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第34話 恩賞

 恩賞が発表される日の朝、俺は自分の家で目を覚ました。

 昨日はボロ雑巾のようにクタクタになった体を、ここまで引きずってくるだけでも容易ではなかった。


 俺はベッドから抜けだして窓を開けた。

 やはり陽の光はありがたい。


 俺はまだ寝ているニーナとクリスティーナをベッドから引きずりだす。

 そして三人で仲良く着替えた。

 朝ごはんになりそうなものがなかったので、この日は食べないことにして城に向かう。


 珍しいことに、もう騎士団本部には皆集まっていた。


「みんな早いな。昨日の今日でどうしたんだよ」


 まだ事態を理解していなかった俺にジュリアンが説明してくれた。


「昨日は話す気にもならなくて、お前の手柄について教えてやれなくて悪かったな。お前は本当に凄いことをやってのけたんだ。まず順番に説明すると、この国では迷宮内で得た利益の30%が皇帝のものになる。そして20%は各騎士団に配られる。残りの半分は最大功労報酬に回される。今回は貴族や他の騎士団がやけにあっさり撤退を認めたと思わないか。どこの騎士団も、騎士団のスポンサーも、狙いは最大功労報酬だ。これを一度当てたら本当にでかい収入になる。今回は死者も出ていないから特別功労もない。それで俺たちが魔竜クラスと言われる魔獣を倒したものだから、どこも最大功労を諦めざるを得なくなったんだ。しかも今回の最大功労の殆どは俺たちの騎士団に配分されることになる。30%くらいはこの騎士団にも入ることになるだろう。残りはどうなると思う?」


「想像もつかないね」


「お前に残りが配分されるんだ。すべての騎士団が今回の進行で集めた利益の約20%だぞ」


「ま、マジかよ」


 これは本当だった。

 最後の一撃を入れたものが倒したことになる。

 そういえばそんな話もあった。


 恩賞発表のためにすべての騎士団が集められ、俺とナタリーの名前が呼ばれた。

 最初にナタリーが最大功労騎士団として表彰される。

 皇帝自らナタリーに金貨の入った袋が受け渡された。


 そしてナタリーは壇上から下がる。

 壇上に残ったのは俺と皇帝だけだ。


「今回の最大功労者はこの青年である。なんとあの中層の悪魔と呼ばれた魔獣インケルスを打ち倒した。実に70年ぶりの快挙である。我が帝国にとって、この功績は実に待ち望んだものである。まさに勇者と呼ぶにふさわしい功績だ。これで近年続いていた帝国の衰退も食い止められるに違いない。それを評して、帝国に伝わるこの鎧装備一式と金貨5万枚、そして一等地に家1軒を与えるものとする」


 会場は拍手に包まれ、俺は受け取ったものを掲げて見せた。

 そして壇上から降りる。


 そのあと皇帝が退出するとパーティーになった。

 周りの騎士団の奴らが集まってきて取り囲まれ、賛辞の言葉が浴びせられた。

 それが一段落したところで、俺たちは酒と食べ物だけもらって本部へと戻った。


「みなさん、今回はほんとうによく頑張ってくれましたね。これで中央での発言権もあがることでしょう。特にカズヤは本当によく頑張ってくれたわ。私の目に狂いはなかったわね」


 このあとナタリーは副師団長に抜擢されることになる。

 俺たちの目標まであと一歩というところまで来たのだ。


「それにしてもこの鎧はひでえな。見てるだけで眼の奥がズキズキしてくるぜ。本当にこんな悪趣味なもんを付けて迷宮に入るのか」


 レオナルドが金ピカの鎧を指して顔をしかめる。

 確かに悪趣味の権化といった見た目ではある。


「そうは言ったって、皇帝に貰ったもんを付けない訳にはいかないんじゃないのか。俺だってこんなの嫌だぜ。それにしても全部俺が貰っちゃっていいのかよ」


「ああ、そういう習わしなんだから貰っておけ。これからお前は色々と忙しくなるから覚悟しておけよ。今日はもう引っ越しを始めた方がいい。救国の勇者ともなれば色んなのがお前を訪ねてやってくるぞ。覚悟しておけ」


 俺は嬉しいやら緊張するやらで食欲どころではなかった。

 なのでジュリアンの言うとおり、引っ越しをすることにした。

 早く新しく貰った家を見ておきたいというのもあったからな。


 浮かれて大騒ぎしているみんなを残して、俺がサンチョスに馬車を出してくれるよう頼みに行くと、ジュリアンに呼び止められた。


「皇帝はああ言ってるが、俺はまだ今回で終わりだとは思っていない。いいか、カズヤ。お前はあのインケルスを倒した英雄として魔竜討伐の先陣を切らされる可能性がある立場だ。それを忘れるなよ。浮かれて準備を怠れば命はないと思っておけ」


 俺はその言葉に冷水を浴びせられたような気分になる。

 まったく、なにも今言わなくてもいいだろうに酷いやつだ。


「準備ったって、何すりゃいいんだよ。俺は運良く召魔と魔力に恵まれただけの男だぜ」


「まずは俺とレオナルドで基礎から叩き込んでやる。休暇が開けたらすぐ始めるぞ。そんなに落ち込むな。運がいいってのは一番重要な要素だ。俺たちはおとぎ話の世界にいるわけじゃない。基本的には努力は報われないし、正義は滅多に勝たない。運がいいってのは一番信用できるだろ」


 まったく慰めてるのか脅してるのかわからないジュリアンの言葉に、俺はため息を付いた。

 確かに魔竜が居るというのなら、努力したくらいでどうにかなるような相手じゃないのを相手にしなきゃならないことになる。

 一体どんな奇跡が起これば倒せるというのだろう。


 今の俺にできるのはとにかく入念に準備をしておくことくらいしかない。

 まずはオークションか店でも巡って使えそうな召魔でも集めるかと俺は考えた。

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