18.アデルが横でドン引き
18.アデルが横でドン引き
「大丈夫……」
このやり取りも反応も今が最後かぁ……。やっとまともに話してもらえるようになったのに。
いや、めげるな。僕なんかでも人並みの会話を出来るようになれるんだ! 次の人達とも頑張ろう! アデルとルイスには本当に感謝してもしきれない。会えて良かったなぁ。
「おい……?」
「揃ってるな。じゃ、分担分け始めるから全員前に寄れー」
部屋に入ってきた女性団員が部屋の窓寄りに全員を集める。
「今から分担分けを始める。名前を呼ばれた奴は部屋を出て隣の部屋に移動し、そこでチーム編成と分担を言い渡す」
女性団員が名前を呼び始め、呼ばれた者は部屋を出て行く。
「……ド。……ルド。ガラルド」
「え? あ、僕呼ばれた?」
ルイスが僕の肩に片手を置いて軽く揺らしながら名を呼んだ。
「何言ってんだ?」
「もうそっち終って、今度はこっちの配属に移ってるよ」
え? 終った? ん? 僕、名前呼ばれて無いんだけど……。
「ほれ。詳細」
「アデルありがとう」
アデルが紙をもらって来て渡してくれた。
ルイスがそれを受け取って、僕にも回してくる。
何故?
「…………え?」
紙には、僕達三人の配属先が記載されている。
「総務部か。希望通りだな」
「アデルも総務希望だったのは意外だね」
「そうか?」
アデルとルイスがそんな事を言う横で、僕も紙に目を落とすけど、駄目だ内容が入ってこない。
「え? 何で僕、組み直しにならないの?」
「何言ってんのお前……」
「そんなの、ボク達もガラルドもそのままで良いって希望出したからでしょ?」
カタカタと手が震える。
「お、おい」
ギョッとしたような声をアデルが上げた。
「あー。もう。どうしたの」
ルイスが困ったような声でそう言って、同時にボタボタと手に持った紙に大粒の水滴が落ちて滲んだ。
結局、僕達は部屋を追い出された。
僕がみっともなく大泣きした上に泣き止めなかったからだ。
涙って一度出ると、止めようと思っても中々止まらないんだな。初めて知った。あと鼻も奥がツンとして目頭も何か詰まったような変な感じ。
「おい大丈夫かよ情緒。怖いわ」
「ごべん……」
「前髪長くて良かったね。腫れ上手く隠れるし」
アデルが呆れて、ルイスが軽く慰めるように肩を叩く。
何かそれだけでまた涙が……。
「総務部行くまでに泣き止めよ?」
「ぜんしょしまずぅ……えぐ」
うん。前髪と涙で見えないけど、アデルが横でドン引きしてる気配がわかる。
そりゃ他人にはこんな事でって思うかも知れないが、僕にとってはそれだけの事なんだ。
ずっっっと、NOと言われ続けた身からしたら、それだけ驚くし嬉しい事なんだよ!
もちろん、こんな状況になったのは自業自得。己の所業を振り返った僕自身、同情の余地なんて無いと思っている。思っていても、実際体験して、生き続けると辛い。
でも死にたくもない。
なら、苦しくても辛くても、耐えるかどうにかするかしかない。
耐えられる自信なんて無かったから、僕自身や、僕が変わることで周りに変わってもらおうと思った。
けど、ずっと上手くいかなくて、色々ギリギリで、正直もうしんどいしか言葉がなかったから、最近幸せ過ぎて怖くて。
そこにこれで、もう、もう……。
「ごううん、づがぃはたしあがも……」
涙で不明瞭な視界。気配でアデルが数歩後退りしたのがわかったけど、止まらない。ルイスも流石に何か戸惑っている気はしたけど、けど、でもでもだって……。
「おい。いい加減泣き止めよ。きめぇよ」
「うーん。流石に目が溶けそうで心配だからちょっと落ち着こう?」
僕が泣き止むことが出来たのは小一時間経ってからだった。水分が足りない……。
「あ。君らが新しく配属になった組の最後?」
「はい。遅れてすみません」
アデルが頭を下げるのに合わせて僕とルイスもならう。
勿論原因は僕の大泣きですごめんなさい。
あの後、泣き止んだは良いけどわりとボタボタ垂らした(汚くて申し訳ない)涙でハンカチはおろかシャツまで湿りに湿ってしまった為、アデルに怒られつつ一度寮に戻って着替えることに。
「良いよ。連絡くれてたし……大丈夫?」
総務部で出迎えてくれた男性職員が僕をちらりと見る。
「は、い。ご迷惑おかけしました!」
僕、最近、土下座って形式覚えたんだけどやるべきかな。
「じゃ、早速。三人の初仕事はコレお願いしちゃおっかなー」
はい、と渡されたのは依頼内容を記載した紙。
「旧城の夜間備品点検?」
ルイスが紙に記載された内容を呟く。
「そ。行くときは警邏の人もつくから安心してね」
旧城とはこの騎士団から北へ真っ直ぐ進むとある崖の上にそびえ立つ石造りの荘厳な佇まいの城。以前……異母弟が騎士団の本拠地を造るまではそちらがこの領地の公的機関だった。
今は大きな広間もあるので結婚式や催し物に使用される事もある。後はまあ……備品倉庫的な。
更新再開します。いつも読んで下さりありがとうございます。




