第1話「いたずらするのじゃ」
今回はわらわが主役じゃ。
看板も「ポン村」ではないのじゃ。
しかし、どうしたものかの。
主役になったものの、こう「ゆるゆる」な話をもらってものう。
うむ、こう、いつにない事をせんといかんな。
「さて、どうしたものかの」
今回はわらわが主役じゃ。
看板も「ポン村」ではないのじゃ。
しかし、どうしたものかの。
主役になったものの、こう「ゆるゆる」な話をもらってものう。
うむ、こう、いつにない事をせんといかんな。
「……」
見れば隣でポンが眠っておる。
夜に店長を攻めないでどうする!
しかし仔タヌキ故にしかたないかのう。
お!
良い考えが浮かんだぞ。
ポンのヤツをからかってやるのじゃ。
こう、五円玉に糸を通しておいて、
「これ、ポン、起きぬか!」
「むー!」
「ほれ!」
「コンちゃんなんですか~」
「ほれ、これを見るのじゃ」
「もう~」
「ほーれ」
五円玉を揺らすと……
ポンめ、つられて体を揺らしよる……
そろそろ暗示をかけるかの……
「おぬしはだんだん眠くな~る」
「それなら起こさないで~」
「今、目の前におるのは店長じゃ」
「ほえ? 店長さん?」
さて、催眠術にかかったかのう?
ポンめ、黙り込んでしまいおる。
まさか眠ってしまったんではなかろうな?
「ふえ、店長さん、こんな夜になんです?」
おお、かかったようじゃ。
ふふん、所詮は野生のタヌキ、こんなものよ。
さて、もてあそんでやるかの。
こう、いつもの「ポン村」ではお色気が足りんからのう。
ここからは大人の世界じゃ。
「ポン……かわいいよ!」
「ふえ、店長さん」
「ポン……君が欲しいっ!」
「ええっ!」
「ポン……いつも君だけを見ていたっ!」
あー、歯が浮くのう。
でも、ポンのヤツ、急にもじもじし始めよった。
そうじゃ、こやつ、捨ててある本で勉強済みじゃ。
この間「まだ」って言っておったのう。
くくく!
では、初めてをもてあそ……
「店長さんっ!」
どわっ!
いきなり抱きつくなっ!
「むー!」
わわわっ!
いきなりキスかっ!
「店長さん好きっ!」
「ややややめいっ!」
ふう、やっとキスから解放された。
……って、こら、ポン、なにをやっておるっ!
パジャマのボタンをなんで外すのじゃっ!
自分から脱ぐのかこの仔タヌキは。
「店長さんに、初めてをあげますっ!」
「あー、こら……」
「わたし、決めてたんですっ!」
「う、うわ、どーやったら催眠術解けるんじゃ」
「わたし、勉強してるんです」
ち、近寄るな……
う、うわ、抱きつくな……
や、やめ、ひっつくな……
「男の人は、おっぱい星人ですよね」
やーめーろー!
抱きつくなー!
「わたしのおっぱい、どら焼き級でごめんなさい」
ちょ、ちょっと!
こら、しがみつくでない!
わ、胸を顔に押し付けるな!
い、息かできんっ!
こ、こんな標高の低い胸で窒息するのかっ!
「わたし、恥ずかしいけど、我慢しますっ!」
ど、どわっ!
脚を絡めるでないっ!
に、逃げられんっ!
「店長さんの息が、くすぐったい!」
こ、こっちは窒息寸前じゃっ!
な、なんというバカ力!
さ、さすが野良タヌキという事か?
こ、これはもしかして、なにかの寝技とか!
「店長さん、強く、強く抱いてっ!」
「むー!」
「背中が、背中が折れるくらいっ!」
「ぬー!」
なにが背中が折れるくらいじゃ!
こっちの方が首がへし折られそうじゃ!
おお……腕の力が弱くなったぞ。
今のうちに逃げるのじゃ。
……って、両手で頭をつかまれたぞ。
「むちゅーん!」
「ぶっ!」
どわっ!
またキスかっ!
し、舌を入れるなっ!
ああっ、もう、舌を絡めるなーっ!
「店長さん、もっと!」
「も、もうやめるのじゃ!」
「わたし、痛くても我慢するから!」
「わらわが悪かったから、目を覚ましてくれ!」
「店長さんのしっぽを、わたしの中に入れてーっ!」
「え!」
ちょ、ちょっと……
今までにない、嫌~な予感じゃ。
「店長さんのしっぽ」をどうするつもりかの?
「は、早く入れてー!」
うわ、しっぽつかまれた!
ひ、ひっぱるな!
も、もしかしてわざとやっておらぬか?
「店長のしっぽ」ってなによ!
ええっ! ポンよ!
「店長さーんっ!」
ぎゃっ!
痛いっ!
しっぽちぎれるっ!
は、放してポン!
ポンちゃんおねがい!
おねがいポンさま!
ポン先輩もうゆるして~!
ふう、昨晩は大事じゃったわ。
思い出すのもおそろしい。
こうしてまた店内でお茶をしているのが奇跡じゃ。
むー、首筋が痛い……ポンのバカ力め。
ふむ、まだお茶がないのう、
「ポン、お茶がまだじゃが」
お、すぐさまやってきたか。
言われる前に茶くらい出さぬか。
「はい」
「!!」
ポンのやつ、湯のみを乱暴に置きよった。
ちょっとこぼれておるではないかっ。
「コンちゃん昨日の夜、わたしにいたずらした」
「知らん」
「わたし、裸にされてたもん」
「おぬしが勝手に脱いだのじゃ」
「わーん、コンちゃんのバカ馬鹿ばか!」
むー、そんなにポカポカ叩くな、うっとおしい。
「だいたい抱きついてキスしてきたのはポンの方ではないか」
「えー! コンちゃんとキスしたの!」
おお、ポンめ、今度は滝のような涙じゃ。
「うえっ……わたしのファーストキッスは店長さんの筈だったのに!」
「寝ぼけたおぬしが勝手に……」
「コンちゃんのケダモノ!」
まぁ、一応キツネ故、そうかのう。
「コンちゃんの女狐!」
まぁ、確かに女狐よのう。
「わーん!」
泣くなモウ。
お、店長が来た、助け舟の一つも出してもらうか。
「店長さん、わたしのファーストキッス、コンちゃんに盗られた~」
う、ポンに先を越された。
「コンちゃん、ポンちゃんになにしてんの?」
「うう……ポンが寝ぼけてたんじゃ」
とりあえず言い分けして……って、店長、なんでひも付き五円玉を!
す、すると全ては筒抜けなのかの?
「そ、それは、ポンの本性を明かすべく」
「ふーん」
む、店長の目が冷たい。
これを跳ね返すにはポンに罪を着せるしか!
「そこのタヌキ娘は『店長さんのしっぽを入れて』とか言っておった」
ふ、店長どん引きじゃ。
ポンは耳まで真っ赤ときた。
「コンちゃんのバカーっ!」
どわ、叩くな、痛いっ!
「コンちゃんなんか嫌いっ!」
「ポンなんか好かん」
おおっ! なんじゃ、店長、こわい目をして。
「二人とも!」
ぎゃっ! しっぽをつかむでない。
まだ昨日ので痛いのじゃ。
「今夜、外でお休みね」
えー!
夜、店のドアの前じゃ。
今宵の寝床はダンボール。
「反省」なんて書かれておる、まったく。
隣には膝を抱えてポンが座っておる。
ケンカはしたが、今は離れられんのじゃ。
寒いから、体をひっつけてないとな。
「むー、寒~い」
「ポン、離れるでない、冷える」
「そ、そうだね」
とりあえず、仲直りじゃ。
「コンちゃ~ん!」
「どわ、来るなっ!」
「コンちゃん大好き~」
「ややややめやめっ!」
「むちゅーん」