第14話「デートなのじゃ」
「ふふふ、もう逃げられんのじゃ、くくく」
「コンちゃん、甘いな、甘すぎる」
「なんじゃと?」
「コンちゃん、今まで俺に迫ってなかったから、鈍くなってるよ」
「なんじゃとー!」
ふう、久しぶりのわらわのターン。
先日のポンとレッドの結婚式、お笑いだったのじゃ。
大体レッドは子供であろう、結婚、最初からおかしかろう。
しかし、ウエディングドレスのポン、なかなかだったのじゃ。
うかうかしておると、店長、陥落するやもしれぬ。
ここは急いで店長と契りを結ぶのみじゃ。
店長を探すぞ、店長を、どこにおるかの?
それ、ゴット・サーチで探すのじゃ。
光球が飛んで、店長のおる方へ飛んで行くのを追うのじゃ。
わらわ、空を飛んで様子を見守っておれば、店長は学校の方から帰ってくるところじゃ。
今日はめずらしく配達だったのう。
店長、のこのこ一人で帰宅しておる。
急降下でゲットなのじゃ。
「うわ、なんだっ!」
「ふふふ、店長、大人しくするのじゃ」
「こここコンちゃん!」
「暴れたら落ちて死ぬのじゃ」
「ななななにをするー!」
「ふふ、わらわと結婚するのじゃ」
「ななななんでー!」
「ポンとレッドの結婚式を見て思ったのじゃ」
「……」
「ふふふ、もう逃げられんのじゃ、くくく」
「コンちゃん、甘いな、甘すぎる」
「なんじゃと?」
「コンちゃん、今まで俺に迫ってなかったから、鈍くなってるよ」
「なんじゃとー!」
「ポンちゃんの方が手ごわいよ、うん」
「しかし店長、この状態から逃れるかの?」
「試してみるかい?」
店長、不敵な笑みを浮かべておる。
わらわ、店長を引き寄せて、見ておるぞ。
「それ、空中結婚式じゃ、契りの接吻なのじゃ」
「コンちゃん、接吻とは古風だね」
「なんでもよいのじゃ、レッドに言わせればキッスなのじゃ」
それ、接吻じゃ、キスじゃ、むちゅーん。
接吻したはずなのに!
キスしたはずなのに!
はずかしいから、「チュッ」って感じなのに!
なぜかときめかん!
目を見開けば、そこにはポンの顔のどアップなのじゃ。
「むおっ! 何故ポンなのじゃ!」
「ちょ、放さないで! 落ちちゃう!」
「おお! すまぬすまぬ!」
「なんでいきなりキスするかな、気持ち悪い!」
「わ、わらわだって店長とキスしておったのじゃ」
「あんですってー!」
「怒っておる場合ではないのじゃ、しかし何故店長がポンなのじゃ」
「あー、もう、コンちゃんは店長さんとキスしようとしていたと?」
「そうなのじゃ」
「そしたら、わたしに変わっちゃっていたと?」
「そうなのじゃ」
「店長さんが『代わり身の術』使うの知ってるよね」
「はぁ!」
「店長さんの代わり身の術、すごいらしいよ」
「今のは店長の術というかの!」
「そうだよ」
「す、すごいのじゃ、普通は近くの丸太なぞに代わり身するのじゃ」
「店長さんの術は、ともかくすごいの」
「確かにそうなのじゃ」
「教えたポン太が言うくらいなんだから、きっとニンジャ級なんだよ」
「しかしの、そんな術を覚えられたら、逃げられまくりではないかの」
「そこはそれ、作戦を考えるんですよ」
「ふむう」
「で、コンちゃん、店長さんをどーするつもりだったんですか?」
「契りの接吻、そしてデートなのじゃ」
「契り……接吻……なに時代ですか」
「わらわ神ゆえ、ご長寿なのじゃ」
「死なないわけですね……で、デートはどこに行くつもりでした?」
「ああん、デート、逢引、そうじゃの、そこまでは考えておらんかった」
「結構いいかげんですね、神さまは」
「店長確保も思いつきだったでの」
「ダメダメです」
「ふむー、今、思えば、即既成事実かの」
「既成事実……ご長寿なんですよね」
「わらわは現代を生きておるのじゃ」
「で、どこで既成事実ですか、ええ」
「山の中じゃ、どこでもいいのじゃ」
「虫さされしまくりですよ」
「そこはゴット・シールドなのじゃ」
「うわ、便利ですね、ゴット・シールド」
「ふふ、どうじゃ、すごかろう」
「あーあ、コンちゃんも所詮ケダモノ、がっかりです」
「なんじゃとー!」
「もうちょっと、ロマンチックな、ムーディーな展開を期待していました」
「むう、いきなり既成事実はダメかの?」
「それはわたしの手段ですよ、コンちゃん神さまですよね、まったくモウ」
「なんだかスマン気になってきたのう」
「そうですよ、もうちょっとロマンチックなデートを期待していました」
「しかし、ここは田舎で山の中じゃ」
「お! コンちゃん、裸電球点灯しましたよ」
「ふふ、駄菓子屋でお茶はどーかの、楽しかろう」
「うわ、駄菓子屋、確かに『パン屋』『そば屋』『ラーメン屋』『駄菓子屋』くらいですけど」
「駄菓子屋、ツケもきくでの」
「あとでミコちゃんに殺されますよ」
「うう、そこが問題なのじゃ」
「コンちゃんは知らないんですね」
「うん?」
「遊園地、知らないんですか?」
「遊園地、そんなものは麓に行けばいくらでも……」
「ダムの跡地に飛んでください、遊園地があるんですよ」
「!!」
なんじゃ、その遊園地とは!
わらわ知らなんだぞ!
「これ、ポン、遊園地の事、隠しておらんかの?」
「言ってないだけですよ、まったくモウ」
「そんな楽しげなモノがあるとは!」
「仕事しないからですよ、現場事務所の配達に行けば見えますよ」
「わらわ、泥臭いところには行きたくないのじゃ」
「そのワガママがいけないんですよ」
おお、遊園地が見えてきたのじゃ!
本当にあったのじゃ!
観覧車にコーヒーカップ、メリーゴーランドもあるのじゃ。
「きゃーん! 楽しそうなのじゃ!」
わらわ、遊園地に着地。
しかし「シーン」としておる、動いておらぬ。
「これ、ポン、動いておらぬ、まだ日没前というのに」
「職員さんに動かしてもらうんですよ」
ポンが言うと、プレハブから職員とやらが出てきたのじゃ。
「ポンちゃん、いらっしゃい、そっちは?」
「コンちゃんですよ、知らないんですか?」
「あ、知ってる、パン屋でグダグダしている店員さんだ」
こやつ、言いおるな、わらわ、ゴット・ソードを出すのじゃ。
ブウンと音を立てて、光る剣が登場なのじゃ。
「これ、おぬし、今、わらわをバカにせんかったかの?」
「うわ、こわ、本当に神さまなんだ」
「その通りなのじゃ、わらわは遊びたいのじゃ」
「えー、お金持ってるの?」
「わらわは神、供するのじゃ、遊園地」
「……」
「死にたいかの?」
「俺が死んだら、誰が機械を操作するかな?」
「痛くされたいかの?」
「こわ……」
職員、手をひらひらさせて、
「ツケにしとくから」
この村の人間は「供する」というのを知らんらしい。
ま、このさい、動かしてくれればいいがの。
「わらわ、観覧車に乗りたいのじゃ!」
「今、飛んで来てなかった?」
「それとこれとは別なのじゃ!」
観覧車、高いたかい!
ゆっくりゆらゆら、超楽しいのじゃ!
「楽しいのじゃ!」
「コンちゃん、さっきもっと高く飛んでましたよね?」
「ポンはわかっておらんのう、これに乗るのは別なのじゃ」
「まぁ、確かに楽しいですけど……コンちゃんと一緒じゃあ」
「ほれ、ほれ、ダンプが小さいのじゃ」
「ほんとう、コンちゃん子供ですね」
「ポンはつまらんのう、楽しんでおるのかの?」
「はいはい、こう見ると、観覧車、高いですね、本当、ダンプ小さい」
「じゃろう、じゃろう」
「でも、コンちゃんとデートはつまんない」
「ポン、本当につまらんヤツじゃのう、楽しまぬか」
「コンちゃん女同士で楽しいですか?」
「それはそれじゃ、遊園地楽しいのじゃ!」
「こ・ど・も」
「無粋なヤツなのじゃ」
「ブスですと?」
「無粋と言うたのじゃ、まったくつまらんヤツなのじゃ」
「コンちゃんが子供なんですよ、遊園地くらいで」
「ふん、楽しいものは楽しいのじゃ」
「あーあ、店長さんとだったら、よかったのになぁ」
「それはこっちの台詞なのじゃ、あーあ、店長が逃げねば」
「ねぇねぇ、コンちゃん、なにか手はないですか?」
「手? なんの事なのじゃ?」
「このままでは店長さんの代わり身の術で逃げられっぱなしです」
「むう、確かにそうなのじゃ」
「コンちゃん、神さまなんだから、代わり身の術を封印する方法とかないんですか」
「変わり身の術は神の御業ではないのじゃ、あれは修行の賜物なのじゃ」
「店長さん、わたし達から逃げるために、どんだけ修行したんでしょう?」
「たしかにのう……しかしの、逃げられると追いたくなるものなのじゃ」
「あ、わかる、それにむかつくし!」
「じゃろう、じゃろう」
「で、コンちゃん、なにか手はないでしょうか?」
「そうじゃのう」
あの代わり身の術を封じるのは難しいのじゃ。
どこでどう修行したか知らんが、近くにおらんのを「代わり身」するからの。
「よい手が思い浮かばぬ」
「コンちゃんでもダメな事あるんですね」
「そこでじゃ」
「?」
「店長は代わり身の術で逃げを打つ」
「ですね」
「こちらは『ゴッド・召喚』で出るのじゃ」
「でした! 召喚すればいいんですよ! それですよ、それ!」
「しかし、そこでまた「代わり身の術」なのじゃ」
「ですよ、どーするんですか?」
「ふふ、しかし、店長も「すぐ」には術を発動できんのじゃ」
「それは……そうですね」
「そこで、今、わらわとおぬしで、店長をしっかとつかまえ、接吻するのじゃ、モノにするのじゃ」
「まさに、奇襲ですね」
「その通りなのじゃ」
わらわ、ポンに目で合図。
ポンもうなずいて返してくるのじゃ。
「では、ゴッド・召喚!」
わらわの術が発動。
せまいゴンドラの中央に光珠が生まれ、そして店長が現れるのじゃ。
「それ、ゲットじゃ」
「逃がしませんよ~」
わらわとポンで店長を板ばさみじゃ。
「嬲」の逆で女・男・女なのじゃ。
「「!!」」
わらわとポンの体が動かぬ。
すぐさま接吻を、キスを、キッスをと思ったのじゃ。
店長は逃げられぬ、その刹那を狙ってなのじゃ。
しかし、わらわとポンの体が「止められた」のじゃ。
店長の右手がわらわの頭を!
店長の左手がポンの頭を!
しっかと捉え、そして止めておるのじゃ。
店長、引きつった笑みで、
「ここここれが召喚か! みんなが迷惑って言ってた術か!」
「ふふ、店長、代わり身もすぐには発動できまい」
「そうだ、逃げないと!」
気付いたようじゃの。
「コンちゃん、動けないよ!」
こちらもポンの言う通りなのじゃ。
しかし、今の態勢、あとは「力」で押し切るだけなのじゃ。
「ゴッド、パワー!」
わらわと、そしてポンにパワーがみなぎるのじゃ。
それ、押さえておる店長の腕力など、蹴散らすのじゃ。
「「チュッ!」」
そーれ、接吻、キス、決まったのじゃ。
「コンお姉さま、うれしい!」
「ひっ!」
「それ、お返しのキッスです!」
「むー!」
代わり身で現れたのは「たまお」
なんという替え玉かの。
「コンお姉さまとの距離、ゼロセンチメートル、逃がしません、チュー」
「むー!」
たまお、なんたる力か!
逃げられん!
されるがままなのじゃ!
こら、そのようなところに手を入れるでないっ!
ななななにをするかの!
ぽ、ポン、助けぬか!
な、なんと、ポンは座って景色を眺めておる!
「ポン、助けんか!」
「えー! わたしはどーでもいいし!」
「タスケテ、先輩、ポン先輩」
「たまおちゃん力強いからヤだよ、怪我したくないし」
「ポンタスケテ、タスケテポンさま!」
「ちゅー」
「むー!」
わ、わらわ、たまおにこのままやられてしまうのかの!
お、おぞましいのじゃ!
ポン先輩たすけて、おねがい!
くっ! 最終回というのに、わらわ残念無双なのじゃ!
しかしの、皆の「いいね」で連載再開なのじゃ!
いいかの、押すのじゃ!
そして「コン村」が「ポン村」にとってかわるのじゃ!
わらわの時代到来のその日までなのじゃ!