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第27話 ニーナの野望

 今日も今日とて、また同じことの繰り返しだ。

 戦うのはニーナとクリスティーナだけ。


 俺とナタリーは前の二人について歩いているだけだ。


 ところが今日は、最初に先頭に立ったクリスティーナの動きに切れがない。

 ナタリーと相談して、ニーナを先頭に変えてみるも結果は同じだった。

 やはり12階層にいた時よりも一晩寝た時の体力の戻りが悪くなっている。

 それに昨日は周りに人がいなかったせいで、かなり寒かった。


「今日はやけに調子が悪いな。やっぱりあんなところで寝たんじゃ体が辛いか」


「なんだか高い山に登った時のように息が続かないの。それでもまだいつもと少し違う程度だけど、なんだか少し体が重たい感じなのよね」


 かといって、俺が変わるわけにも行かない。

 ここは二人を信じて任せるほかなかった。


 そんなことを考えていると、先頭を歩いていたニーナが叫び声を上げる。


「キャー! み、見て、みてこれ! ついに見つけたわ。とうとうやったのよ私は!」


 その声につられてみんなが集まる。

 ニーナが指さしている先には、小指の先ほどの小さな丸いものが3つほど一箇所に転がっていた。


「召魔の種ね。凄いわニーナ、お手柄よ」


「きっと凄い召魔に違いないわ! 隠しましょう! どっかに隠して持ち帰りましょう! これであたしたちは大金持ちよ」


「そんなのダメですよ」


「ぇっ? ──えぇっ!?」


 ナタリーの言葉に、ニーナは泣き崩れた。

 たしかにナタリーなら、そう言うだろうなあとは俺も思った。


「それにまだ価値が有るものと決まったわけじゃないのよ。後でジュリアンに見せて、どんなものか聞いてみましょう。それでいいわね、ニーナ」


 ニーナはうなだれてやる気の欠片も感じられなくなっていた。

 目はうつろで、ひとりごとブツブツ言っている。

 きっと自分の境遇を呪っているに違いない。


 しかしニーナのこの発見のおかげで、俺はあることに気がついていた。

 この小鳥の卵のような物からは、かすかに魔力が感じられるのだ。

 そして俺にはそれが見える。


「こんな風に見つけにくい場所にあるものなら、俺の眼で見つけられるんじゃないかな。かすかだけど独特の魔力があるんだ」


 その言葉にニーナの目は、また生気を取り戻した。


「たくさん見つけたらひとつくらいいいわよねぇっ!? いいわよねぇっ!?」


 その様子にさすがのナタリーも折れた。


「まあ、ひとつくらいなら……」


 その言葉に、ニーナは野望への一歩を踏み出したとばかりに喜んだ。


「光魔や魔眼クラスの召魔ってのはどのくらいの確率で見つかるんだ?」


 俺はクリスティーナの耳元でささやく。


「50年に一度か、100年に一度くらいよ。それもこんな階層で見つかることはないわ。いくら今回は魔力が濃いといってもね」


 どうやらニーナの野望への道は険しそうだった。

 しかも並みの険しさではない。


 それにしても、俺は改めて自分の持つ能力の希少さに驚く。

 なぜマーリンはあんなにも簡単に、こんな力を俺に寄越したのだろう。

 そして何故そんなものを持たせておいて、今はこうして放って置かれているのだろう。


 レオナルドの言うように、本当に何処かでのたれ死んでしまったのだろうか。

 もしそうだというのなら俺は元の世界に帰れないということになる。

 もちろん、今更クリスティーナ達を置いて元の世界に帰りたいとも思っていない。

 しかしマーリンの考えが読めない。


 それとも、どこかで俺がもう少し使いこなせるようになるまで待っているのだろうか。

 いずれにしても向こうから接触してこない限り、その真意はわからない。


「カズヤ! まだ見つからないの!?」


 ニーナはさっきからスキップで先頭を歩いている。

 どうしてあんなにも極端な性格をしているのだろう。


「ああ、まだだよ」


 探してすらいなかった俺はいい加減に返した。

 その時ふと、視界の端に気になるものが映った。


 近寄り手に取ると、それは召魔の種だった。


 あったぞと言う前にニーナが飛びついてきて、押し倒された俺は顔中にキスされる。


「カズヤ、ステキ! 愛してるわ。もう一生あなたを手放さないからね」


 なんて現金な事を言うんだ。

 クリスティーナが引き剥がしてくれたおかげで、俺はやっと立つことが出来た。


 俺が見つけたのは2つの召魔の種だった。

 さっきよりもずいぶん小さい。

 このようにして、いくつかまとめて産み付けられているものらしい。


「幸先の良いスタートね」


 クリスティーナもニーナにつられて、その気になっているようだった。


「そんな簡単に価値のある奴は見つからないと思うぜ」


「そんなことありませんよ。本当に凄いわ。カズヤの力があれば本当に凄いものが見つかる可能性も十分にありますよ。なんだか楽しみになってきましたね」


 ナタリーもちょっとその気になっている。

 俺もつられて笑顔になった。

 どうせ中央本部に取り上げられてしまうだろうとわかっていても面白そうではある。


 その後も俺は順調に召魔の種を見つけた。

 袋に入れたそれは、一目では数え切れないほどになっている。

 20以上はあるだろう。


 はしゃぎすぎたニーナは夜にはぐったりとしていた。

 それでもまだ目には輝きがある。


 そしてまた昨日と同じようにみんなで寄り添って寝たのだが、なんとニーナに押し倒されてしまった。

 ナタリーの前でするのも二度目だったので応じてしまった俺もあれだが、その後クリスティーナまで同じように求めてきたのには驚いた。


 やってる間、リリーとナタリーは寝たふりをしていてくれた。

 まったく申し訳ないことをしてしまった。


 なんだか騎士団の中はとてもオープンで、本当に感覚がおかしくなってくる。

 少しづつ侵食されていってる感じだ

 でも積極的な二人はとても魅力的で可愛いかった。


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