第88話 毒々しい会話
「次は、採集された希少素材、っと」
魔王城の一室に、山菜採りのエウロ婆さんが集めてきた薬草毒草や、傭兵団の皆さんが狩ってきた獣や魔物の素材が並べられている。
食用の肉は別の場所に置かれ、こちらには希少なものを選別してあるのだ。
「おお、これは良い毒だよ。こっちも麻痺薬になるし、希少な薬草も結構あるね」
そういえば専門の薬師はまだいない。
簡単な風邪ぐらいならカデュウの薬学知識でも通じるが、これから先を考えれば、なるべく早期に専門の薬師や医師を探すべきであろうと考える。
「へぇ、懐かしい。先生に貰った麻痺薬でしょう?」
「うん、そうだよ。クロスのはなくなっちゃった?」
「私は使う機会なんて無かったからね、お城に置いてきちゃった」
「はは、お姫様が使うものじゃないよね」
「交易商人が使うものでもないけどね」
「うーん……、薬屋さんならあるいは……」
毒物を見比べながら嬉々としているカデュウとクロスに、ユディが苦笑しながら近づいてきた。
「毒の会話してる商人と姫ってのも凄い絵面」
「カデュウは商人じゃないですよね、アサシンです」
「そうだった、毒の会話はむしろ自然」
一緒に物を眺めていたアイスまでもカデュウをいじりにくる。
「アサシンじゃないから、薬も商品になるから、冒険でも使うから」
「王侯貴族も毒は使うはずね……盛られる事もあるから知識は持ってないと」
華々しくもドロドロしてる、ある意味正しい王侯貴族の世界であった。
毒殺公とかそんな人も歴史上に居た気がする。
「ユディは毒好きじゃない? 便利だよ」
「普通、こっちの上物の銀狼の皮とか、ハーピーの羽根とかを喜ぶ」
「それも良い品だよね」
「いいえ、こちらのレヒアリザードマンの鱗やサイクロプスの皮や骨でしょう?」
「そんなの住んでたの!?」
さすが元魔王城と未開の地域である。
色々凄い生物も同居していらっしゃったらしい。
リザードマンは海側の北部に生息しているのだろうか。
「どっちも女の子とは思えない品物喜んでるじぇ……」
「私はこっちの黒檀の木が良いですね、落ち着きます」
意外に落ち着いたものを好むアイス。
カデュウも木材にはこだわるので、気持ちはよく分かった。
「それも渋い趣味だじぇ……」
「お前ら、もうちょっと女の子らしく可愛い物をだな……」
「ソト師匠も毒いかがですか、ゴーレムから毒を出すとか」
「ゴーレムに毒を仕込むか……、それもアリだな。ふーむ、しかし量がな……」
所詮ゴーレム厨であった。
そのまま毒マニアになって仲間になるが良いのだ。
「……女の子らしさ皆無」
「イスマは何が欲しい?」
「……おにく」
「イスマは可愛いなぁ」
「その子は、ただ食い意地が張ってるだけだじぇ……」
建築予定の報告などを確認していたカデュウの下に、農業を担当するパウロ老人がやってきた。
「魔村長さんや、農地は大分出来上がったけんど、もう植えるもんがねえで?」
「あれ、そうなんですか? 仕入れに行ってこないといけませんね」
「頼んだで。ちょっと農地も見てってくれな」
「そうですね、現地を確認しに行きましょう」
パウロと共に農業の状況を視察に向かう。
現地に着いたカデュウは、予想を超える農地の広さに驚いた。
「こんなに耕してあるんですか?」
「ターレスの奴がこの辺耕していいって言うからよ。一気にやりすぎちまったべや」
恐らく将来、街となった後の人口や、交易商人の往来などの旅の者達が来る事も想定しての広さだろう。
これでは種が足りなくなるわけだ。
だが、余裕はあるに越した事はない。全領域を使う必要はないが、多めに作るのは大切だ。
「それにハッチの奴が体力ありあまってるでよ、ついついな」
「なるほど、あの海賊さんが……」
「撒いたのはかなりの速さで成長しとるよ。思ったより早く食べれるで」
「それは良かった。出来立ての作物を食べるのが楽しみです!」
農作業もやってくれるとは意外と良い人達なのかもしれない。
今の所人手は足りているようだし、農業は専門家に任せカデュウは種などの必要物資を集める事に専念すべきだろう。
植えた面積が増えればいずれ人が必要になるだろうが、それは少しづつ人を集めて行くしかない。




