0.プロローグ
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爽やかな新緑の季節。
七つの階層から成る世界の第一階層、そのとある領地にある騎士団本部。役所の役割も担うその場所は、一般人も利用できる公園や中庭も備えており、なんなら昼下がりに軽いデートで利用できる遊歩道もあった。
「うふふ。可愛い」
木漏れ日の降る遊歩道。宙に伸ばされた引き締まった腕、そしてその指先に青い小鳥が可憐な鳴き声と共に止まる。
齢を経た樹木のように安定感のある腕に数羽が降り立ち、指先に止まった小鳥と合わせて歌うように鳴いていた。
(か……)
それを、茂みの中から見ている青年。
(可愛い……っ!)
勿論、青年が顔を真っ赤にして悶える対象は小鳥ではない。
大樹の枝のような安定感がある腕、そして小鳥を止まらせる成人男性の親指くらいの太さの人指し指。
紫水晶のような硬い光沢のある髪、日に焼けた隆々たる肉体を黒い軍服風の騎士団服に包み、小鳥に月色の瞳を優しく向けるその表情。
(まさしく、女神っっっ!)
そう。青年が熱い視線を程よく離れた茂みの中から向ける対象は、雄々しい姿の――女性。
しっかりと大地を踏みしめるその歩みは、一歩毎にズシン……ズシン……と細かな振動を伴う。
そんな、女性。
そしてこのお話は、そんないわゆる漢女に恋した青年のやり直し奮闘記……的なものになるかも知れない。
◆◆◆◇◆◆◆
俺、ガラルドは少し前に兄ともどもやらかした。
その罰として、領主の令息から急転直下、雑務兵といういわゆる雑用係に従事する事になったわけだ。
当然……というかそんな簡単にこれまでを捨てられるわけもなく、しばらくは色々な意味でどうしようもない感じだった。過去の俺が目の前にいたらすぐさましばき倒して次期当主の異母弟に頭地面にめり込ませる勢いで土下座させる。
そう本気で思うくらい、今となっては過去を恥じるばかりだ。
閑話休題。
それまで何不自由なく、全て整えられてやってきた世間知らずのガキが、いきなり雑用係になった所で上手くできる訳が無い。自分の面倒、一人暮らしすら出来ないのが役に立つかと言えば、はっきり言ってNOだろう。居ないほうがマシだ。
最大限の温情で、命は助かり、衣食住も保証された。
それだけで有り難いと今なら心の底から感謝出来るし、実際してる。
けれど初めの頃……と言っても正味一年くらいは役に立たないお荷物のくせに、温情をくれた異母弟への恨めしさを募らせていた。あの頃の俺、マジでそんな暇あるなら働け。
兎にも角にも、そんな控えめに言ってクズまっしぐらだった俺。
あれ? なんかおかしい。むしろ俺が問題なんじゃと気づいた時には周りには誰もいない。時既に遅し。詰んだ。
気づかない方が幸せだった説を唱えるのも辞さない心境だった時、女神と運命の出会いを迎えた。
はじめましての方も、いつも読んで下さっている方も、ありがとうございます。
新シリーズ始めました。息抜きに他の物を書かないと全進行が止まる奇病を患っているようなのでご容赦下さい。
最初に仮でつけたタイトルは『ドキ☆漢女だらけの騎士団生活』だったことからお察し頂けると嬉しいのですが、そんな雰囲気の話です。流石にあれかなと思って変えました。
「まあ頑張れや」「バッッカw(息抜きになる)」などなど応援して頂ける場合は評価頂けると嬉しいです。よろしくおねがいします(みなさん最近だいたいそう書いてるので書いてみました)
※読んでくれる方が一時でも楽しければそれで充分嬉しいです