愛は全てを凌駕する!
「カイ」
「はい、水」
コーザさんに弟子入りして早1週間。私はあれから毎日コーザさんの元へ出向いては拳闘士としての訓練を受け、コーザさんの森への間引きについて行っては魔素のお裾分けを頂いている。
「カイ」
「はい、タオル」
そのお陰もあって、私の身体能力はメキメキ上がっている。けれど何故か、私の成長を見る度にコーザさんが落ち込んでいる様に見える。巣立っていく弟子を幻視して感傷に浸っているのかもしれない。
「カイ」
「姉さんの当番だった家の掃除はやっておいたよ。こっそり森に入ってる事のカモフラージュもばっちり」
今日も今日とて、こうやって森で魔物狩りを行っている。私は日々の積み重ねを疎かにしない女なのだ。
「なぁ、カイ。……偶には怒ってもいいと思うぞ?」
「……怒っても姉さんは変わりませんから」
「そうか……。そうだな」
最近、カイとコーザさんの仲がとてもいい。それはとてもいい事なのだが、何だか私だけ疎外感を感じるのは何故だろう?
……
…………
………………
「嬢ちゃん、流石に強くなるのが早すぎるんじゃないか?」
「ふっ、愛のなせるわざですね」
「いや、そういう問題じゃないと思うんだが……」
コーザさんの言うように、私は今凄い速度で成長している。どれくらい成長しているかと言うと、最早ホーンラビット程度なら私1人で狩れるし、今では更に上のマッドボアというイノシシの魔物をコーザさんと2人で連携して倒すことも出来るほどだ。
魔素の吸収効率など愛の力の前では障害にすらならないのだ。
「はぁ、俺が早々に冒険者を諦めたのは英断だったという訳だな」
「そうですね。それで私という優秀な弟子が出来たのですから、それは人生最大の英断だっと言ってもいいかもしれませんね」
「嬢ちゃんと話してると、落ち込んでるのが馬鹿馬鹿しくなってくるな。……まぁ、落ち込むよりは師匠を頑張りますか」
そう言ったコーザさんの顔は、先ほどより少し晴れやかだった。