第8話「プール授業」
うむ、今回もわらわのターンじゃ。
おお、レッドとみどり、水着かの。
そうかそうか、プール授業じゃな。
水遊び、いいのう。
ではでは、わらわの水着姿をおひろめといくかの。
「コン姉コン姉!」
おお、レッドかの、朝から何用じゃ。
「コン姉、みてみて!」
「何事かの?」
ふむ、見れば紺色のパンツかの?
おお、スクール水着じゃの。
「レッド、今日は水泳かの」
「はいはーい!」
わらわ、前から思うのじゃ。
ここは山の中。
立派な川も流れておる。
なのに学校にはプールがあるのじゃ。
なんでかの。
「ちょっとちょっと!」
「おお、みどり、何事かの?」
「似合ってるかしら!」
スク水を体にあてて、クネクネしておる。
こやつもプールが楽しみなようじゃのう。
「ほれ、はしゃぐのもよいが、忘れ物のないようにな」
「はーい」
二人とも返事はよいが、ちと不安かのう。
「コンちゃん、準備はいい?」
ポンの声じゃ……わらわ、配達に行く気はないのじゃ。
「お、ポン、何の準備かの」
「配達に行くんですよ」
「えー!」
「なにが『えー!』ですか……はい、バスケット」
「むむむ……今日は老人ホームかの」
「わたしが学校です」
「そっちの方が楽な気がするのじゃ」
「どっちも変わりませんよ!」
ポンの手が伸びてきて、わらわの腕をつねるのじゃ。
「痛いではないか!」
「今日は配達だけじゃないんですよ!」
「?」
「聞いてないんですか?」
「うむ」
「今日はプール授業を一緒に受けるんです」
「はぁ?」
「本当に話、聞いてなかったんですね」
「本当に初耳なのじゃ」
「昨日、お店で村長さん話してたでしょ!」
「寝てた……」
「バカ」
ポンにバカと言われるとムカつくのう。
「ともかく、今日はプール授業一緒に受けるんですよ!」
「ふむ……まぁ、たまには水遊びもよいかのう」
「コンちゃん、遊ぶ事しか考えていませんね」
「そう言うポンはどうするつもりじゃ?」
「えへへ……わたしは監視係がんばります」
「つまらなくないかの?」
「高いイスに座って、『コラー』とか言うんです」
「ちょっと楽しそうかのう」
で、プールなのじゃ。
今は女子更衣室なのじゃ。
「ちょっとちょっと!」
「おお、何じゃ、みどり」
「似合ってる?」
さっきも言っておらんかったかの。
今度はちゃんと着て、クルクル回っておる。
「どう? どう!」
「うむうむ、似合っておる、はしゃぐでない、転ぶぞ」
「わかってるわよー!」
ツンツンして、行ってしまいおった。
ポンもスク水で登場じゃ。
「みどり、プール楽しみだったみたいですね」
「まぁ、子供ゆえ、のう」
「ねぇねぇ、コンちゃん」
「なんじゃ、ポン」
「似合ってる? かわいい?」
「はぁ?」
「ねぇねぇ!」
ポンがスク水でクルクル回っておる。
「わらわにどう言って欲しいのじゃ!」
「むー、わたしですね、どら焼き級なんですよ」
「自分で言うのう」
「しょうがないですよ、設定じゃ『中学生くらい』なんですから」
「それで……どうしたのじゃ」
「胸はナシめだけど……結構かわいいと思ってるんですよ」
「……」
「コンちゃん、どう思います」
め、めんどうくさっ!
こーゆー時は持ち上げておくに限るのじゃ。
「はいはい、かわいいカワイイ」
「棒読み~」
「これ、チョップはよすのじゃ、すぐに手が出るから凶暴呼ばわりされるのじゃ」
「そっかなー……コンちゃん水着は?」
「……そんなのないのじゃ」
「忘れたの?」
「いや、わらわ、水着なぞ持っておらぬし」
「さっき水遊びって言ってたのに~」
「まぁ、わらわ、別段水着なぞなくてもへっちゃらなのじゃ」
そうなのじゃ、わらわは「術」で一発解決。
指をパチンと鳴らせば、
「ほれ、水着なのじゃ」
「あー、いつものコスチュームチェンジ……」
な、なんじゃ、ポンのヤツ、ジト目で見おる。
「ちょっとその水着はダメじゃないですか?」
「はぁ?」
「おへそが見えてますよっ!」
「ビキニを着ておるだけじゃ」
「布が……面積が少なくないですか?」
お、ポン、手招きで千代を呼びおった。
「ねぇねぇ、千代ちゃん、どう思う、エッチじゃないですか?」
「うわ……コンちゃん、すごくきれい!」
「うむ、千代はわかっておるようじゃの」
「本当……雑誌のモデルさんみたい」
「ふふ、もっと言うのじゃ、綺麗とか美しいとか」
ほめられるとうれしいのう。
千代はよい子じゃ。
「千代ちゃん、よく見てください、これは女キツネですよ」
「でも綺麗だし」
「学校のプールはスク水だけなんですぅ!」
「でも、コンちゃん大人だし」
「千代ちゃん、どっちの味方なんですか」
「え……そんな話なの?」
ポンはよくわからん事で言いがかりをつけるのう。
「これ、二人ともよすのじゃ」
チャイムも鳴っておる。
「ほれ、授業じゃろう、早く行くのじゃ」
わらわ、ポンと千代の手を引いてプールサイドに出るのじゃ。
おお、子供ら、楽しそうに遊んでおる。
子供は水遊びが好きじゃからの。
わらわも大好きなのじゃ。
「……」
およ?
何事じゃ?
静かになってしもうたぞ?
みんなわらわを見ておる……かの?
おお、一人ダッシュしておるのがおる。
プールサイドで走ってはいかんのではないかの。
「ちょっとコンんちゃんコンちゃん!」
「おお、村長ではないかの」
「な、なんて水着なの……すごい綺麗」
「ほれ、もっと言うのじゃ、綺麗と言うのじゃ」
「じゃなくて……学校のプールでその水着はちょっと」
すかさずポンが言うのじゃ。
「村長さんもそう思いますよね、淫らですよね!」
「ま、まぁ……でも、コンちゃん、すごい綺麗ね」
「村長さん、そんな事言ったらコンちゃんつけあがりますっ!」
「でも……ここまで綺麗だとちょっと……」
「わらわ、神ゆえ、綺麗なのは当たり前なのじゃ」
ふふ、反撃するのじゃ。
「どこかの豆タヌキと一緒にされてはたまらんのじゃ」
「なんですってー!」
「ぺったん娘はスク水でちゃぷちゃぷしておれ」
「この女キツネっ!」
「その通りなのじゃ」
「けだものっ!」
「その通りなのじゃ」
「きーっ!」
今度は髭教師の吉田が来おったぞ。
めんどうくさそうな顔をして、頭を掻いておる。
「あー、パン屋の娘には子供の世話をしてもらいたいんだが……」
髭教師、わらわを上から下、下から上へと舐めるように見てから、
「グラビアでよく見る格好だな~」
「ふむ、モデルのようであろう」
「まぁ、コンちゃんは大人だしな~」
髭教師、頭をポリポリ掻きながら、
「別に色気はいらないから、スク水で頼むわ」
「むむ、髭男にはわらわの美貌がわからんかの?」
「ミコちゃんに言うよ」
どこでその台詞を覚えたか知らんが……ミコに継げ口されてはたまらん!
「うむ、しかたない……では!」
パチンと指を鳴らせば、あっという間にスク水なのじゃ。
「ほれ、これでよいかの」
「……」
なんじゃ……
言われた通りにスク水にしたのじゃ。
それなのに……みなの視線がさらに熱い気がするのじゃ。
どうしたというかの。
ポンも村長も顔を赤らめておる。
プールの男共もじゃ。
しかし、髭教師だけはあきれておる。
『これ、髭教師、わらわの格好は変かの』
『おお! 何だ! 頭に声が!』
『わらわ、神ゆえ、テレパシーなのじゃ!』
『すご……』
『わらわの格好、変かの……言われた通りにしたのじゃ』
髭教師、まだ笑っておる。
『コンちゃん、すぐに元に戻って』
『お、おお……』
『スク水でその胸はかえってエロ』
「~!」
きゅ、急に恥ずかしくなってしまったのじゃ。
ふう、今回もわらわが主役の「コンと村おこし」なのじゃ。
「コン姉~、すいぞくかんたのしかったー!」
「ふむふむ、そうかの」
「ワ、ワタシもすごく楽しかったわよっ!」
「そうかの、そうかの」