナの背中をちょっと押したら、ほかの二人を巻き込んで派手に倒れこんだ。

 俺はその様子を見下ろして満足する。


「もういい。カズヤの従士は休憩だ」


 これでやっと特訓も終わりかと思っていたら、ジュリアンはとんでもない奴を連れてきやがった。

 それで次は俺たちを相手にしもらうとか何とか言っている。


 ジュリアンが連れてきたのはオーレグとシェンとケン、それにレオナルドだ。

 よくこんな悪魔みたいなことを思いつくもんだ。


 俺はもう攻撃を避ける気にもならずに、ただ走って逃げ回ったがオーレグに殴り倒された。

 それで死んだふりを試みるが、無理やり引きずり起こされる。


「無理だって!」


 そんな俺の抗議にもかまわずレオナルドが木剣を振り下ろす。

 その攻撃を俺は体勢を低くして脇に避けた。

 そこに死角となっている上からオーレグが降ってくる。


 俺は横に転がってかわすが、オーレグはさらに踏み込んで突きを放ってくる。

 とんでもないスピードで目で追うのがやっとだ。


 俺は必死に体を「く」の字にしてかわした。

 その不自然な体勢にシェンとケンの突きが同時に刺さる。


 内臓の位置が入れ替わりそうなほどの強烈な衝撃に俺はのた打ち回った。

 本当にどいつもこいつも加減って言葉を知らねえな。


「ふ、ふっざけやがって。俺も本気でいくからな!」


 俺もさすがに頭にきたので攻撃に出た。

 まずは一番危険なオーレグに向かって突っ込み、木剣を振り下ろす。


 軽くかわされてカウンターの突きをのどもとめがけて放ってきたので、上半身を振り回すようにしてそれを避ける。

 そのバランスを崩したところに、レオナルドとシェンとケンが突っ込んでくるので、俺は上に飛び上がった。

 当然そこを狙ってジュリアンは魔法を放ってくる。


 ここまでは予定通りだ。

 俺は瞬間移動を唱えてジュリアンの後ろに回りこんだ。

 そして木剣をジュリアンの頭めがけて振り下ろす。


 ざまあみろと思う間もなく、俺は風魔法で吹き飛ばされて宙を舞った。

 そこにジュリアンの糸魔の糸が追い討ちをかけてくる。


 俺は空中で炎魔法を放って燃やした。

 着地後、もう一度ジュリアンに飛びかかろうとしたが、後ろからオーレグの突きを食らって悶絶する。


 馬鹿野郎め。

 こんなのどうにもならねえよ。


 一人を相手にしたって勝てるかわからないぜ。


 半分泣きが入ってる俺をジュリアンは容赦なく引き起こす。

 そんな特訓という名のリンチは夜遅くまで続いた。


 ひどい話で、翌朝ベッドの上で目覚めた俺は前日の記憶が半分なかったんだぜ。

 きっと頭を殴られすぎたせいだ。

 このままじゃ廃人にされちまうよ。


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