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恋を実らせる完璧な戦略!

「カイ! 今日から拳闘士を目指して訓練を開始するわ。貴方も手伝いなさい!!」


 私は弟であるカイの部屋の扉をバーンと開き、いつもの様に読書に勤しんでいる弟に決定事項として指示を出した。


「……姉さん、扉を開ける時は静かにっていつも言ってるじゃないか。この前もそれで扉を壊した事を覚えてないの?」

「そんな事、今はどうでもいいの。とにかく準備なさい」

「準備と言っても何を準備しないといけないのさ? と言うか、そもそも何でいきなり拳闘士を目指す事になったのか説明が欲しいんだけど」

「仕方がないわねぇ。姉の恋愛話に興味を持つなんて本当におませさんなんだから」


 弟も今年で13歳、そういう事に興味を持つ年頃なのだろう。


 ……


 …………


 ………………


「ラナ、実は僕……16歳の誕生日を迎えたら、冒険者になってこの村を出ようと思ってるいるんだ」


 ある日の昼下がり、私ことラナは幼馴染のユーリからそんな告白を受けた。

 「大切な話があるんだ」と呼び出された私は、「遂に私、告白されるんだ!」と内心舞い上がっていたのだが、冒険者になって村を出るという予想だにしない告白を受けて頭が真っ白になってしまった。


「え~っと……なんで急にそんな話に?」

「前々から考えてはいたんだ。けど、僕は昔から体が弱かっただろ? だから昔、両親に冒険者になりたいって話をした時に『お前には絶対に無理だ』って否定されて、それ以降この話が出来なくなって……」

 

 ユーリは昔から体が弱く病気がちだった。川に入れば風邪を引き、薪を割れば手首を痛め、5つも下の子と追いかけっこをすれば先に息を切らす、そんな子供だった。その度に私は看病をしたり、代わりに薪を割ってあげたり、落ち込むユーリを慰めてあげたりしたものだ……あぁ、ユーリは昔から本当に可愛かったなぁ。

 ちなみにユーリは私と同じ14歳で、16歳まであと1年と少ししかないはずだ。

 

「でも、この本を読んで僕は確信したんだ! やっぱり僕は冒険者になりたいんだって!!」


 それは先日、うちの村にやってきた行商人から買っていた本で、確か中身は剣士と拳闘士の二人組冒険者が活躍する冒険譚だっただろうか。ユーリが楽しそうに本の話をしていたので、内容は薄っすら覚えている。


 ――これは……もしかしてチャンスじゃない?


 苦難の中で助け合う2人、徐々に近づく2人の距離、そして芽生える恋……いける!!


 ……


 …………


 ………………


「と、言う訳よ。分かった?」

「……うん、姉さんはやっぱり姉さんだってことが分かったよ」

「何言ってるのよ。私はいつまでもカイの大切なお姉さまに決まってるじゃない」


 全くカイはいつまで経っても姉離れが出来ないのだから。

 私がこうやって構ってあげなければ、カイはずっと部屋に引きこもって本ばかり読んでいる。まぁ、こういう所もカイの可愛い所なのですけどね。


「それで、姉さんが拳闘士を目指すと言うことは、ユーリさんは剣士を目指してるの?」

「そうみたい。森で拾った木枝でこっそり練習しているそうよ」

「木枝って……。それで、拳闘士になるって言っても一体どうするのさ?」

「ふふふ、それはね……」

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