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第2話「お酒は二十歳になってから」

「コンちゃん、今日はビールでいい?」

 お、ミコじゃ、

「うむ、ビールでよい、冷えておるのであろうな」

 こやつとは昔いろいろあったが、今では仲良しじゃ。

 わらわの思っておる事もよくわかっておるようじゃ。


 うむ、今回はわらわが主役じゃ。

 ここのところ、ポンはたまにわらわに噛み付く。

 あやつは野良でわらわは神というのに、おそれを知らぬ。

 しかし、ここではあやつが先輩故に、相手をしてやらねばならんのう。

「コンちゃん、今日はビールでいい?」

 お、ミコじゃ、

「うむ、ビールでよい、冷えておるのであろうな」

 こやつとは昔いろいろあったが、今では仲良しじゃ。

 わらわの思っておる事もよくわかっておるようじゃ。

「はい、どーぞ」

「うむ、よく冷えておる」

 缶ビール、昔はなかった味じゃ。

 この泡といい、冷蔵庫で冷えているところといい、なかなかなのじゃ。

「ビールは美味いのう」

「そうね……って、コンちゃんなんでも好きじゃない」

「まぁ、酒はのう」

 ミコと一緒に晩酌。

 するとポンがのこのこ出て来おった。

「あ、二人とも、なにしてんの?」

「子供はさっさと寝るのじゃ」

「む……コンちゃんわたしを避けてるね」

「その通りじゃ」

 ポンめ、わざとわらわの隣に座りよった。

 すぐに缶ビールを見て、

「あ、二人だけジュース!」

「ジュースではない、ビールじゃ」

「えー、本当かなー!」

「大人の飲み物なのじゃ」

「えー、本当かなー!」

 む、わらわのビールをクンクンしおる。

 ポンがそんな事をすると、ビールがまずくなりそうじゃ。

「やめぬか、匂いをかぐのは」

「匂いくらい、いいじゃない」

「大人の飲み物と言うておろうが」

「変わった匂いですね」

「じゃろうが、ジュースではなかろう」

「でもでも、炭酸ですね」

「……」

「わたし、炭酸のシュワっとしたのは大好き」

 むう、この仔タヌキ、ビールを飲みたそうにしておる。

『ねえ、コンちゃん、まずいんじゃないの』

 お、ミコめ、テレパシーじゃ。

『なにを言うかの?』

『ポンちゃん興味津々』

『うむ、仔タヌキゆえに、そんなところじゃろう』

『コンちゃんどうするるつもり?』

『それは、ビールは大人の飲み物故に飲ませるわけには……』

 そうじゃ、飲ませてみればいいのじゃ。

 どうせ大人の味はポンにはわからぬ。

「ポン、それほどまでに飲みたいのかの?」

「え、いいの!」

 途端にミコの肘がわらわをつついてくる。

『コンちゃんっ!』

『どうせポンにはわからぬ』

『作品が十八禁になっちゃうから』

『こやつはタヌキ故に、問題ない』

 わらわが缶ビールを渡すと、ポンめ嬉しそうに口を付けおった。

 何度か喉が鳴って飲むのをやめて、嫌そうな顔をしておる。

「ナニコレー!」

「だから言うたであろう」

「苦い……こんなの飲んでたの、変なの」

「大人になったら、この味がわかるんじゃ」

「じゃ、わたし、大人にならないでいい」

「店長と結婚できんぞ」

「う……」

 ポンめ、黙り込んでしもうた。

 お、なにを考えておるのじゃ。

 わらわのビール、一気に全部じゃ。

「ぷは、全部飲みました、これで大人の女になりましたか?」

「ポン……おぬしなかなかやるのう」

「でも、もっと別のお酒がいい……ビール苦い」

「ふむ……」

 では、甘い酒でもふるまうとするか。

 たしか梅酒の一つもあったろう。

『ちょ……コンちゃんまだ飲ませるの!』

『ミコ、心配せんでもよい、あやつはタヌキ故に発禁にはならぬ』

『でも、仔タヌキなんだし』

『おぬしも、あやつがどうなるか、興味ないかの?』

「それは見たいわね」

 最後は声になっておる。

 わらわが梅酒、ミコがグラスに氷を持って、

「ほれ、ポン、これは甘いぞ」

「これを飲んだら大人になるんですか?」

「大人の飲み物じゃからのう」

「いただきま~す」

 ポンめ、ちょっと回っておるようじゃ。

 梅酒、ちびりちびりやったら顔色が変わりおる。

「これ、甘~い!」

 嬉しそうにゴクゴク飲みはじめおった。

 あっという間に持ってきた分を全部飲んでしもうた。

「うふふ、おうちが回ってま~す」

 ミコが心配そうな顔をして、

「ねぇ、コンちゃん、いいのかしら」

「まぁ、最初はわからず飲むから、こんなものじゃろう」

「死んだりしないわよね?」

「うむ、ポンが死ねばわらわがここで一番じゃ」

「怒るわよ」

 お、噂の主が立ち上がった。

「えいっ!」

「きゃっ!」

「ミコちゃ~ん!」

 おお、ポン、いきなりミコを押し倒しよった。

「むちゅーん」

「むぐ……」

 おお、有無を言わさずキスじゃ。

 なんだか嫌な予感がする。

 あ……ミコが落ちた。

 これは本格的にピンチじゃ。

「コンちゃ~ん!」

「どわ、来るなっ!」

「コンちゃん大好き~」

「ややややめやめっ!」

「むちゅーん」

「むー!」

 こ、こやつのキスはこの間以来じゃ。

 う、うわ、舌を入れてきおった。

 しっぽもつかまれてしまった。

「えへへ、コンちゃんのしっぽ、つかまえた~」

「やめぬか、わらわが悪かった」

「別にコンちゃん全然悪くないよ~」

「も、もうゆるしてっ!」

「弱気なコンちゃんかわいい~」

「し、しっぽはやめるのじゃ」

「むう……ふさふさで気持ちいいのに」

 笑っていたポンが真顔になった。

 さらに嫌な予感がする。

 ポンは何故か自分のしっぽを持っておる。

「ねぇねぇ、わたしのしっぽ、かわいい?」

 どうでも……しかしここで気持ちを逆撫でしてはどーなるかわからん。

「う、うむ、かわいい、かわいいぞ!」

「きゃー、コンちゃんに褒められた!」

「い、いいから放すのじゃ」

「コンちゃんがわたしのしっぽをお気に入りなら……」

「お気に入りなら?」

「わたしのしっぽ、プレゼントしちゃう」

「えっ!」

「わたしのしっぽで、気持ちよくなってもらう!」

「えっ! えっ!」

「ふふふ、太くてざらざらですよ」

 うわ、今やエロポン顔になっておる。

 ちょ、しっぽを押し付けるでない。

 こ、こそばゆいではないかっ!

 ま、まさか本気で挿れるつもりでなかろうな?

 う……なんか「ゴン」って音がしたぞ。

 目を回してしまうポン。

 そこには酒瓶を持ったミコが立っておった。

「やっぱりポンちゃんにお酒は禁止」

「う、うむ……」

 ミコに助けてもらって、今回は無事じゃったぞ。


「頭痛い~」

 レジでポンは伸びておる。

 客がおらんからよいようなものの……

 お、今日はミコがお茶を持ってきた。

「はい、コンちゃん」

「うむ、今日はポンが二日酔いじゃからのう」

「コンちゃんがあんなに飲ませるからよ」

「ポンに飲ませたらいかんのう」

「でも……」

 ミコ、なぜだか黙り込んでしもうた。

 ポンの方をじっと見て、生唾飲んでおる。

「どうしたのじゃ、ミコ」

「ねぇ、コンちゃん、昨日の事なんだけど……」

「うむ?」

「ポンちゃんのしっぽ、どうだった?」

「!!」

「太くてすごそうなんだけど……」

 わらわとミコ、ポンのしっぽを見ながら耳まで真っ赤になってしもうた。


 いつもはどら焼き級の仔タヌキが主役ゆえにつまらぬが、お色気満載なのじゃよ。

「では、今夜は麻雀をするのじゃ」

「了解であります」

 うむ、シロは返事がよいのう。

「あら、面白そうね」


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