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第38話 海に千年、山に千年

 次に向かった街は、3国の国境が重なる位置にある商業都市だった。

 オークションなどが多く開かれ、高価な商品が取引されやすい場所だ。

 商人向けの店舗もあり、販売も買い取りも盛んに行われている。


 俺たちはまず宿を取り、食事のために外に出た。

 ハミルトンからここまで2日近くかかっている。

 この街に着いたのは昼過ぎだった。


 俺たちは繁華街の外れにある鍋料理の店に入った。


「なんか旅行って言うより、夜逃げでもしてるような強行日程ね」


「ホントだよ。あたしなんかお尻が痛くて、もう馬車はうんざりなんだけど」


「そんなこと言ったって休暇中に回らなきゃならないんだから仕方ないだろ。帰るまではずっと馬車の上だぞ」


 そんな話をしながら遅い昼飯を食べた。


 食べ終えるとすぐに繁華街の店舗巡りを始める。

 何かを専門に扱う店は一つもなく、どれも何でも屋のような体裁だった。

 とりあえず一番端の店に入った。


「らっしゃい、今日は何を仕入れるんです」


「いや、仕入れじゃなくて買い物だ」


「なんだい、小口のお客さんか。それじゃちゃっちゃっと済ませてくんな」


「何か迷宮の探索に役に立つようなものはないかね」


「そりゃ難題だね。魔法書なんか一括りいくらで売ってんだ。単品で売ってるのは高価なもんしか置いてねえんだよな」


「高価なもので構わないよ」


「そいつは景気がいいや。それならこれなんてどうでしょうね。この剣は王都産の業物でね。多少のことじゃ切れ味は落ちねえわ、刃こぼれしてもポッキリ折れたりしねえ一品だ。しかも作ってた人が工房を閉めちまってね。もう二度とお目にかかれねえかもしれねえって話よ。どうだい、買わねえかい」


 俺は作った奴に心当たりがあったので、剣は間に合ってると答えた。


「おめえさんもわからねえ人だね。今俺が説明してる間、気絶でもしてたのかい。そこら辺に転がってのとはモノが違うんだよ。プロの俺が目利きしたんだ。剣について知らねえなら黙って買うのがお得だよ」


 さすが商売人の街だけあって、海千山千の商人が揃っている。

 相手が素人だとわかればあの手この手で薦めてくる。

 しかし、この親父が今手に持っている剣は、どう見てもアンナの作ったものではない。

 アンナならもっとファンシーな飾りのついたものを作るはずなのだ。


 この街はどこの店もこんな調子だった。

 とにかく売ってしまいさえすれば何でもありという気風だ。

 俺は騙されないように、ハッタリを効かせてみたり、脅しをかけてみたりしながら交渉した。

 最後の店を出る頃にはすっかり疲れて、俺は立派な人間不信になっていた。

 結局そんな思いまでして買えたのは、魔法書数冊といくつかのガラクタだけだった。

 その後は軽く食事だけを済ませてから宿に帰って寝た。


 次の日は朝も早くから街を出る。

 もうこの町の人間が喋る言葉は全て嘘に聞こえるので、1分足りとも居たくない。


 次に向かうのは多くの交易品が集まる港町だ。

 街には魔法大学もあるので、研究に使われそうなものも多く集まる。


 ひたすらのどかな道で、ケツの痛みに耐えながら馬車に揺られて一日を過ごした。

 街についたのは夜遅くになってからだった。


 一階が飲み屋になっている宿がまだ開いていたのでそこに入った。


 次の日は、疲れが出たせいで昼前くらいになってようやく目が覚める。

 ふらふらと一階まで降りて食事を済ませた。


 この頃になるとクリスティーナもニーナも愚痴しか出てこない。

 苦労の割に収穫も少ないので、俺だって心が折れかけている。


 しかし嘆いていても仕方がない。

 とりあえず目的を果たすために街に出た。

 この町は店の数もあまり多くないので、今日は簡単に済みそうなのが救いだ。


 大きめの魔法書店で上位魔法をいくつか買い、隣にあった召魔の専門店に入った。

 そこでショーケースを眺めていると、見慣れない大きさの召魔の種を見つけた。


 店主に尋ねてみると、最近研究されている合成召魔だという返事が返ってくる。

 これらは今まで使い道がないとされていた召魔同士を魔術で融合させて、今までにない新しい効果を生み出したものだという。

 まだテスト段階なので大きな効果を持つには至ってないが、魔法の補助効果を持つものならいくつか品揃えがあった。

 俺は時空の魔術補助の召魔を買った。


 その場で契約をさせてもらい、さっそく効果を試してみる。

 俺はハミルトンで買った瞬間移動の魔法を既に覚えている。

 道中で何度か使ってみたが、コストが重すぎてとても使い物にはなりそうになかった。


 まだ名前もない新しい聖魔は1つ星のてんとう虫のような見た目で、右手の甲に張り付いて動かない。

 最初は赤い色をしていたが、少しして青色に変わった。


 これは俺の魔力を勝手に時空の属性に変換し、体内に溜め込むのだ。

 それが満タンになると色が青に変わる。

 召魔は魔力の変換効率がいいので、青の状態から時空魔術を使うとコストが削減される。


 召魔とは不思議なもので、俺はすでに使い方を知っている。

 瞬間移動を使ってみると格段にコストが軽くなっていた。


 これで1分に一度くらいなら実戦でも使えるようになるだろう。


 俺が新しい召魔で遊んでいるうちに、ニーナとクリスティーナがめぼしいものを選んでくれたので、それを買って店を出た。

 最後に装備品の店で適当に買い物を済ませて、この町での買い物を終えた。


 残りの時間は観光気分で色々と見て回った。


 宿に戻って、俺はもう帰ってもいいと思うのだがどうだろうかと二人に聞いてみると、満場一致で帰ることになった。

 ここからなら一日もかからず戻ることができるだろう。


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