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第11話 オークション

 俺はトリシアの町内で適当に聞いてオークション会場を見つけた。

 まだ開いてはいない。

 近くで聞いてみるともうすぐ開くだろうと言われた。

 俺は適当にその辺で時間をつぶしてオークション会場が開くのを待った。


 オークション会場は俺が思っていたよりも小さい部屋だった。

 先に売られた剣やら鎧やらをみて、俺は競り方を覚えた。


「それでは次は女奴隷になります。最低落札価格は金貨500枚から」


 舞台の上にいるのは娼婦のような格好をさせられているクリスティーナだ。

 どうやら女奴隷目当てらしい太った男が1000枚と叫んだ。

 俺はすぐさま1500枚と叫ぶ。

 大きめに言った方が相手の気を折れると考えたからだ。

 しかし同じ男がすぐに2000枚と叫んだので俺は肝を冷やした。

 これは血を見ることになるかもしれない。


 俺は全財産である2500枚と叫んだ。

 その額に会場がざわつく。


「おいあんた。相場をわかってないのか。いくらなんでもそりゃばかげてるぜ」


 隣の男が言った。

 俺はいいんだと返す。


 俺は祈るような気持ちで次の瞬間を待った。


「金貨2500枚、それ以上はありませんか……。ありませんね。それでは金貨2500枚で落札です」


 俺は深く息を吐いた。

 俺と値を競っていた男がこっちをにらんでいる。

 その男はこのあと女奴隷ばかり5人ほど落札していた。

 俺は半ば放心状態で、そのままオークションを見ていた。


 値段が高いのは体格のいい男の奴隷と若くてきれいな女奴隷ばかりだった。

 きれいな女奴隷の相場は金貨1200枚位だ。

 特別かわいいクリスティーナのような奴隷でも1700くらいが相場のようだ。

 戦闘用奴隷はどれも男ばかりで、どいつもたいした値段ではなかった。

 他には魔法の触媒や魔法書などがかなりの高額で落とされている。

 その額は金貨3000枚以上の値段が平気でついている。

 それでも氷魚と同じ中クラスの召魔にそんな値段がついていた。

 もとの世界の基準で言えば金貨十枚が一万円くらいの感覚だろうか。


 武器や鎧などはほとんど出ていなかった。

 しかも相場はかなり安い。

 一番高いものでも金貨100枚程度だ。


 後は高純度の魔力の結晶石が金貨50枚そこそこの値段で落とされていた。

 結晶石はキャスターのようなもので魔法に変換したり、金属などを加工するのに使われる。

 キャスターや金属加工の触媒として使うには使い捨てになるのでそう高くはならない。

 また高純度であれば魔法効果のついたアクセサリーなどに加工されることもある。

 超高純度の魔力結晶石からは寿命を延ばす効果ののあるアクセサリーや運まで左右するような武器なども作れるそうで、そういうものであればそれこそ国が買えるくらいの値段になるという。


 結晶石や触媒であれば迷宮でいくらでも手に入る。

 まずはそういったもので金策するのがいいのかもしれない。

 借金を返すのはもとの世界に帰るよりも優先しなくてはならない。

 ここで帰ったら俺はただの詐欺師だ。


 オークションが終わったので俺は別室へ行き、支払いと受け渡しを済ませた。

 約5日ぶりに見るクリスティーナはいくぶんやつれて見えた。


 俺はクリスティーナを馬の後ろに乗せて学園に向かうことにした。

 そのまま荷物をまとめてハミルトンに帰り、借金返済の労働に励むつもりだった。


「一体どうやってお金を作ったのよ」


「なんだよ、俺は口の利き方から教えなきゃならないのか。使えない奴隷だな」


「一体どうやってお金を作ったのですか」


 俺は冗談のつもりで言ったのに、クリスティーナは素直に言葉遣いを変えた。


「やっぱり気持ち悪いから普通に喋ってくれ」


「いいんです。私はもうあなたの奴隷ですから。この左手に刻まれた跡は一生消えません。主人に逆らえないように魔法もかけられてしまいました」


「マジかよ……」


 見ればクリスティーナの左手には痛々しい三角の焼き印が押されている。

 俺がこの世界にきてマーリンにやられたものに似ていた。


「これがある限り一人で宿に泊まることもできません。それに身分も一番低くなってしまったので、市民の得られる権利もなくなったのです」


 それを聞いて俺は死ぬほど後悔した。

 こんな事になるならオークション会場ごと襲えばよかったのだ。

 いや、しかしそれではクリスティーナの実家は一家離散の憂き目を見るかもしれない。

 どうしようもなかったのかもしれない。


「金は騎士団長に借金して作ったんだ。だからこれから迷宮にでも潜って金を作らなきゃならない。お前も手伝ってくれよ」


「はい」


「そうだ。騎士の従士になるってのはどうだ。奴隷から従士になって騎士までなった話が授業の中であっただろ。俺が指名して王様に頼めばなれるはずだぜ」


「あなたの国は昔の敵国です。そこの従士になるなんて考えられません。私はあなたのことが好きですから、奴隷としてあなたのためになら喜んで働きます。それで満足です。ハミルトンの人間にはなりたくありません」


 クリスティーナは口調を変えるつもりがないらしかった。

 ずいぶん思い詰めたものだ。


 俺は話題を変えたくて気になっていたことを尋ねる。


「お前は魔法も剣も使えるのに戦闘奴隷として売られなかったのは何でだろうな。クリスティーナくらい何でもできたら付加価値になったんじゃないのか。あんな愛玩用途しかないみたいな扱いじゃなくてさ」


「普通、騎士は迷宮に入るとき男の従士と男の奴隷を連れてはいるのが一般的です。その、男の人が出すアレには多量の魔力が含まれています。女だと魔力を受けることしかできません。私があなたに抱かれても私の中に……あなたの、その、魔力が出るでしょう? それはゆっくりと吸収されます。ですけど私の魔力をあなたに渡すことはできません。男同士であれば魔力を融通し合うことができるのです」


 驚いた。

 俺はこの世界の奴らは気でも狂っていて男同士でそんなことをするんだとばかり思っていた。

 そんな合理的な理由があるとは夢にも思わなかった。

 それでも、どんな理由があるにせよそんなことに手を出すなんて気が知れないという感想は変わらない。


「俺は男とそんなことするのはごめんだぜ。それじゃ俺は迷宮に潜るのにはむいてないのかな」


「珍しいことではありません。それに魔力の総量が多ければ一晩寝たときに回復する魔力の量も大きくなります。それに女の騎士というのも普通のことです。ただ一緒のパーティーに入れるのに女をわざわざ選ぶ人は少ないというだけです」


「俺が迷宮に入るために女だらけのパーティーを作ったら嫌か?」


「いいえ。あなたはそうするしかないと思います。それに迷宮に入るのなら早く従士を選ぶべきです。危険を減らすにはそれしかありません。危険を減らすことは迷宮に入るために最も優先すべき事ですから。それに処女であればあなたから魔力の補完を受けられます。全ての属性と高い魔力がありますから、あなたから補完を受ければ頼もしい味方になるでしょう。ですが新しい力を使いこなすには相当のセンスと努力と時間が必要になります。なるべく早く信頼できそうな人物を捜して欲しいと思っています」


「難しい話だな。そういえば月兎の儀式ってのは満月だ初めてだと色々条件があるんじゃないのか」


「同じくらいの年齢であればいつでも可能です。ただ満月の夜が選ばれるのは満月には特別な力があると信じられているからです」


 何とも簡潔でわかりやすい説明だった。

 それにしても何という夢のような話だろう。

 ハーレムを作る口実と許可をもらって俺はほくほく顔だった。

 こんな展開になるなら異世界も悪くはない。

 もとの世界じゃ彼女の一人すら作れなかったのだ。


 しかもとびっきりの美少女まで自分のものになった。

 同じ馬に乗っているので、さっきからクリスティーナの尻があたって俺のモノは大きくなっている。

 さりげなく胸に手を延ばすとクリスティーナはびくっと体を震わせた。

 しかし手をつねられ、おまけに睨まれてしまった。


「そういうのは夜だけにしてください」


 奴隷になるのは受け入れているのに、主導権は彼女にあるらしい。

 お堅いのは変わらないようだ。

 それでも夜は好きにしていいということになる。

 それだけで十分だ。

 俺は両手に抱え込んだクリスティーナの体温を感じながらゆっくりと学園に帰った。



 学園ではまず退学手続きをして、荷物をまとめた。

 しかし荷物は馬に積み込めないので馬車かなんかを調達する必要がある。


 俺は町に出てそこら辺で聞いてみた。

 ちょうどハミルトンに行く馬車はないので、仕方なく結晶石などを売って金を作り金貨2枚で馬車を雇うことにする。

 途中は宿に泊まる金もないのでたき火を焚いて野宿することになった。


 3日かけてハミルトンまで戻った。


 城に入るとレオナルドが明らかにうんざりした顔を見せた。


「おい、これが金貨2500枚の奴隷かよ。胸も尻もくっついてるようには見えないぜ」


 俺の耳元でそんなことを言ってくる。

 俺は趣味の問題だろうと返した。


 まずはナタリーに挨拶を済ませ、荷物を騎士団用のやすっぽい寮のような施設に移した。

 ここは騎士団に所属しているものが泊まれるのだが、ナタリーは町に私邸を持っているのでそっちから通っている。

 寮には主にレオナルドやジュリアンと、その従士などが寝泊まりしていた。

 壁はやすっぽい木でできているので、隣の音がほとんど筒抜けだ。

 ここじゃどうにもクリスティーナと楽しむような気にはなれない。


「おい、レオナルド」


「なんだ新入り」


「騎士は家とか買わないのか。俺はこんな所に住んでたら気が狂う自信があるぜ」


「ずいぶん繊細なんだな。俺もジュリアンも一度は買ったんだが、めんどくさいだけだからうっぱらっちまったよ。それよりここにいりゃあ飯も出るし奴隷もいるし天国だぜ」


 やはりこの大男は見た目通りに図太い神経をしてるらしい。

 節約のためと言うよりは、好きでこんな汚いところに住んでいるのだ。


 その日の夜になってわかったことが、この部屋は本当に地獄だった。

 隣の部屋ではレオナルドとジュリアンがギシギシやってるし、反対側の部屋でも従士が奴隷を連れ込んで喘ぎ声がうるさい。

 これでクリスティーナと一緒に寝るのだから、気まずいわ、うるさくて眠れないわで発狂しそうだった。

 しかもこんな中でクリスティーナとナニをするのもためらわれるので色々溜まる。


 俺は3日ももたずにナタリーに泣きついて小銭を借り、町の外れの小屋を借りた。

 物置みたいな小屋だ。

 騎士団の連中には馬小屋とからかわれたが、あんな環境にいたら廃人になってしまう。


 こうして俺の騎士団生活が始まることになった。


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