第五話~教室~
昼休みも終わり、授業中・・・
今の授業は「倫理」
いわゆるセンター試験で使う教科だ。
先生は「神は万能か」ということのついて得意げに語っている。
「どう思う、斎藤?」
斎藤とは恭弥のことだ。
「うーん、神なんだから万能じゃないんですかね~」
「もし神が万能でないことを証明したいならどうしたらいいと思う、西堀?」
西堀とは真穂のことだ。
「そんなの神ができないことを挙げればいいに決まってるじゃないですか」
「そんなことできるわけね〜だろ!!馬鹿じゃねえの真穂!!」
馬鹿はお前だ、恭弥・・・
「馬鹿はお前よ、恭弥。そんなの簡単だわ」
「ほ~う。じゃあ、櫻井、お前はどう思う?」
俺にあてやがって・・・
「神は万能なんかじゃありません。例えば有名な例として『神は【自分の持ち上げることのできない石】を作ることができるか』という問いがあります。もし作ることができれば、神には持ち上げることのできない石が存在することになる。もし石を作れないのであれば、その時点では神は万能ではありません。」
「よし、それで正か」
「それに・・・」
俺は付け加える。
先生が不審な顔をする。
「いや、なんでもありません」
「・・・そうか。まあ、それで正解だ。この問いに対し、ある人はこういう答えをだしてる。神は自分の持ち上げることのできない石を作ることができる。しかし櫻井の言ったとおり、そのままでは神には持ち上げることのできない石が存在することになってしまう。そこで、神はその瞬間からその石を持ち上げることができるようになるというものだ。ようはパワーアップの容量だな」
「なんだそりゃ?ただの屁理屈じゃねえか」
「そういうものなんだよ」
先生が恭弥を説得する。
涼介はまた考えていた。
今日の朝、坂での考え事と同じことをだ。
神なんている訳がない
だってそのせいで・・・
そもそも神が存在すれば・・・
恭弥は「絶対」とか「真理」とかいう言葉が大っ嫌いだった。
神様は絶対?
吐き気がする。
「絶対」といえば時間はどうだろう。「時」は絶対だと言えるだろうか?
「時間は皆にとって平等に流れる」
これはあのニュートンが言っていたことだ。
しかしこれはアインシュタインの相対性理論で違うことが証明されている。
では、「時間は過去から未来に向かって過ぎて行くもの」ということについてはどうか。
それに抗うことは可能なのだろうか。
現代科学では、タイムマシンを作ることはほぼ不可能とされている。「母親殺しのパラドックス」についても解決することはまずないだろう。
でも・・・
もし過去に戻れるのが可能だとしたら・・・
俺は母さんを・・・