里帰り
―ガタン。
大きな揺れで堅持醍醐は眠りから目を覚ました。
「お疲れ様です。ただ今九次市に到着しました。お荷物をお忘れないようよろしくお願いいたします。」
カーテンの隙間から朝日がこぼれてくる。
「ようやくついたな。」
バスから降りて背伸びをすると、関節がバキバキと鳴った。
「いってえな。ったく田舎道ってのは本当に厄介だな。そうそう帰るもんじゃないな。」
―ゴンッ!
「痛え!」
「久しぶりに帰ってきたと思ったらなんてこというんだい。この親不孝もんが!」
すらっとした体型の女がバイクの前で腰に手をあてて立っていた。
「八重、お前何すんだ!ヘルメットで殴る奴があるか!」
「うっさいね、せっかく迎えに来てやったんだ。それぐらいでぐだぐだいいなさんな。」
「ってあいつの言ってた迎えっておまえかよ!」
「ああ?」
ただでさえ怖い三白眼が更に白目が多くなって凄味が増した。
「いいえ、なんでもゴザイマセン・・・。」
「ったく、さっさと乗んな。」
しぶしぶ後ろに乗り込む。
「つまらない時間を食っちまったな。」
なら最初から殴らなきゃいいだろうと思ったが、言ったらまた白目が広がった目で睨みつけられるので醍醐は黙った。
「しかたないから近道をいくぞ。」
「おう。」
「しっかりつかまってろよ。」
「おう。」
「ちっとばかし崖っぷちにあったり、イノシシが出たりするかもしんないけどいいよな。」
「おう・・・えっ「じゃあ飛ばすぞ。歯ぁくいしばれ!」
「ってタンマタン、ぎゃあああああぁ!」