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態度が悪く、失礼した

「確かに弱小国家では練度も重要かもしれませんが、そんなものSランク以上のスキル持ちがいたら関係ありませんよ」


 地球では兵士の数は正義だった。男女比がおかしくなったこの世界でもある程度は同じだけど、スキルによってひっくり返る場合もある。


 Sランク以上であれば一騎当千ともいえる力を発揮するだろう。それは僕の力によってスキルが進化し、シーサーペントを両断したユーリテスさんを見ればわかる。


 戦争が始まれば、大軍すらなぎ払える英雄として活躍するはずだ。


「高ランクのスキル持ちに頼って、滅亡した国があるのしらないのー?」


 口調は軽いけど、リテートさんが鋭いことを言った。


 少数だと、不慮の事故が起こって死ぬ場合もあるからね。リスクがあるのは間違いない。


「それは小国の話ですよね。我がブルド大国は兵の数も大陸随一です。当てはまりません」

「へー。だったらやってみる?」


 思っていたよりも、リテートさんは好戦的な性格らしい。


 隣にいるエリンさんは、やっちゃえ! って顔をしている。


 本当に戦争が始まったらどうしよう。僕はどっちの国にも被害は出てほしくない。


「そこまでだ」


 不安になっているとルアンナさんが止めてくれた。リテートさんの頭を押さえつけると、同時に頭を下げる。


 二人とも反省してくれたみたい。


「態度が悪く、失礼した」

「……気にしておりません」


 内心では納得してなさそうだけど、少なくとも表面上は許してくれたみたいだ。


 ケンカを避けられてほっとしたよ。


「イオディプス君とのデートなんですから、仲良くとはいかずともいがみ合いは止めましょう」


 言い方が少し気になったけど、大人の対応をしてくれたスノーさんに文句は言えない。


 女性と一緒に買い物をするんだから、時間に余裕があればプレゼントの1つや2つ買うべきなんだろう。そういった気づかいぐらい、僕だってできる。


 ただセンスには自信ないから、相手をよく観察して欲しがっている物を見極めないとね。


 * * *


 貴族街にある、高級店がずらりと並ぶ通りに着いたので馬車を降りると、兵の皆さんが至る所で警備をしていた。通行止めになっているのか、僕たち以外に誰もいない。


 窓からお店を覗いても店員さんしかいなかった。


 警備上の問題で、余計な人を排除したんだろう。


 買い物するだけだというのに色んな人に迷惑をかけているけど、レベッタさんたちにお土産を買いたいので帰るという選択は取れない。


 心の中でごめんねとつぶやいてから、スノーさんに案内されて道を歩くことにした。


「こちらは、貴族用のお菓子を販売しているお店です。大量の砂糖を使っているので高価ですが、非常に人気ですよ」


 クッキーのような焼き菓子だ。クマみたいなのもある。


 ナイテア王国だと甘味は珍しいので買えば喜んでもらえそうだけど、移動に時間がかかるので悪くなってしまう気がする。食べ物はちょっと怖いな。


「アクセサリーはありますか?」

「そうですね……こちらはどうですか?」


 数件隣のお店を案内してもらった。


 大小の宝石を使ったネックレス、指輪、ピアスなどが置かれている。パーティーで使えば注目されること間違いなしだ。


 ただその分、値段もすごいことになっている。


 お財布を取り出して中身を確認してみるけど、魔物退治の報酬で手に入れた報酬だけじゃ買えそうにない。


「お金なら貸せますが?」


 スノーさんの提案は、すっごくありがたいけどブルド大国に借りは作りたくない。


 好きな女性へのプレゼントなんだし、自分の力で稼いだお金で買いたいというプライドもある。お断りしよう。


「遠慮しておきます。それよりも、もう少し庶民向けのお店を案内してもらえませんか?」

「それは……うーん。安全性が……」


 僕の発言でスノーさんを悩ませてしまったようだ。


 この規模の兵がいれば、人が多いところでも大丈夫だと思っていたんだけど、懸念は残るみたい。


「イオディプス君が望んでいるのです。安く、質の良い店を案内してください。ナイテア王国なら問題なくできますよ」


 エリンさんが放った最後の一言に、ピクリと眉を動かしてスノーさんが反応した。


 また馬車の中の空気が再現されるかと思ったんだけど、ルアンナさんがフォローをしてくれる。


「我々も全力で護衛するので、許可してもらえませんか?」

「…………いいでしょう。ルージャ! いますか!」


 兵士の中から一人の女性が抜け出してきた。


 ショートボブの茶色い髪をしている。そばかすがあって親しみやすい顔をしていた。


「スノー様、お呼びでしょうか!」

「あなたはこの街の平民でしたよね?」

「間違いございません」


 余計なことは聞かず、敬礼をしたルージャさんは動かない。


 練度が低いという評価をされていたけど、近くで見た感じ、僕はそう思えなかった。


「イオディプス君が平民の利用するアクセサリー店に興味を持っています。高すぎず、質の良い場所を案内しなさい」

「かしこまりました!」


 ルージャさんは僕に近づくと手を握った。


 突然のことでルアンナさん含めて、誰も反応できない。


「私が安全を守りますね」

「よろしくお願いします」


 反射的に僕が許可したので、誰も否定できない状況を作り出してしまった。


 今回は問題にはならないだろうけど、不用意な発言で言質を取られてしまう可能性もある。特にグロリアーナ女王と会談する場合は、下手な発言をしないよう気をつけなきゃ。

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