第10話「ポン先輩!」
わらわ、おそば屋で御馳走になるのじゃ。
タダかと思いきや、ポン太がデートを迫ってきおる。
わらわ、子供には興味なしじゃ。
これ、ポン太、お酒を渡さぬか!
しかし、デートは面倒くさいのう……なにか良い手はないものかの。
さて、コンと村おこしなのじゃ。
美貌のわらわのセクシーターンを楽しむがよい……
と、言いたいものじゃが、今日はおそば屋さんからスタートなのじゃ。
ツルツルのざるそばはうまいウマイ。
配達帰りに長老に呼び止められたが、
「ここのそばはいつもうまいのう」
わらわの隣ではポンが食っておる。
「コンちゃん本当においしそうだね」
「うむ、本当にウマウマなのじゃ」
最近は村にもいろいろ店が出来たが……
長老のおそばは飽きのこぬ味なのじゃ!
あの長老、飲んだくれに見えるが、なかなかの腕前かの。
今も奥でダラダラ飲んでおる。
おそばを終わったら、今度は一杯なのじゃ。
今日の配達はラッキーじゃの。
「コン姉、コン姉……」
「なんじゃ、ポン太」
うむ、長老はさっきから奥におる。
おそばを持ってきてくれたの、実はポン太じゃ。
「コン姉、新酒があるんですけど……」
「おお、新酒か、出すのじゃ!」
こやつの作る「ポン太のお酒」はなかなかなのじゃ。
真面目なヤツではあるが、それがいいのかも知らん。
ポン太、5合瓶を持ってじっと見ておるぞ。
「早く注がぬか」
「デートしてくれますか?」
「はぁ!」
「お酒注いだら、デートしてくれますか?」
「ぽ、ポン太、おぬし、お酒をダシにわらわとそんな事をしたいのかの?」
「だってコン姉全然相手にしてくれないし、逃げるし」
「なんじゃとー!」
「逃げるし」
「うう……」
ポン太め、全然注ぐ気ないようじゃ。
「お酒を出すのじゃ!」
酒瓶取ろうと……逃げよる。
「渡さぬかっ!」
酒瓶を取ろうと……ひょいと避けよる。
「ポン太、おぬしわらわの事が好きなのであろうがっ!」
「デートしてくれますか?」
「この卑怯者っ!」
「デートして」
くく……この男はっ!
子供こどもと思っておったが、わらわの好物をダシにしおって卑怯者!
ふふ、しかし所詮子供なのじゃ。
「クスン、ポン太なんか好かんのじゃ」
ふふ、女の武器「女の涙」なのじゃ。
ほれほれ、女を泣かせてよいものかの。
どうかのどうかの、わらわ、ポン太を嫌いになっちゃうのじゃ。
ポン太堪えられるかの?
「しょうがないですね」
ポン太、あきれ顔で酒瓶を置いたぞ。
即ゲットなのじゃ。
「わはは、いただいてしまえばこっちのものなのじゃ」
「まったくコン姉は……」
「ポン太、好きじゃぞ、おぬしのお酒が」
わらわ、5合瓶を抱いてウキウキなのじゃ。
「で、コンちゃん、デートしてあげるの?」
「何を言っておるのじゃ、ポン、何故わらわがデートなのじゃ」
「だってお酒もらったよね」
「もらったのじゃ」
「だったらデートでは?」
「何故?」
「約束しませんでした?」
「わらわが泣いたらポン太が折れたのじゃ」
「悪女~」
「ふふ、女キツネなのじゃ、いいのじゃ」
ポン太、怒っておるかの?
むむ、冷めた目でこっちを見ておる。
「ポン太、どうしたのかの」
「コン姉にこれだけは……って思っていたけど……」
「は?」
い、一冊のノートなのじゃ。
あれは名前を書いたら死ぬノートなんかではないのじゃ。
恐怖の「ツケ・ノート」なのじゃ!
「コン姉、ツケがたまっていますね」
「そそそそんなの知らんのじゃ!」
「たまってますね」
「そのノートを渡すのじゃっ!」
わらわが手を伸ばせば、ポン太ひょいと避けよる。
「ポン太はわらわをツケでおどすのかの!」
「デート……」
「そのノートでわらわを『モノ』にしようとするのかの! クスン!」
むむ「クスン」が効かぬ。
もうポン太に読まれておるようじゃの。
こうなったらしらばっくれて……
「ミコ姉に電話するかな……」
「まてーっ!」
「コン姉うるさいですよ? デート?」
「ここここの卑怯仔タヌキめ」
「お酒まきあげて卑怯言うかなぁ~」
「わらわは神ぞ神!」
「神さまがだますかなぁ」
「わらわ女キツネだから何でもありなのじゃ!」
「ミコ姉に電話しよっかな」
「待てーっ!」
わらわ、受話器を押さえて、
「むー! 何故そんないじわるするのじゃ!」
「何でお酒だまし取るんですか~」
「何が目的なのじゃ」
「デートして」
「卑怯者ー!」
「どっちが」
ポン太、余裕の顔をしておる。
く、くやしいのじゃ。
でも、あのノートが、ツケがバレたら、ミコが怒るっ!
なんとかせねばならんのじゃ。
「デートしてあげたら? お散歩するだけだよ」
ポンめ、言いおる。
わらわはそんな安い女ではないのじゃ。
「!」
わらわ、頭上に裸電球点灯なのじゃ。
「ポン先輩助けて!」
「は?」
「わらわ、あの仔タヌキ・ポン太に貞操の危機なのじゃ」
「やられちゃえばいいのに」
「ポン先輩助けてっ!」
ふふ、ポンには「ポン先輩」なのじゃ。
口では悪い事言っておるが、「先輩」聞くたびにしっぽがピクピクしておる。
「ポン先輩、助けてっ!」
「しょうがないなぁ~」
単純なヤツめ、まったくこれだからポンはかわいいのじゃ。
「これ、ポン太!」
「な、なんです、コン姉」
「わらわをモノにしたいのであれば、まずはこのポン先輩を倒すのじゃ」
「え!」
「おぬしがポン先輩を倒す事ができれば、わらわ、おぬしとデートするのじゃ」
「やっ……」
ポン太、言いかけて止まりおったぞ。
ポンが指をポキポキ鳴らしながら、
「ポン太、最近わたしの事、バカにしてない?」
なんだかポンの背後に暗黒オーラなのじゃ。
別に酒を飲ませたりしておらんがの。
「最初会った時はちゃんとしてたのに、最近わたしを見ると小バカにしてない?」
「そ、そんな事は……」
「いーや、絶対バカにしてる、許せない」
な、なんだかポン、こわい。
敵じゃがここはポン太にテレパシーじゃ。
『これ、ポン太!』
『うわ、何、頭の中で声っ!』
『テレパシーなのじゃ、早く戦うのじゃ』
『え? え! ええ?!』
『何故か知らぬが、ポンは本気なのじゃ!』
『えーっ!』
ポンの魔手がポン太に接近。
ポン太も印を結んでニンジャ姿に変身なのじゃ。
すぐにポン太の手から手裏剣発射。
でも、ポン、ササッと避けよる。
「わたしをバカにするなーっ!」
「うわっ!」
おお、ポンがポン太を捕まえおった。
押し倒して、足をつかまえて……
「ふふふ、脚を開けーっ!」
「ポン姉こわいっ!」
「さっさと開けーっ!」
「いいい嫌ーっ!」
「わたしをバカにした罰ですよ、ふふふ……脚を開くんです」
ポン、なんだかいやらしいのじゃ。
ポン太おびえておるでないか。
うわ、なんか無理やり脚を開かせておる。
抵抗するポン太。
邪悪な笑みのポン。
開かれたポン太の脚にポンのつま先が入っていくのじゃ。
「電気アンマーっ!」
「ふぎゃ!」
「どうだー!」
「うわーん!」
「ど・う・だっ!」
「死ぬーっ!」
「逝ってしまえーっ!」
ああ、ポンの土ふまずがポン太の股間をコツコツしておる。
ポン太身悶えして体をねじってのたうって……なんだかいやらしいのじゃ。
わらわ、ちょっとドキドキしてきたかの。
こ、これからどうなってしまうかの。
ポン太の泣き顔にキュンキュンなのじゃ。
い、いかん、漢らしいポンを見ると耳まで熱い。
あ、ポン太昇天かの。
ポンはまだ止めておらんのじゃ。
ポン太の男が終わってしまわんかの、あんなにコツコツしたら。
しかしわらわ、近付きたくないのじゃ。
なんだか巻き込まれたらやられてしまいそうなのじゃ。
お!
奥から長老の登場じゃ。
持っておる一升瓶でポンの頭を「ゴン」
ドキドキの惨事、終了なのじゃ。
ポン、こわい……でも、ちょっとドキドキなのじゃ。
今日はリビングでゴロゴロなのじゃ。
なに、ミコから洗濯物をたたむように言われておるのじゃ。
しかしの……
取り込んだばかりの洗濯物、フカフカで気持ち良いのじゃ。
わらわ、さっきから洗濯物に埋もれてぬくぬくなのじゃ。