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第28話 ナタリーの絶望

 夢を見ていた。

 だからまだ夢の中の話だ。


 夢の中でクリスティーナは俺のモノを指で摘んで弄んでいる。

 イタズラっぽい顔で俺のことを見ていた。


「どうしたのカズヤ。苦しそうね。私の中に入れたいんでしょう」


「は、はいぃ、クリスティーナ様のぉ、柔らかいお肉に包まれたいですぅ」


「ふふっ、どうしようかしらね」


「おっ、おねがいしますっ、も、もう我慢が」


「ダメよ」


「あぁ、あ~」


 そこでふと目が覚めた。


「おう、夢か……」


 体を起こすと女四人の冷たい視線が俺に突き刺さっていた。


「ド変態が起きたみたいよ。クリスティーナ様ぁ、ですって」


 ニーナが冷めた様子でそんなことを言った。


 目を覚ませばそこは、いつもと変わらない地獄の釜の底のような現実が待っている。

 夢と現実とはそんなものだ。


 それにしても運命の神様も、俺をこれほどの目に合わせるなら、いっそ一思いに殺してくんねーかな。

 何を思ってこれほど目に俺を合わせるんだろうな。

 冗談じゃないぜ。


 しかしもうそんなことはどうでもいいのだ。

 この世界では生きたいように生きた奴が勝ちなのだと割りきっている。


「そうだよ。俺はどっちかといえばクリスティーナの奴隷になりたかった変態野郎だよ。なんか問題あるか」


「気持ち悪いわ」と、クリスティーナ。


「いけませんよ、カズヤ。騎士としての修行がたりないから、そんな世迷い事を言い出すのです。騎士たるもの色欲に負けるようなことがあってはいけません」


「あら、騎士様のナタリーも、昨日の夜はずいぶん右手がお忙しいようでしたけど。もぞもぞと毛布の中で──」


「な、なんてことを言うんですか! そ、そんな根も葉もない事を」


 ナタリーは本気で取り乱している。


「でも、あたしにはちゃんと見えてたよ。騎士様で貴族様なのにおかしいよねえ?」


「もう怒りました! バツとして監督責任のあるカズヤとジュリアンには二ヶ月の降給処分を言い渡します!」


 けへへっと笑ってニーナは何も感じたところがない。

 驚いたのは俺の方だ。


「正気か、ニーナ。ただでさえ生活が苦しいってのに、俺の給料が減らされてどうして平気でいられるんだ。ほら、謝れって。許してもらえるかもしれないだろ。なんでそれほど大それたことしてヘラヘラしてられるんだ。しかもどうしてタメ口なんだよ。凄い騎士になるってお前の野望はどうした。騎士にするもしないもこの人次第なんだぞ」


「な、な、な、すみませんでした!」


 ニーナはひらに謝ったが、ナタリーは許してくれなかった。

 それどころか俺にまで色々愚痴を言ってくるからたまらない。


 しかも探索が始まってしまえば並んで歩くしかないのだから俺には逃げ場がなかった。


 俺は上司の愚痴を聞きながら、ひたすら種を集めた。

 しかし愚痴は終わらない。

 終わらないどころか説教に変わった。


「聞いてますか。騎士というものはですね、団結し、一つの意志となって目的を達成するのです。ですから、その目的は崇高なものでなくてはなりません。騎士団に命を捧げる覚悟がなければ務まらないのです。私と貴方も、ひとつの意思、ひとつの生命なのです。貴方にそういった意識がないから、貴方の従士までもがおちゃらけた言葉を発するようになるのですよ。騎士の口から発せられる言葉はすべて、私の口から発せられるも同じなのです。ですから従士と騎士も一心同体です。従士から発せられた言葉も貴方が発したも同じなのです。貴方の従士が私の名誉を傷つけたのに、ちゃんと責任は感じているのですか。貴方は入団した時から私の希望の光なのですよ。その希望の光が、女の奴隷になりたいなんて言い出したら、私がどんな気持ちになるか考えたことがありますか──」


 ナタリーのお説教に終わりはない。

 そしてニーナはナタリーをからかうのはやめた。

 代わりに俺のことをからかって退屈しのぎをするように決めたようだった。


「変態騎士さん、道がふた手に分かれてるわよ。どちらの穴がお好みかしら」


 俺は適当に右だと返す。


「私は自分の耳を疑いましたよ。どうしてそのような言葉が、カズヤ、貴方の口から発せられたのか私には到底理解できません。それに寝ている時の貴方の顔と言ったら、本当にいやらしかったのですよ。一瞬、私は貴方の顔なのか疑ったほどです。それにですね──」


「ところで、ものは相談なんですけど、距離が近いですから、もう少しだけ声のトーンを下げてもらえないでしょうか」


「なんですか。もしかしてうるさいなんて思ってないですよね。それに騎士が相談なんて言葉を軽く口にしてはいけません。もし貴方が本気で相談をするというのなら、私はこの命に変えてでも貴方の問題を解決しようとするでしょう。そのくらい重い言葉なのです。それをどうして貴方はそんなに容易く口にするのですか。私の命をなんだと思っているのです。さっきから上の空で、まさか聞いていないのではありませんか──」


 俺は適当に聞き流しながら、ナタリーの可愛い顔を眺めていた。

 お説教さえ耳に入らなければ、実に癒やされるんだけどな。


 この後ナタリーは俺の夢にまで出てきて、騎士道精神を授けてくださった。

 まるで洗脳みたいだろ。

 こんな生活が続くなんて想像できるか?

 俺には無理だ。

 こんな生活が続いたら、きっと俺はそのうち本気で騎士になったと思い込んじまうだろうぜ。


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