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第33話 最後の一撃

 俺はジュリアンに変わって氷魚で地面の熱を奪った。

 これを放っておくと溶岩状になってしまって近寄ることもできなくなる。


「でかいの、わしを投げろ!」


 オーレグが走りながらレオナルドに向かって叫んだ。

 その意図を察して、レオナルドがオーレグの足をつかむ。

 体を弓のように引き絞り、そのままインケルスめがけて放り投げた。

 それをジュリアンが風魔法で加速させてオーレグの動きをアシストする。


 そのままオーレグは天井部分にあった突起を利用してインケルスに飛びかかった。

 予想外の動きにインケルスも慌てた様子で対応する。


 しかしオーレグの剣は空を切った。

 まるで未来が見えているかのような動きだ。

 さすがに魔竜に近い存在とまで言われるだけあって、一筋縄ではない。


 オーレグは天井の突起から突起へと飛び移りながら攻撃を加える。

 そして一瞬の隙を見逃さず、殺意のこもった一撃を放った。

 わかっていても避けられない攻撃というやつだ。


 インケルスの前足がぶらりと揺れる。

 皮一枚でなんとか体とつながっているという様子だ。


 その一撃を受けてインケルスは馬のようにいなないだ。


 その瞬間を見逃さず、ジュリアンが糸を放つ。

 放たれた糸はインケルスを天井へと貼り付けた。


 なんて奴らだ。

 本当にここまで作戦通りにやってのけた。


 弱点はもうわかっている。

 インケルスの額の下に魔力の塊のようなものが俺には見えている。


 俺は体素で意識を加速させると、言われた通りの全力で光魔を放った。

 インケルスは多少動いているが、どうあがいたって避けようがない。


 文字通り全力だったので、俺はこのあと起こったことを何も知らない。

 気絶したからだ。



 目を覚ますとクリスティーナの顔が目に入った。

 生きてまたこの顔を拝めたことが嬉しい。


 クリスティーナは俺が目を覚ましたのに気が付くと思い切り抱きしめてくれた。

 そしてテントから出て行ってしまった。


 しばらくしてみんなが俺のテントにやって来る。

 みんな笑顔だった。


「言いたいことは山ほどあるが、良くやったぜ。大成功だぞ」


 そう言ったレオナルドは何故か全身に包帯を巻いている。

 よく見ればジュリアンも足に包帯をまかれて添え木が入っている。


「なんだよ。どこでそんな怪我をしたんだ」


「お前の全力を侮っていた俺の作戦ミスだ。あの後、天井が吹き飛んで生き埋めになりかけた。レオナルドが居なかったら魔力の使いすぎで動けなかった俺もお前も死んでるとこだった」


「全くだ。爆風で吹き飛ばされて気絶したオーレグと、魔力の使いすぎで動けないジュリアンと、呑気に気絶したお前を抱えて何とか逃げ出したんだからな。上から降ってきた岩に頭を割られて死ぬところだったぜ」


「オーレグは無事だったのか?」


「ああ、二度と俺たちの作戦には参加したくないって言ってるぜ」


 俺はそれだけ聞くと緊張が溶けて体中が痛み出した。

 逃げ出すときに、だいぶ雑に扱われたらしい。


「いま中央本部で会議中だからもう少し寝てるといい。これはお前が考えている以上の大手柄だ。今やってる結晶石の掘り出し作業が終われば、撤退の命令も出るだろう」


「撤退? まだ14階層の探索は始まったばかりだぜ」


「今回の進行での最大の功労者はお前だ。それがどうあってもひっくり返らないとなったら、撤退しかない」


 よく意味がわからなかったが、まだ疲れの残っていた俺は聞いてみる気にならなかった。

 みんなに寝かせてくれとだけ伝えて横になる。

 今度は心から安心して眠ることが出来た。


 次に目を覚ましたのは撤退の命令が出た後だった。

 俺は体の傷がちゃんと治っているのを確認する。

 魔力もしっかり元に戻っていた。

 やっぱり洞窟内の空気は俺の体によく馴染む。


 撤退の片付けをしている間、皆一様に表情は明るかったが、お喋りをする様な元気までは残って無いようで押し黙っていた。

 なので俺も黙々と片付けを手伝った。


 片付けが終わって撤退が始まると第4騎士団が近くを通った。

 オーレグは包帯ぐるぐる巻でケンに背負われている。


 俺はその包帯を巻かれたボロきれにしか見えないオーレグの姿に驚いた。

 怪我をしたとまでは聞いていたが、これほどとは思わなかった。


「おぉ、若いの。すっかり元気になったの。こっちはしばらく歩けそうにない。本当に恐ろしいもんを見たわ。魔獣よりもよっぽど恐ろしい。おかげで三途の川を見る羽目になった。もう滅多なことじゃ巻き込まんでくれよ」


 オーレグはすっかり老けこんで力なく笑った。

 そのままケンに背負われて行ってしまう。


 オーレグなら何とかするだろうと思って遠慮なく全力でぶっ放したのだが、悪いことをしてしまった。

 よく考えたら人間が反応できるスピードじゃないのだから当たり前だ。


 悪いことをしたなと、呟いた俺にジュリアンが言った。


「悪いことがあるか。あれで失敗してたら何人死ぬことになってたかわからない。今回のことは奇跡に近い働きなんだ。一部の奴らを除いたら、みんなお前にキスしたいほど感謝してるだろうよ。あんなのを倒すとなったら10人や20人の犠牲じゃ収まらないからな」


 なんだか慰められているようで俺はきまりが悪い。


 そして帰り道、俺とサンチョスは馬車に積みきれない荷物を全て背負うことになる。

 レオナルドもジュリアンも肩を貸してもらって何とか歩いているので抗議もできない。

 なので俺とサンチョスは荷物を引きずるようにして長い上り坂を登った。

 18時間以上な。


 久しぶりに見た太陽の光に、俺は思わず涙があふれた。

 風に吹かれる気持ちの良さを全身で味わう。


 そして開けて翌日に恩賞の発表があった。

 その内容には本当に驚かされることになる。

 でも念願の貴族にはなれなかったんだけどな。


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